誘拐3
白虎は、タクシーの後席から、前を凝視していた。
「早く姫様のところへ。」
「坊ちゃん、そんなに強く握ったら、車のシートが壊れるよ。」とタクシーの運転手が言った。
確かに、白虎が握手いたタクシーの運転手のシートの背もたれがいびつな形に変形していた。
「すみません。」
「もうすぐだよ。確か、あの交差点を曲がったら、すぐのはずだ。」
タクシーの運転手は、白虎の焦る気持ちを理解しているのか、信号が赤なのにお構いなしに左折した。
曲がると同時に加速したタクシーの500m先ぐらいに数台のタクシーに取り囲まれた黒いバスが見えた。
こんな街中なのに、そこだけ、異質な感じが漂っていた。
車が動いているにも関わらず、白虎は、ドアを開けて出ようとした。
慌てて、タクシーの運転手は、急ブレーキをかけた。
その勢いで車から投げ出された白虎は、受け身を取りながら、転がった。そして、その勢いを利用して風のように駆け出した。
気付いた時には、タクシーの運転手達と言い争いを市営る、黒い制服の集団に飛び掛かった。
そして、その集団の中で大声で叫んだ。
「姫さん、無事か?どこにいる?」
白虎の奇襲に、驚いた黒制服の集団は、隊列を崩した。そして、その中心に、人間が入れそうなほど大きな黒い袋を担いでいる人間を見つけた。
その男に飛び掛かろうとする白虎を周りの詰襟が止めようとした。
そして、それを見ていたタクシーの運転手たちが、その詰襟たちに襲い掛かった。
白虎は、その助けもありすぐにその黒服から、黒い袋を奪い取ると、そっと地面に降ろすと、中のものを
傷つけないようにそっと、チャックを開けた。
中からは、カラフルなチアの衣装の姫様が現れた。
ただ、薬のせいでピクリとも動かなかった。
呼吸をあることを確認すると、袋から出した姫様をお姫様抱っこをして、立ち上がった。
そして、タイミングよくさっきのタクシーが目の前に現れた。
それに気づいたタクシーの運転手たちは、
「その子を連れて、さっさと逃げろ!」と口々に叫んだ。
白虎も大声で、
「ありがとうございます。」と言って、タクシーに乗り込んだ。
「にいちゃん、近くの病院まで飛ばすから、しっかりその娘を抱っこしといてくれよ。」
タクシーは、後輪をホイルスピンしながら向きを変えると、一目散に近くの総合病院に向かった。
数分で病院に着くと、白虎は、お礼もそこそこに、病院の中に消えていった。
「青春だね。」とタクシーの運転手が独り言を言った。
そのタクシーの右側に、赤いカウンタックが止まっていった。
さっと開いたガルウイングから、赤いロングドレスの女性が下りてきた。
「ありがとう、お疲れ様。」と言って、そのタクシーの運転手を労った。
「あっちの方は、片づけたから、あなたは、このまま仕事に戻ってちょうだい。」
「わかりました。」そういうと、そのタクシーは、東京方面に消えていった。
その赤いカウンタックは、そのタクシーとは、違う方向に爆音を出しながら消えていった。
カウンタックの彼女は、
「青龍につなげて。」と独り言のように前を見ながら囁いた。
5回コールの音が、車内に響いた。
「随分余裕ね。孫娘の事なのに。」
「君からの電話だから、安心なんじゃよ。」
「そうね。無事に終わったわ。お孫さんも、今、ナイトが病院に運んでいったわ。」
「内の部下の分析だと、デスフルランだから、いまごろは目を覚ましているかもね。」
「ありがとう。感謝する。」
「1つ貸しね。」
「わかった。今回は、国家権力が関わっていて、わしも迂闊には、動けんかった。」
「ただ、抗議だけは、するつもりだがな。」
「あいつら、この後どうするつもりだったのかしらね?」
「これは、極秘だが、日本海に抜けて、大陸に孫娘を連れて行く手配をしていたらしい。」
「すべて、潰したがな。」
「もしかして、黒龍のメンバーの仕業?」
「多分な。あのまま、大陸に逃げこまれていたら、世界を二分する全面戦争じゃったよ。」
「それほど、姫の力がすごいの?」
「黄龍の力がじゃよ。」
「もう少し、姫も強くしないとまた、狙われるわね。」
「日本の方が、安全だと思ったがそうでもないようじゃ。」
そこで、二人の会話が終わった。




