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クラスごと異世界転移したモブの俺、ハズレスキル【無限収納】が覚醒したので異世界で無双します  作者: よるねこ
第一章

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第35話 ギルドで再開したダインさんに知り合いの冒険者の娘の病気を相談されて俺の収納に期待されてしまった件


エルドリア共和国の冒険者ギルドは、朝から騒がしかった。


王国のギルドより広い建物の中に、すでに多くの冒険者が集まっている。

依頼掲示板の前には人だかりができ、受付カウンターの前には長い列ができていた。


ユウトは思わず呟いた。


「……人多いですね」


レイナが周囲を見回す。


「王国の倍くらいいますね」


マリナも静かに頷いた。


「規模が違うわね」


ここは商人の国、エルドリア共和国。

冒険者の数も、依頼の数も、王国とは比べものにならないらしい。


その騒がしい空間の中で、ユウトはすぐにダインを見つけた。


「ダインさん」


ダインは壁際に立っていた。

その隣に、見知らぬ男が一人いる。


背の高い男だった。

弓を背負っていて、落ち着いた雰囲気をしている。


ダインが言った。


「来たか」


ユウトたちは歩み寄る。


ダインが男を指した。


「こいつが言ってた知り合いだ」


男が軽く頭を下げた。


「ガルドだ」


声は静かで低い。


年齢は三十前後くらいだろうか。

日に焼けた顔に、無駄な表情はない。


ユウトも挨拶した。


「ユウトです」


「マリナです」


「レイナです」


ガルドは三人を順に見て、小さく頷いた。


「ダインから聞いている」


「若いが腕は悪くないらしいな」


レイナが笑った。


「それ褒められてます?」


ガルドの口元がわずかに動いた。


「多分な」


短いやり取りだったが、悪い人ではなさそうだった。


その時だった。


ダインがユウトを見る。


「ユウト」


「ちょっと相談がある」


ユウトは首を傾げた。


「相談ですか?」


ダインはガルドを見た。


ガルドが静かに口を開く。


「俺の娘なんだが」


少しだけ間があった。


「病気なんだ」


ユウトたちは表情を引き締めた。


ガルドは続ける。


「治療薬はある」


「だが材料が厄介でな」


マリナが聞いた。


「厄介?」


ガルドは頷く。


「山にしか生えない薬草だ」


「しかも朝に採取しないと薬効が弱い」


レイナが首を傾げる。


「朝ですか?」


ガルドは説明を続けた。


「さらに、その日のうちに調薬しないといけない」


「時間が経つと薬効が落ちる」


ユウトは少し考えた。


つまり――


運搬が問題なのか。


ガルドが言う。


「普通に運ぶと間に合わない」


「薬草が劣化する」


ギルドの喧騒が遠くに聞こえる。


このテーブルだけ、妙に静かだった。


その沈黙を破ったのはダインだった。


「ユウト」


ユウトが顔を上げる。


ダインは腕を組んだまま言った。


「お前の収納なら」


少し間を置く。


「……なんとかならないか?」


ユウトは瞬きをする。


「収納ですか?」


ガルドも言う。


「普通の収納だと厳しい」


「だが」


「ダインが言うには、お前のは少し違うらしい」


ユウトは苦笑した。


「そんなにすごいものじゃないですよ」


ダインは首を振った。


「いや」


「普通より便利なのは確かだ」


それは事実だった。


ユウトは少し考えた。


自分の収納は普通ではない。


収納した物の時間は止まる。


だから、劣化する物でも状態を保てる。


理屈としては――

この薬草にも使える可能性が高い。


だが。


本当にそれで間に合うのか。


薬師が必要とする状態を保てるのか。


そこまでは分からない。


そして何より。


失敗できない。


ガルドの娘の命がかかっている。


ユウトは軽く息を吐いてから言った。


「……可能性はあると思います」


ガルドが顔を上げた。


ユウトは続ける。


「ただ、絶対とは言えません」


「実際にやってみないと分からないです」


ガルドは静かに頷いた。


「それでいい」


ダインも言う。


「可能性があるなら十分だ」


マリナが聞いた。


「その子」


「その、助かる可能性はあるの?」


ガルドは迷わず答えた。


「ある」


「だから諦めてない」


レイナがユウトを見る。


「黒崎くん」


「やりましょう」


ユウトは少し笑った。


「簡単に言うな」


レイナも笑う。


「でも出来そうですよね?」


ユウトは少し考えてから頷いた。


「……やってみます」


ガルドが深く頭を下げた。


「助かる」


ユウトは慌てた。


「いや、まだ何もしてないです」


ダインが言う。


「場所は山だ」


「少し遠い」


ガルドが続ける。


「準備が必要だ」


ユウトは頷いた。


「遠征ですね」


レイナが笑った。


「冒険者っぽくなってきましたね」


マリナも少し安心したようだった。


ダインが言う。


「準備は今日」


「出発は明日」


ユウトは答える。


「わかりました」


ガルドはユウトを見た。


その目には、はっきりと希望があった。


ユウトは思った。


――これは簡単な依頼じゃない。


でも。


もし収納が本当に役に立つなら。


誰かを助けられるかもしれない。


それは悪くない。


ギルドの喧騒の中で、新しい遠征が静かに始まろうとしていた。


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