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理事長室

 廊下を小走り進む、亜紀先生の隣を大股で歩く白虎、校舎の窓から見ると、二人に流れる時間が違って見える。

そして、いつもの理事長室にやってきた。

ドアをノックする。

部屋の中から、佐紀先生の声がした。

「どうぞ。」

廊下の二人は、今日はどっちだろうと思いながら、そっとそのドアを開けた。

 どうやら今日は、この学校の理事長室のようだ。

今までの理事長の写真が並び、窓の外は、この学校の校舎が見えた。

大きな机に大きな窓を背に、初老の老人が座っていた。

そして、入り口の反対側に、革張りのソファーが置かれていた。

そして、そのソファーに姫様が座っていた。そして、その壁沿いに佐紀先生が立っていた。

「姫、大好きな白虎が来てくれたぞ。」

姫と白虎は、目を合わせお互いにうなずき合った。

「白虎、今回は、色々ありがとう。孫娘を救ってくれて、感謝する。そして、この学校を、さらに日本を救ってくれたことになる。」

「孫娘が、敵国に誘拐されたら、全面戦争じゃったよ。」

「しかし、奴らもこんなところまで、入り込んこれたもんじゃ。わしも油断しておった。」

「理事長、奴らの正体はわかったんですか?」

「どうやら、昼間来た連中は、黒龍の手のものに操られていたみたいじゃ。」

「制服を脱がすと、みんな自分が何をしていたか覚えておらんかった。普通の人間じゃったよ。」

「そうですか?」

「にしても、やけに強かったように思いますが?」

「中には、自衛隊上りも数名入っておった。」

「そうですか?それで、理事長、姫さんは、もう大丈夫なんですか?」

不安そうに、白虎は、姫様の方を見た。

「多分、お前さんが黒い指輪を外してくれたのおかげで、今は大丈夫じゃよ。」

「それにあの病院から連れ出してくれたのは、正解じゃよ。」

「これも、わしの失敗じゃが、黒龍は、本来、夜陰にまみれて動くのが好きな奴じゃった。」

「だから、もっと、夜に注意するべきじゃった。」

「今朝、調べたんじゃが、一人、看護師が行方不明になっておる。事前にあの病院の忍び込んでいたのなら、奴らの組織力もばかにできん。」

「そうですね。でも、昨日は、偶然タクシーが近くを通ってくれなかったら、今ここに居れたかわかりません。」

「お礼を言いたくて、内の組織のものにも調べさせているんですが、見つからなくて。」

と言うと、理事長は、事情を知っているのか、にこにこ微笑みだした。

「彼らは、八百万の神々じゃよ。」

「出雲での姫の踊りと、お前のお酒が気に入ったらしい。」

「すぐに集まって、お前たちを助けに行ってくれた。」

「そうなんですね。どうりで、見つからないはずです。」

「だから、奴らがこんな日本の真ん中まで入り込んでるのが不思議なんじゃよ。」

「誰かが、後ろで手を回してそうですね。」

「だから、申し訳ないが、姫を守ってくれ。」

「それは、任してくださいと言いたいところですが、まだまだ、力不足です。もっと、強くならないと。」

「今の剣道部だと、強くなれないか?」

「そうですね、佐々木以外は、練習にならないですね。」

「まあ、そう言わずにもう少し面倒を見てやってくれ。」

そう言うと、

理事長は、椅子から立ちあがって、白虎の方に歩いてきた。

そして、両手を掴まれて、理事長の手の中に包み込まれた。

一瞬にして、体の痛みも疲れも取れて、体の中から力が湧いてきた。

「よろしく頼みます。」

「すまない、別の打ち合わせが有るので今日はこれで失礼する。」

そう言うと理事長は、扉から出て行った。

白虎は、解き放たれた犬のように姫様の所に飛んでいった。

「白虎!」と責める亜紀先生の声を無視して。

「姫さん、大丈夫?」と言いながら、ソファーの横に座った。

そして、こんど理事長がしたのと同じように姫様の手を両手で包み込んだ。

「ありがとう。白虎。貴方のおかげで、今ここに居られるようなものだわ。」

そう言うと、姫様は、白虎に抱き付いた。

「姫様!」今度は、姫様を責めた。

だけど、声だけで、無理やり放そうとは亜紀先生もしなかった。

昨日は、すべて、白虎のおかげだということがみんな分かっていたのだ。

「姫さん、今日は、一日ゆっくりした方がいいよ。」と白虎が言った。

「白虎、貴方は駄目よ。出席日数ギリギリなんだから、姫様は、佐紀先生に任せて、貴方は、今から教室に行って授業よ。」

『そんなあ?』って顔の白虎を無理やり姫様からはがすとそのまま教室に連れて行った。

「寝ててもいいから、沖積だけしてちょうだい。」

「姫様、放課後会いに行くから待っててね。」

と、笑っている姫様に白虎は、ウインクした。








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