夏休み4
搭乗口から、飛行機に乗り込む。3列席の窓際の席に座った。
隣は、どんな人がくるかなと思ってたけど、隣は誰も座らなかった。その隣に、恰幅のいい紳士が座った。
まるで、奥に座っている私を他の乗客から隠すように。
もしかしておじい様が、私のボディガードとして手配した?まさかね。
その紳士を見ていると、その視線に気づいたのかこちらを見てニコッと笑った。
どこかで見たような雰囲気だった。
『ケンタッキーのカーネルサンダーおじさんに似てる。』
「まもなく当機は、離陸いたします。」キャビンアテンダントのアナウンスが流れた。
ゆっくりと飛行機が動き出した。
滑走路まで来ると、ブレーキの掛けられた飛行機のエンジン音が大きくなった。
ブレーキを解除された飛行機は、機首を上げそのまま空に飛びあがった。
空への最短距離を迷いもなく進むように斜めのまま進む機体。
まだ、斜めの飛行機の中で、無事離陸できたことを強調する亜kのようにキャビンアテンダントが動き出した。
水平飛行になって、しばらく経つと、シートベルトを外しても大丈夫のサインがともった。
後は、目的の空港に着くまで、のんびりと本でも読んで過ごそうとおもって、足元のカバンに手を伸ばそうとしたら、カバンが動いたような気がした。
目の錯覚?
そのまま、膝の上にカバンを持ち上げ、そっとチャックを開けてみた。
「ユキ!」思わず声が出てしまった。
慌てて、チャックを閉めて周りを見渡した。
再び、隣の紳士と目が合った。
「まさか、富士山の頂上に雪なんて、無いですよね?今は夏だし。」と言って、ごまかした。
「そうですね。」と怪訝そうな顔の紳士。
しばらく、窓の外を見るふりをして、再び、カバンを開けた。
そこには、姫のパンティーを頭の上に被った銀色の毛並みの狐がいた。
多分、カバンに潜るときに被ってしまって脱げなくなったのだろう。
「そう言えば、セキュリティチェックの時に、狐のぬいぐるみがどうのこうのって、子供が係の人ともめてたっけ。あれは、ユキの所為なのね。」
そっと、頷くユキ。
「しょうがない、こうなったら一緒に行きましょう。」
そう言うと、姫は、シートのボタンで、キャビンアテンダントを呼んで、毛布を頼んだ。
膝の上にカバンを載せて、その上に毛布を掛けてからカバンを開けて、ユキを外に出した。
ユキは、隣の紳士に見えないように窓側に尻尾を出してゆらゆらさせた。
姫様は、そっとユキの頭を撫でながら、寝たふりを決め込むことにした。
幸い隣の紳士は、さっきのやり取りで、姫を関わらない方がいい奴認定をしたみたいで、極力こちらも見ないようにしていた。
飛行機に乗って4時間が経とうとしていた。外は、青い海が広がっていた。
今日に、飛行機が、ガタガタと音を立てながら、揺れ出した。
気流の乱れなのか、エアスポットに入ったのか、急に飛行機が高度を下げたというより落ちた。
シートベルトをしていない乗客や荷物は、天井にぶつかってそして落ちてきた。
姫は、シートベルトをしていたので大丈夫だったがユキは毛布と一緒に天井まで飛ばされて、そのまま姫の膝の上に戻ってきた。
旨く、ユキをキャッチできたのはいいが、周りでは、悲鳴が上っていた。
窓の外を見ると、黒い雲が、飛行機を取り囲んでいた。
「ユキ、何か変ね。」
飛行機を取り囲む雲を見ていると、その中に赤い瞳のようなものが見えた。
「わたしを狙ってきたのかしら?それとも、何か他の理由があるのかしら。」
「ユキが、居てくれるお陰で落ち着いて行動できるわ。」
「これ以上、この飛行機に被害を加えるようなら容赦しない。」
そう姫が、思った瞬間、嘘のように黒い雲が消え、飛行機は何事もなかったように飛び続けた。
気が付くと、隣の紳士は、気絶していた。頭に荷物が当たったようだった。
申し訳ないけど、その方が都合よかったので、そのまま、空港に着くまで、気絶していてもらうようにした。
『多分、命には、別状ないでしょう。』




