表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスごと異世界転移したモブの俺、ハズレスキル【無限収納】が覚醒したので異世界で無双します  作者: よるねこ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/87

第21話 先生が黒崎くんに恋人がいないことを伝えた結果、なぜかその場で告白する流れになり、さらに城下町デートで冒険者ギルドの現実を知ることになった件


 朝。


 宿舎の食堂にはいつもの朝食が並んでいた。


 固い黒パン。

 薄い野菜スープ。

 少しだけの干し肉。


 転移してから何日も経ち、この質素な食事にも生徒たちはすっかり慣れていた。


 黒崎ユウトもパンをちぎりながらスープを飲む。


 味は相変わらず薄い。


 だが訓練で腹は減るので文句は出ない。


 ただ――


(……なんだろう)


 妙に視線を感じる。


 顔を上げると、女子たちがこちらを見ていた。


 しかも何人かはニヤニヤしている。


 その中心にいるのは――


 桐谷玲奈。


(嫌な予感しかしない)


 向かいに座る相沢翔太も気づいたらしく小声で言った。


「なあ」


「ん?」


「お前なんかした?」


「してない」


「だよな」


 相沢はスープをすすりながら首をかしげる。


「でも女子、めっちゃ見てるぞ」


「それは俺も思った」


 その時だった。


「黒崎くん」


 横から声がした。


 見ると橘真里奈が立っていた。


 少しだけ緊張した顔だ。


「ちょっといい?」


「え?」


「今?」


「今」


 珍しく真剣な様子だった。


 ユウトはパンを置き、席を立つ。


 二人は食堂の端へ移動した。


 背後では女子たちが完全に観察モードに入っている。


 玲奈は腕を組みながら小声で言った。


「きました」


 女子たちが息をのむ。


    ◇


「黒崎くん」


 真里奈は少し迷うように視線を落とした。


「はい」


「あのね」


 少し沈黙。


 そして真里奈は言った。


「誤解してることがあるみたいだから」


「先に言っておくわ」


「誤解?」


「私」


 少しだけ頬を赤くする。


「恋人いないわよ」


 ユウトは目を瞬かせた。


「え?」


「え?」


 思わず聞き返す。


「いないんですか?」


「なんでいる前提なのよ!」


 真里奈は真っ赤になった。


「いやだって普通いると思うじゃないですか」


「思わないわよ!」


 しばらく沈黙。


 そしてユウトは頭をかいた。


「すみません」


「いや」


「先生きれいだし」


「いい人だし」


「普通いるだろうなって」


 その瞬間。


 真里奈の動きが止まった。


「……え?」


「きれい?」


「いい人?」


 ユウトは素直に言った。


「はい」


「きれいだし」


「いい人だよなって」


(スタイルもいいし)


 という言葉は心の中に留めた。


 真里奈は完全に固まっていた。


 遠くで玲奈が小さく拳を握る。


(来た)


(決め手)


 女子たちも静かに盛り上がる。


    ◇


「黒崎くん」


「はい?」


 真里奈は少し深呼吸した。


 そして言う。


「じゃあ」


「私に恋人がいなかったら」


「どう思う?」


 ユウトは少し考えた。


「どうって」


「嬉しいです」


「え?」


 真里奈が固まる。


 ユウトは首をかいた。


「だって」


「好きな先生が幸せじゃないのは嫌ですし」


「恋人いるなら邪魔できないじゃないですか」


 真里奈は完全に赤くなっていた。


「……黒崎くん」


「はい」


「それ」


「ほぼ告白よ」


「え?」


 ユウトは固まる。


「いや」


「そういう意味じゃ」


「ないの?」


 真里奈が聞く。


 ユウトは少し考える。


 そして正直に言った。


「……好きです」


 真里奈の顔が真っ赤になる。


「先生」


「きれいだし」


「いい人だし」


「頼りになるし」


「好きです」


 遠くの女子たちが


(言ったーーーー!)


 と心の中で叫んでいた。


    ◇


 真里奈はしばらく沈黙していた。


 だがやがて、小さく笑った。


「黒崎くん」


「はい」


「私も」


 少し恥ずかしそうに言う。


「好きよ」


 ユウトが固まる。


「え」


「え?」


「え?」


 遠くで女子たちも固まる。


(早い)


(展開早い)


(先生いった)


 玲奈が震えながら言った。


「先生…」


「やる時はやる人だった…」


    ◇


 その後。


 二人はレオンのところへ行った。


「城下町?」


 レオンは書類をめくりながら言う。


「はい」


「許可をいただけますか」


 レオンはユウトを見る。


「護衛は」


「俺です」


「ふむ」


 レオンは少し考えた。


 そして言った。


「ユウトが護衛なら問題ない」


「行ってこい」


 許可はあっさり出た。


    ◇


 城門を出ると、石畳の道が広がっていた。


 武器を持った男たち。

 荷車を引く商人。

 防具を着た冒険者らしき人影。


 完全に異世界の街だった。


「すごいわね」


 真里奈が少し楽しそうに言う。


「ええ」


 ユウトも周囲を見回す。


「武器屋もありますね」


 木の看板に剣の絵が描かれていた。


 二人は中に入る。


 壁には剣、槍、弓、斧。


 様々な武器が並んでいる。


 店主がこちらを見た。


「騎士団の訓練生か?」


「そんなところです」


 ユウトが答える。


 店主は頷いた。


「槍はいいぞ」


「魔物相手なら剣より扱いやすい」


「やっぱりそうなんですね」


 短槍をいくつか見せてもらい、店を出る。


 その帰り道。


 大きな建物が目に入った。


 木の看板。


 そこには剣と盾の紋章。


「ここ…」


「冒険者ギルドだ」


 声がした。


 振り向くと、受付係らしい男が立っていた。


「見学か?」


「ええ」


「ちょっと興味があって」


 男は肩をすくめる。


「見るだけなら自由だ」


 二人は中に入った。


 酒場のような空間。


 武装した男女が集まり、掲示板を見ている。


「ここで依頼を受ける」


 男が説明する。


「魔物討伐」


「護衛」


「素材採取」


「なんでもありだ」


「なるほど」


 真里奈が頷く。


「冒険者になるメリットは?」


 男は笑った。


「自由だ」


「好きな依頼を受けられる」


「国に縛られない」


「実力があれば金も稼げる」


 そして少しだけ真顔になる。


「だが」


「保証はない」


「え?」


「全部自己責任だ」


 男は淡々と言う。


「死んでも補償なし」


「失敗しても誰も助けない」


「冒険者ってのは」


「そういう仕事だ」


 ユウトと真里奈は顔を見合わせた。


 男は笑った。


「まあ」


「それでもやる奴はやる」


「自由だからな」


 ギルドを出ると、真里奈が小さく言った。


「……思ったより厳しい世界ね」


「ですね」


 ユウトは街を見回す。


「でも」


「自由ではありますね」


 真里奈は少し笑った。


「そうね」


「自由」


 そしてユウトを見る。


「黒崎くん」


「はい?」


「今日」


「楽しいわ」


 ユウトも笑った。


「俺もです」


 その頃。


 遠くで女子たちが様子を見ていた。


 玲奈が腕を組む。


「順調です」


「先生の恋愛」


「ここからが本番です」


 ユウトはそれを知らない。


 ただ――


 少しだけ思っていた。


(先生きれいだし)


(いい人だし)


(付き合うって)


(どういう感じなんだろう)


 そしてふと背中が寒くなった。


 振り向くと


 女子たちが


 ものすごい目でこちらを見ていた。


「……」


 ユウトは小さくつぶやいた。


「なんか」


「背中が寒いなあ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ