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冬童話2025

紙飛行機の遺しゆくもの

作者: 壊れた靴
掲載日:2024/12/26

 幼い女の子が、紙飛行機をそっと飛ばしました。

 紙飛行機には、沢山の荷物が積まれていました。

 紙飛行機は、ゆっくりと、飛びました。

 紙飛行機は、ゆっくりと、荷物を落としながら飛びました。

 固い地面の上に、優しく落としました。

 柔らかい地面の上に、力強く落としました。

 湿った土の上に、軽やかに落としました。

 乾いた土の上に、重たげに落としました。

 熱い砂の上に、涼やかに落としました。

 冷たい雪の上に、暖かに落としました。

 小さな水たまりの上に、大げさに落としました。

 大きな水たまりの上に、控えめに落としました。

 荷物が落ちていくたびに、女の子は大きな喜びと、小さな寂しさを覚えました。

 紙飛行機は、全ての荷物を落としました。

 全ての荷物を落とした紙飛行機も、落ちました。

 それから、長い時間が過ぎました。季節は何度も巡りました。


 幼い女の子は、年老いたお婆さんになりました。

 お婆さんは、沢山の家族に囲まれていました。

 お婆さんは、ゆっくりと、眠りました。

 お婆さんは、ゆっくりと、笑いながら眠りました。

 お婆さんは、紙飛行機に乗る夢を見ました。

 紙飛行機は、お婆さんを乗せて飛びました。

 紙飛行機は、お婆さんが幼い女の子だった時と同じ路を飛びました。

 同じ路でも、変わった景色もありました。

 同じ路でも、変わらない景色もありました。

 落とした荷物のいくつかは、美しく小さな花になっていました。

 落とした荷物のいくつかは、美しく大きな木になっていました。

 落とした荷物のいくつかは、美しく小さな虫になっていました。

 落とした荷物のいくつかは、美しく大きな獣になっていました。

 落とした荷物のいくつかは、美しく小さな貝になっていました。

 落とした荷物のいくつかは、美しく大きな魚になっていました。

 荷物の育った姿を見るたびに、お婆さんは大きな大きな喜びと、小さな小さな寂しさを覚えました。

 紙飛行機は、落ちることなく飛び続けました。

 紙飛行機は、お婆さんを乗せて、落ちることなく飛び続けました。

 それから、長い長い時間が過ぎました。季節は何度も何度も巡りました。

 

 年老いたお婆さんは、いなくなりました。

 お婆さんの沢山の家族も、いなくなりました。

 けれど、彼らはもっと沢山の家族になりました。

 お婆さんの見た、花も、木も、虫も、獣も、貝も、魚も、いなくなりました。

 けれど、彼らは大きな大きな世界になりました。

 そしてまた、誰かの飛ばした紙飛行機が、世界を静かに見下ろしています。

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― 新着の感想 ―
少女が歳をとって、いつかこの世から去っても、彼女の残したものはずうっと残り続けるのですね。
2024/12/28 19:50 退会済み
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