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神様、勉強しなくてもいいですか?

 その日から、姫と白虎は、教室の椅子に座布団を3つ重ねた上に座って、勉強しまくった。

知らないうちに朝が来て、知らないうちに夜が来た。

そして、頭の中を、サインとコサインとタンジェントが鬼ごっこをして、銀河鉄道の夜が明けたころにやっと解放された。

「お疲れさま。」亜紀先生が、言った。

隣では、姫が、可愛い寝息を立てていた。

その横で、白虎が吠えた。

「うるさい。」と言って、亜紀先生に国語の分厚い教科書で頭を叩かれた。

「今日は、日曜日だからゆっくりしててもいいわよ。」

「明日は、旧暦の10月15日だけど、あなた達も行くんだっけ?出雲に。」

白虎の頭の中に『えっ?』と言う言葉が駆け巡った。

「姫、大変だ。おじい様から、先に出雲に言って、大国主の尊に挨拶しとけって言われてなかったっけ?」

白虎は、慌てて姫を起こした。

眠そうな、目をこすりながら、

「大丈夫よ。今日の午後、羽田から飛行機に乗って出雲に飛ぶから。」

「じゃあ、もう少し寝かせて。」

『そんな暢気な?』とは、思ったけど姫さんがそう言うならと、白虎もその横で眠ってしまった。

誰かに、頭を叩かれたような感触で目を覚ました。

目の前には、机を頭の上に構えた姫様が見えた。

「姫様、何を、しようとしてるんですか?」

「あなたが、起きないから、机でもぶつければ起きるかと思ったのよ。」

「そんなことしたら、自分でも死にますよ。」

『で、どうしたんですか?』と聞くまでもなく、校舎には、綺麗な夕日が差し込んでいた。

そう言えば、今日の午後、羽田から飛行機に乗って、出雲に行くんだっけ。

で、姫さんが、怖い顔でこっちを見てるわけか。

「どうしましょう?」

「どうしましょうじゃないわよ。とりあえず、おじい様には、連絡しておいたわ。笑ってたから大丈夫だと思うけど、今すぐ、出雲に向かいましょ。」

「羽田から、広島往きならまだ間に合うわ。」

「わかりました。すぐに出発しましょう。」

姫と、白虎は、学校の制服のまま、タクシーをひらって、羽田に向かった。

タクシーの中で、白虎は、せわしく誰かに電話していた。

時々白虎が、スマホに向かって怒鳴っていたのでタクシーの運転手は、自然とスピードを上げて、羽田に向かった。

何とか、羽田に18:30ごろに着けた。

「お待ちしておりました。坊ちゃん。」

そこには、白虎の部下が、迷彩服で迎えに来た。

「ご苦労様、で、準備は?」

「できております。」

「わかった。」そう言うと、今にも羽田のロビーに走っていきそうな姫様の手を取って、白虎は、

「こちらです。姫様。」と言って、そこに止まっていたリムジンにの姫様を押し込んだ。

そのまま、滑走路を走り、白いジェット機の方に向かって滑らかに走り出した。

「姫、プライベートジェットで、出雲に向かいます。」

「さっき怒鳴ってたのは、この所為ね。」

「国交省のお偉方が、羽田を使う許可を下ろさなかったので、大臣にちょっとね。」

「あれが、ちょっとね?なの?電話の向こうの人泣いてたわよ。」

「寝過ごした私たちが悪いのに、可愛そう。でも、でかした、白虎。」そう言って、姫様は、白虎のほっぺにキスをした。

あっという間に、プライベートジェットに乗り込むと、すぐに飛び立った。

 どうやら、このジェットが飛ぶまで、他の飛行機の離着陸を止めていたみたいだった。

他の飛行機が、慌てて着陸してきた。

「昔、こんな映画が有ったっけ。」

「空港に爆弾が仕掛けられて、それが取り除かれるまで着陸できなくてって。」

「じゃ、今は、私たちがその爆弾てわけね。」

 飛行機は、順調に日本の空を飛行した。

1時間半ぐらいで出雲の宍道湖が暗闇の中に見えてきた。

飛行機は、出雲空港に着陸するのかと思ったけど、全然高度を下げなかった。

そして、そのまま、西に向かった。

「姫様、そろそろ準備は良いですか?」

「えっ、何をするの白虎?」

いきなり、パラシュートを背中に括りつけられたかと思うと、白虎に手を握られあっと言う間に、二人とも飛行機から投げ出された。

「行ってらっしゃい、坊ちゃん。」そう言って、飛行機のみんなは、敬礼していた。

「白虎、こうなったら、どっちが先に、稲佐の浜の祠の近くに到着できるか競争よ。」

と姫が、叫んだ。

「了解。」と白虎。

二人とも、風を読みながら、引佐の浜の屏風岩に近づいた。

二人とも、あまりにも近くに寄りすぎたんでパラシュートが絡んで、そのまま轟音とともに海の中に落ちていった。

大きく立ちあがった水煙の後、姫と白虎は、パラシュートに巻き付かれたまま海から出てきた。

「勝ち負けなしね。」

「そうですね。」

そう言うと、白虎は、どこからかナイフを出して、パラシュートのロープを切り始めた。

そして、姫様との間の最後のロープを名残惜しそうにカットした。

「とりあえず、須佐のうの尊と稲田姫に会いに行きましょう。」

そう言って、二人は、稲佐の浜の波の音を背に砂浜を歩き出した。


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