夏休み7
その日の12時に雪と一緒に中庭に向かった。
周りは、もう真っ暗で、お城の廊下の明かりがうっすらと漏れていただけだった。
ほとんど足元も見えない状態だったけど、辛うじて、ユキのおかげで転ばずに向かうことができた。
「来たわね、レイラ。」
「もちょっと待っててね。」
「お母様、どうしてこんなに暗くしてるんですか?」
「その方が、都合がいいのよ。」
しばらくすると、大きな鳥が、羽ばたきをするような音が聞こえてきた。
「気たわね。」
近くにヘリコプターが着陸するような突風が姫とユキを襲った。
姫は、慌ててその風にユキが飛ばされないように抱え上げた。
「お母様、何なのこの風。」
風が収まって、目を開けると目の前に何か巨大な黒いものがいるのが分かった。
「あなたのお父さんよ。」
改めて、その黒いものを見上げた。
竜なような姿が、薄っすらと暗闇から浮かび上がった。そして、赤い目。
その目は、飛行機の中から見えた赤い目とそっくりだった。
「お父様?」
「隣国から帰って、国王が亡くなったと聞いて、おかしいなと思っていたのよ。」
「だって、あなたのお父さん黒龍だもの。そんなに簡単に死なないわよ。」
「それで、玄武に調べて貰ったら、北の国に遠征に行って、それでしばらく帰ってこなくなったから、死んだものとみなされたみたい。」
「で、色々調べてみたら、遠征で龍に変身して、戦ったまでは良かったんだけど、それから人間に戻れなくなって、北の山の中に隠れていたんだって。」
「だけど、今日の昼間、あなたの乗ってる飛行機に異変を感じて空を飛んでるのを、玄武が見つけたってわけ。」
「それで、今日、真夜中に来るから、あなたに合わせてくれって。」
「お父様?」
そう言って、姫は、恐る恐るその龍に近寄った。
すでに、お母様はその龍の首を撫でていたのと、目を見るととてもやさしそうな目だったので、姫は、そっとその龍の手に触った。
姫さまは、じぶんの手から、その龍に何かが流れ込んでいくのを感じた。
そうすると、龍は、瞬く間に、人の姿に戻っていった。
そこには、まぎれもなく大好きなお父様の姿が現れた。
「お父様!」そう言って姫はその胸に抱き付いた。
「レイラ、そして妃よありがとう。お前たちの力で、再び人間の姿に戻ることができたよ。」
三人は、しっかりと抱き合った。
「レイラ、やっぱりあなたの力はすごいわね。昼間、私も試してみたけど変化なかったから。」
「違いますわ、お母様、お母様がいてくれたおかげですわ。」
再びの再開を喜んでいると、ユキがくしゃみをした。
「夏と言っても、深夜は冷えますわ。さあ、早く部屋に入りましょ。」
「殿下、でもいきなりお城の中から現れたんじゃ、国民に疑われます。」
「明日、玄武と一緒に、再び、北の国境から、戻ってきたように致しましょう。」
「そうしよう。」
3人は、ユキの先導で並んでお城の中に入っていった。
翌朝、日が昇る前に父親と玄武は、北の砦に向かってでかけた。
昼頃には、街中を通って、お城に帰ってくる予定だった。
姫とユキは、お城の中から、お父様が帰ってくるあたりを見ていると、街が、にわかに騒がしくなった。
声は聞こえなかったけど、玄武の馬車の周りを街中の人が取り囲んで、喜んでいるのが分かった。
そして、王妃と姫様のもとにも、近衛兵が駆け込んできて、
「王様が、ご帰還されました。」と大声で伝えてきた。
廊下で、お母様に出会うと、
「行きましょう。レイラ。盛大にお祝いしないとね。」
そう言って、二人は、肩を並べてそして、ユキが足元をちょこまかと歩いて、お父様を、門の所まで迎えに向かった。




