対抗試合1
あっという間に、1か月が過ぎた。
明日が、学校の武道館で剣道の対外試合が行われる。
「皆さん、お疲れさまでした。明日が、本番です。今日は、ゆっくり休んでください。試合は、この学校なので皆さん普段の調子で頑張ってください。」
「メンバーは、明日、対戦相手の様子を見て決めようと思います。」
「まずは、個人戦です。こちらは、少ない人数ですが、皆さんなら大丈夫。その後が、団体戦です。必ず私が大将になるとは、限りません。但し、力量の差が有りすぎると危険なので、そのような対戦は、極力避けたいですが、なので棄権も考えています。」
「以上です。何か、質問ありますか?気になることが有れば、持ち帰らずに今聞いてください。」
佐々木が、手を挙げた。
「佐々木君、何ですか?」
「先輩は、あのチア部の先輩と付き合ってるんですか?」
「佐々木君、プライベートな質問は、受けれないよ。」
「で、も、今聞いておかないと、心配で眠れません。」
「わかりました。付き合ってるかどうかは、相手の意思もあるのでわかりませんが、自分は、彼女を愛してます。他の女性には、興味ありません。」
「他の女性には?じゃ、男性は?」
「それは、恋愛対象にはなりません。もし、君が明日の試合で全力を出して、相手と戦って、それで勝っても負けてもその時は、同氏として喜びもしくは、悔しさを分かち合いましょう。」
「他の部員の方も同じです。明日は、買っても負けても同志として喜んだり、悔しがったりしましょう。そして、チームメイトを全力で応援しましょう。」
「はい。」
「以上です。」
「ありがとうございました。」みんなそう言って、正座のまま頭を下げた。
白虎は、みんなが武道館が出るのを見送って、それから、バケツと雑巾を持って来て、一人、床を拭きだした。
裸足で、試合をしたときに足に何かが刺さったりしたら危ないので、丁寧に床を拭きだした。
一体何往復しただろう、薄っすら浮かんだ汗を日本手ぬぐいで拭いて、綺麗になった床と神棚に深々とお辞儀した。
「明日は、誰もケガなどしませんように。」
それから、武道館の扉を閉めて、道着のまま、一人男子寮に戻っていった。
そのまま、お風呂に向かって、体を綺麗に洗って湯船に浸かった。
「さて、明日はどうするかな?」「まあ、どうするもこうするも5人しかいないからな。相手の学校は、武道で有名なところだから、50名ぐらい部員がいると言っていたな。」
と独り言が口から出てきた。
「佐々木をどこにもっていくかだな。部長と副部長。そして、2年の三宅。どうしても、1勝が欲しければ、佐々木を先鋒にするか?」
「個人戦が、ネックだな。みんな、体力を持って行かれるな。だが、相手チームの戦力も見れるか。一長一短だな。」
「とりあえず、数パターン考えて今日は、寝るかな。」
白虎は、風呂から上がって自室に引きこもった。そして、ひたすらノートに対戦相手との組合わせを考えた。
「佐々木と自分で、2勝。後、1勝をどうやって勝ち取るか。引き分けでもいい。そうなれば、大将戦になる。とすると、やはり自分が、大将か?」
「しかし、個人戦で、後半まで残ると体力が心配だな。」とか言っても、途中でわざと負けるなんて器用なことが、出来る人間でもない。
「しょうがない。明日は、明日の風が吹くさ。」
その時、スマホが鳴った。
「あっ、姫さんからだ。」
「今晩は。いよいよ明日ね。頑張ってね。」
「ちょっと、緊張してるかな。でも、大丈夫です。後、姫さん、1つお願いしてもいいですか?」
「なに?」
白虎は、姫さんに1つだけお願いをした。
「すみません。こんなことお願いして。」
「いいわよ。大したことじゃないから。」
「これで、みんな、団体戦頑張れると思います。」
「じゃ、明日頑張ってね。」
「はい。」そう言ってスマホが切れた。待ち受け画面は、言わずと知れた姫様の笑顔。それを、見ているだけで、白虎は、幸せだった。
思わず、明日の試合のことを忘れてしまっている自分に気が付いた。




