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冒険8

 白虎は、姫と別れた次の日、日本に帰るために空港に向かうバスに乗っていた。

「坊ちゃん、いいんですか?一方的に言われて、日本に帰るなんて。」

「しょうがないさ。俺は、足手纏いなんだ。姫さんといても、何の役にも立たないよ。」

「坊ちゃんらしくないですね。こうと思ったら、後先考えずに突っ走るところが坊ちゃんのいいところかどうかはわかりませんが、俺は、好きですよ。」

「向こうが何と思っていても、惚れた女のために命を掛けて、ここまで来たんじゃないですか?」

「坊ちゃん、ここで俯いてちゃ、一生後悔しますよ。」

「それに、昨日宿屋に来た連中、あれは、きっと姫さんを捜しに来た連中ですよ。」

しばらく、白虎は、バスの天井を見ていた。

そうすると、姫さんの助けを呼ぶような声が聞こえたような気がした。

「わかったよ。俺らしくないな。」

「バスを止めてくれ。」そう叫んだ。

「ちょっくら、死にに行ってくるわ。」そう言って笑うと、白虎は、止まりかけのバスから飛び降りると一目散に今きた町の方へ走っていった。

「姫さん、すまん。俺は、情けない奴だ。死んでも守るって、言っておきながら逃げ出した。」

全力で走っているのに、全然街に近づかない。

 今にも姫さんが、奴らに殺されそうになることをイメージすると、気が気ではなかった。全力で走っていても全然姫さんに近づいている感じがしない。それに、この方向で合っているのかもわからなかった。

後悔と焦りだけが、白虎の体に充満した。

『なんて、人間の体は、窮屈なんだ。そして、非力なんだ。』

そう思いつつも必死で走った。

そのまま走っていると、急に呼吸が軽くなり、知らない間に周りの景色が見る見るうちに変わってきた。

しかも、時々右の森の方から吹く風に乗って、あの大好きな姫さんお香りが漂ってきているのが分かった。

 そう、知らない間に、白虎は、人間ではなく大きな白い虎に変身していた。

『これなら、空も飛べそうだな。』そう思うと、目の前の大きな木に勢いよく掛け登り、その木のてっぺんから、姫さんの香りのする方へ、大きくジャンプした。

そして、両手、両足で、空気を掴みそのまま駆けだした。

「姫さん、今、行くからな。無事でいてくれ。」

しばらく走っていると、森の中から斬撃音が聞こえて来た。

白虎は、その音のするほう方へ一目散に駆け出した。




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