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まだ青い夏

作者: 昼月キオリ


中学二年の夏。


毎日のように喧嘩をしてた。

殴っては殴られて怪我が絶えなかった。


でも、そんな日々はあっさり終わりを告げた。

よく風邪を引くようになったからだ。

 

俺を女手一つで育てた母さんはそんな俺を心配して病院に連れて行った。


そして入院しなくてはならなくなった。



イライラした。むしゃくしゃした。

でも、病院だから暴れることはできなかった。

いつもなら喧嘩して発散できるものが発散できなくなった。



見舞いに来た母親に暴言を吐いた。



蓮人(れんと)「見てる方は気楽で良いよな、

どこも苦しくないし痛くもない、

俺の代わりに母さんが病気になれば良いんだ!

俺の代わりに不幸になってくれよ!」


母親は少し寂しそうな顔をすると

「そうね」とただそれだけ言う。


そんな母さんの態度が余計に俺をイラつかせた。


蓮人「チッ」


母親が帰った後。

蓮人は窓の外を見て舌打ちをした。







それから一週間後。


病院のベッド。

今、目の前で眠っているのは母さんの方だ。

どうしてだ?

俺の病気が治ったと思ったら今度は入れ替わるように母さんが同じ症状で倒れた。


こんなことなら俺が辛いままの方が良かった。

痛いのも苦しいのも俺のままの方が良かった。


いや、違う。

病気になる方もそれを見ている方も辛いんだ。

どっちの方が辛いとかどっちの方が不幸とか比べることなんて出来なかったのに・・・。


俺は一週間前に自分が吐いた暴言を思い出した。



「見てる方は気楽で良いよな、

どこも苦しくないし痛くもない、

俺の代わりに母さんが病気になれば良いんだ!

俺の代わりに不幸になってくれよ!」

 

 

蓮人「ごめん」


そう呟いて蓮人は母親の手を握った。

すると母親が薄っすらと目を開けた。


「蓮人はどこか苦しいところはない?どこも痛くない?」


母さんのそんな言葉が自分の愚かさを、自分の弱さを、

現実を叩きつけられた気がした。


蓮人「ああ、どこも苦しくないよ、どこも痛くないよ母さん・・・」







それから程なくして母親は退院し、無事に元の生活に戻った。


「お米無くなりそうだわ、蓮人、母さん、買い物に行って来るわね」


いつもなら母親の日常会話など無視をしていただろう蓮人は・・・。


蓮人「俺も行くよ」


「あら、どういう風の吹き回しかしら」


蓮人「別にいいじゃん」


そう言って蓮人は照れた顔が見えないように母親の背中をぐい〜っと押しながら玄関に向かうのだった。

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