終わってた夏休み
飛行機が、成田に無事に到着した。
以前のようなごたごたもなく、普通に到着したのが意外だった。
もしかしたら白虎は、密入国で捕まるかと思ったけど、そんな心配など芙蓉の長物とでも言いそうに何事もなく入国できた。
そして、他の観光客と同じように電車で東京に向かった。
東京駅に着くと、ふたりは、仕方なく学校までの切符を買った。
「姫さん、誰も迎えに来ないな。」
「それだけ、日本が平和ってことよ。」
「そうだな。一時は、どうなるかと思っていたけど、やっぱり日本は、平和がいいな。」
「八百万の神々が、そこらじゅうで目を光らせてるおかげね。」
「その神々に、喧嘩を売ろうなんて、姫さんも剛毅だね。」
「嫌いになった?」
「いや、ますます好きになった。それでなきゃ、俺が命がけで愛すると決めただけある。」
「わたしもよ。」
「でも、どうしようかな。」
「勝手に、付き合ってもいいように思うけど。」
「それは、たぶん駄目でしょう。さっきから、こっちをちらちら見てる神々もいるようだし。」
「ストーカーよね。」
「プライバシーも、あったものじゃないわね。」
「壁抜けなんて、平気でしてくるから。」
「まずは、学校に行きましょう。」
「青龍の聖域には、その辺の神々も勝手に立ち入れないから。」
それから、二人は、再び電車に乗って学校のある駅にたどり着いた。
「懐かしいね。」と白虎。
「私は、この駅初めてかも。」
「そうかも。姫さんは、記憶喪失でこの学校に来てるし、それからはずっと寮暮らしだし。それに、学校を出るときも、朱雀の車だったからな。」
白虎の案内で、二人は、学校の門の所にたどり着いた。
午後3時、夏休みのこの時間なら、門は空いてるはずなのに固く閉じられていた。
しばらくすると、学校の中からチャイムが聞こえて来た。
学校の正門を守衛が空け出した。そして、見ている間に、校舎から大勢の学生が、門に向って歩いてきた。
「姫さん、学校始まってる。」
「今日って、何日だっけ?」
「8月31日のはずだけど。」
校舎から出てくる生徒の中に、亜紀が紛れ込んでいた。
「あなた、学校にも来ないで何してたの?」
「姫様を連れまわしたんじゃないでしょうね?」
相変わらず、口の悪い亜紀に、白虎は、たぶん俺が嫌われてるんだろうなと思った。
「亜紀、口の利き方に気を付けなさい。私の白虎様にそんな言い方をするのは許しません。」
「姫様、今、何とおっしゃいました?私のびゃあああっこ様?」
「私の両親も公認です。後、おじい様にもお会いしに来たのよ。」
「荷物は、届いてるはずだから、私と白虎様は、今日からまた寮に入ります。」
「よろしくお願いね。」
目を、白黒させている亜紀の横を、白虎は何事もなかったように通り過ぎた。
「姫さん、やっぱりどこかで時間がずれてる。多分2から3日」
「だとしたら、私が黄龍と会って、その後しばらく眠っていた間に時間が経っていたのね。」
「そうだな。俺も、しばらく姫さんと一緒に寝ていたからなあ。」
そう言いながら、二人は、古巣の学校の寮に戻ってきた。
「白虎様、しばらくしたら、おじい様の所に行きましょう。」
「迎えに行きます。」
「とんでもない、俺が姫さんを迎えに行くよ。」
「じゃ、理事長室の前で30分後に待ち合わせね。」
「あっ、わかった。」
そう言って、二人は、女子寮と男子寮に二手に分かれて歩いていった。
30分が、理事長室の前で、再び二人が出会った。ともに、学校の制服に着替えていた。校舎内に入るには、これが決まりだった。
「行くわよ、白虎。」
「はい、喜んで。」
二人で理事長室の扉を開けて、中に入っていった。
そこには、理事長の姿はなかった。
そのまま、理事長室を抜けて、別の扉を開けた。
そこは、以前にも言ったことのある青龍のお屋敷だった。
おじい様のいそうな食堂に、二人は向かった。
残念ながら、おじい様は居なかったけど、おばあ様が、サキと話をしていた。
「おばあ様、こんにちは。日本に帰ってきました。」
姫は、品の有る初老の女性に挨拶をした。
「レイラ、こんにちは。大変だったわね。」
「白虎さんも、良くいらっしゃいました。」
「おばあ様、おじい様は?」
「あの人は、9月の準備で飛び回ってるわ。」
「出雲に、神様をみんな連れて行くというあれね。」
「そうよ。」
「いつ、帰ってくるかわからないけど。どうしましょうね?」と祖母は、意味ありげに白虎を見て、ニコッと笑った。
「わかりました。また来ます。2学期がはじまって、ずっと学校にいるから、いつでもここに来れるわ。」
「わかったわ。戻ったら、連絡するわね。」と言って、スマホを指さした。
姫と、白虎は、てっきり念話かと思ったけど、『文明の利器は、こんなところにも入り込んできてるのね。』と思った。
「二人とも、お茶でも?それに、向こうでの話も色々聞かせて。できれば、二人の馴れ初めも聞かせて頂戴。」
姫と、白虎は、祖母に色々な出来事をお話しした。
白虎は、話の状況に合わせて、白虎に変身して実演して見せた。
その日は、夜も遅くなったので、晩御飯も一緒に食べて、そのまま泊まることにした。
結局、その日は、祖父は帰ってこなかった。




