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クラスごと異世界転移したモブの俺、ハズレスキル【無限収納】が覚醒したので異世界で無双します  作者: よるねこ
第一章

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第13話 突然の休日、異世界で生きる道を考え始めたクラスメイトたち


 突然の休日。


 レオンが「今日は休みだ」と言って宿舎を出ていった後、食堂の空気はどこか緩んでいた。


 ここ数日は毎日のように訓練が続いていた。


 そのため、急に時間ができると逆に落ち着かない。


 黒崎ユウトは固い黒パンをちぎりながら周囲を見渡した。


 クラスメイトたちはそれぞれ席に座り、朝食を食べながら雑談している。


 これまでの訓練の話。


 城下町の話。


 武器の話。


 そんな中、ぽつりと誰かが言った。


「なあ」


 食堂の空気が少し変わる。


「これからどうする?」


 何人かが顔を上げた。


 どうする。


 つまり――この世界でどう生きるのか。


 元の世界に帰れる保証はない。


 なら、この世界での生き方を考える必要がある。


 相沢翔太がパンをちぎりながら言った。


「俺さ」


「商人やろうかなって思ってる」


「商人?」


 男子の一人が聞き返した。


 相沢は頷く。


「戦うのは向いてないし」


「でも俺、商業スキルあるんだ」


「商売ならこの世界でもやれると思う」


 ユウトは少し感心した。


 ちゃんと考えている。


 相沢は続ける。


「物って絶対動いてるだろ」


「食料とか道具とか」


「その流れに入れれば食っていける気がする」


「確かに」


 ユウトは頷いた。


 その会話を聞いていた騎士の一人が口を開いた。


「商人は悪くない」


「この国でも商人は多い」


「ただ」


 騎士は少し肩をすくめた。


「戦闘能力は多少あった方がいい」


「魔物もいるからな」


「ですよね」


 相沢は苦笑した。


 すると別の男子が言った。


「俺は農業かな」


「農業スキルあるし」


 それを聞いていた騎士が頷く。


「それはいい」


「王国にも開拓村はいくつかある」


「農業スキル持ちは歓迎される」


 男子は少し驚いた顔をした。


「開拓村?」


「ああ」


 騎士は説明する。


「森を切り開いて村を作る」


「農業スキルは重要だ」


「食料はどの国でも必要だからな」


「へえ……」


 男子は真剣な顔で頷いた。


 すると女子の一人が言った。


「料理スキルってどうなんですか?」


 騎士は笑った。


「料理屋や酒場なら歓迎される」


「酒場はどの町にもある」


「料理ができる人間は重宝されるぞ」


 女子たちは顔を見合わせる。


「酒場いいかも」


「料理屋とか面白そう」


「お客さん多そうだし」


 そんな会話が食堂のあちこちで生まれていく。


 誰かが裁縫スキルの話をする。


 誰かが鍛冶スキルの話をする。


 同じクラスで、同じ日に異世界に来た。


 だが、これからの人生は同じとは限らない。


 ユウトはぼんやりとその光景を見ていた。


 その時だった。


「俺は騎士かな」


 一人の男子が言った。


 周囲がそちらを見る。


「ここに来てから騎士団には世話になってるし」


「スキルも戦闘向きだしな」


 騎士の一人が笑った。


「志があるなら歓迎だ」


「騎士団は人手不足だからな」


 男子は嬉しそうに頷く。


 そんな会話を聞きながら、ユウトはふと思い出した。


「そういえば」


「城下町にあった建物」


「冒険者ギルドですよね」


 近くにいた騎士が頷いた。


「ああ」


「冒険者ギルドだ」


 ユウトは少し身を乗り出す。


「魔物退治とかするんですか?」


 騎士は答えた。


「基本はそうだ」


「魔物討伐、護衛、採集」


「そういう仕事を請け負う」


「ただ王国のギルドはそこまで大きくない」


「王国には騎士団がある」


「魔物討伐の多くは騎士団の仕事だ」


 そして少し笑った。


「むしろ隣国の方がギルドは大きい」


「エルドリア共和国」


「商人の国だ」


「冒険者や傭兵が多い」


 ユウトは昨日見た城下町を思い出す。


 武器を持った人々。


 確かに、あの建物は冒険者ギルドだったのだろう。


 その時、騎士の一人がユウトを見た。


「…クロサキ」


「はい?」


「お前の戦い方」


「無理をしない」


「周囲を見ている」


 騎士は少し笑った。


「騎士より」


「冒険者向きかもしれんな」


 ユウトは少し驚いた。


「そうですか?」


「騎士は組織で戦う」


「だが冒険者は個人だ」


 騎士は肩をすくめた。


「冷静さは大事だ」


 ユウトは小さく頷いた。


 その時だった。


「黒崎くん」


 後ろから声がした。


 振り向く。


 桐谷玲奈だった。


 にこにこしている。


 だが目が笑っていない。


「あとでちょっと」


「話あるんだけど」


 ユウトは悟った。


(来た)


 昨夜の二階の賑やかさ。


 今朝の騒ぎ。


 どう考えても逃げられない。


 ユウトは小さく息を吐いた。


 ……なんか背中が寒いなあ。


 ◇


 その夜。


 城下町の酒場。


 レオンは木の椅子に座り、静かに酒を飲んでいた。


「お、レオンじゃないか」


 声をかけてきたのは上級騎士だった。


 レオンは軽く会釈する。


「珍しいですね」


「あなたが酒場とは」


 上級騎士はため息をついた。


「愚痴を聞いてくれる相手を探しててな」


「勇者パーティだ」


 レオンはグラスを傾ける。


 上級騎士は続けた。


「強いのは間違いない」


「だが指示を聞かん」


「突撃する」


「周囲の被害がでかい」


 酒を一口飲む。


「正直、魔物の方がまだマシなくらいだ」


 レオンは苦笑した。


「それは大変ですね」


 上級騎士が聞く。


「お前のところはどうだ?」


 レオンは少し考えた。


 そして静かに言った。


「まあ、学生たちですから」


「皆、戸惑ってますよ」


 上級騎士は腕を組む。


「だろうな」


 レオンはグラスを見つめながら言った。


「……巻き込まれただけですからね」


 上級騎士が少し驚いた顔をする。


 レオンは続けた。


「異世界に突然呼ばれて」


「戦えと言われる」


「普通の学生なら混乱します」


 そして小さく肩をすくめた。


「まあ」


「せめて」


「俺の担当の奴らくらいは」


「この世界で生きていけるようにはしてやりたいですがね」


 上級騎士は笑った。


「お前らしいな」


 レオンはグラスを空けた。


「俺は俺の役目をやるだけですよ」


「俺の範囲でアイツらを鍛える」


 そして静かに言った。


「生き残れるようにな」



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