夏休み8
その日、姫は嫌な夢を見た。
先日の旅行の疲れ、母親とのお風呂での出来事と夜の出来事そして、父親の帰還のお祝いと、16歳の少女には、ちょっと荷が重すぎたようだ。熱めのシャワーを浴びたかったけど水しか出なかったので、さらっと湯船につかっただけでベッドに入って眠ってしまった。
夢の中で、最初は、右にお父様そして、左にお母様と手をつないで湖畔を歩いていた。
「綺麗な、湖ね。」と姫が、両親の顔を見ると、両親が、
「そうね。」と言って、その顔がだんだん悪魔のような顔に代わって、姫をその湖に引きずり込もうとした。
「嫌!」って叫んで手を振り払おうとしたけど、とても強い力で振りほどくことができず、そのまま湖の中に体ごと連れ込まれ、息ができないと思った瞬間に目が覚めた。
目の前には、心配そうに自分を見つめているユキの顔が有った。
目が覚めた姫をみて、『大丈夫?』と言いたげに、キュウンとユキが鳴いた。
気が付いたら、全身に冷や汗をかいていた。
「ユキ、大丈夫よ。なんか、いやな夢を見たの。汗をかいたから、もう一度お風呂に浸かりたいから、ユキも付いてきて。」
そう言って、しっかり寝静まった暗いお城の廊下を歩きながら、お風呂に向かった。
湯船に浸かって落ち着くと、『たぶんさっきの夢は、疲れていたせいで見たのだわ。お父様とお母様が私を殺そうとすることなんて有り得ないわ。』そう思おうとした。
湯船からは、綺麗な三日月が、姫をいたわるように輝いていた。
ユキは眠いのか、湯船には使わずに洗い場で丸くなっていた。
『そうよね、湯部にに使ったら、乾かすの大変だものね。』
しばらくして、湯船から上がり、三日月に照らされながら、以前より少し膨らんだ胸と女性らしくなった体を拭いた。着替えを持ってくるのを忘れたので
「ユキと一緒、裸のまま部屋に戻ろう。」と、訳の分からないことを言って、そのまま暗い廊下を歩いて
部屋に戻り、ベッドに横たわった。
しばらくして、ユキの寝息に姫のかわいい寝息が重なった。
次の日、強く差し込む太陽の光に無理やり起こされた。
温かいと思ったら、全身がベッドで何も来ていない状態で太陽の光に包まれ、輝いていた。
ベッドのそばを見ると、ユキが夏用のシーツを加えて姫様の方を見ていた。
「そうね、ちょっと寝すぎたかも。でも、昨日色々有ったから。」
そう言うと、立ちあがって新しい服を着て、部屋にある洗面所で顔を洗って、ユキと一緒に食堂に向かった。
食堂には、夢のデジャブのように父親と母親が向かい合って食事をしていた。
「おはようございます。お父様、お母様。」姫が、そう言うとお父様もお母様も、姫とユキをみて不機嫌そうな顔をして、
「おはよう。」と言っただけだった。
『多分、自分が最後にテーブルに着いたことに怒っているのだろう。』と思ったけど、そんなこと今までに何度もあったけどいつもは、ニコッと笑って、『先に頂いてるわよ。お寝坊さんね。』と言ってくれていた。
国王になった自分への教育のつもりかもしれない。
玄武も、そばに居たけど何も言わなかった。
ふたりは、食事が終わるとそのまま、腕を組んで姫の方を見ずに食堂を出て行った。
こんな時、ユキが口を利ければいいんだけど、狐の姿の時は、人間お言葉が喋れなかった。
「ユキ、変なお父様とお母様ね?」と言うと、クウウンと言うだけだった。
その日は、学校の課題やら、読書やピアノの練習やらで1日を過ごした。
そして、夜になると、あの嫌な夢を再び見てしまった。




