訪日2
「本機は、まもなく離陸いつぃます。皆様、シートベルトをお締めください。」
「おう、これがシートベルトか。」
ガチャ。初めて乗る飛行機は、この離陸の瞬間がたまらない。体全体がシートの押し付けられ、斜めになった機体がそのまま空に向かって飛んでいく。
まだ機体は、斜めなのに、もう安全と言わんばかりにキャビンアテンダントが動き出す。
水平飛行になり、しばらく飛んでいるとシートベルを外しても大丈夫のサインが出る。
「ほら来た。」
「王女さま、お城の中ってどうなってるの?」
「毎日何してるの?」
と一瞬にして、子供たちに取り囲まれた。
「こら、ガキ、どさくさに紛れて胸触るんじゃね!」
「どこが胸かわからないのに偉そうに言うな!」
「はい、男子は、その線から後ね。女の子だけで、楽しみましょう。」
「お城のお風呂って大きいの?」
「大きいわよ。毎日お風呂で泳いでる。今度、女子だけ招待してあげるね。みんなで入りましょう。」
「いつも何してるの?」
「朝から、書類にサインしたり、外国語の勉強したり大変よ。」
「お友達いないの?寂しくない?」
「猫とメイドがいるから、大丈夫よ。ありがとう。」
「じゃ、みんなでお姫様ごっこでもしましょうか?」
「この首飾りが、本物のお姫様の印よ。」
「一人づつかけてあげるね。」
そう言うと、いきなり子供の母親がカメラを持って集まった。
「はい、並んで順番よ。そこの男の子もはいいていいわよ。」
キャビンアテンドが、夕食の準備を始めたので姫様ごっこは、お開きにした。
「なんだかんだ言って、2時間ぐらいは、つぶせたかな。」
機内食は、エコノミーだけど結構おいしかった。
「さてと、食後のコーヒーも飲んだし、歯でも磨いて寝るかな。」
再び、自分御シートの戻って、首飾りがあることを確認してから、毛布をかぶって寝ることにした。
起きたら、日本か?
国民の機嫌も取れたし、まずまずの初日かな。
2時間ぐらい寝たころに、大きな雷の音で目が覚めた。
あんなに、晴れてたのに、いつの間にか窓の外は、嵐になっていた。
「何これ?すごい雷。でも、確か飛行機には、雷は落ちないんだっけ。伝導体がどうのとか。」
「でも、すごい雷ね。」
『姫様、姫様・・・』頭の中で声がした。
『首飾りは、大丈夫ですか?』
『大丈・・・夫じゃ、無い、無い、無い、首飾りがない。』
『やはり、この雷はその所為ですね。』
『どこに、行ったか分かります?』
『わからん。ちょっと探してみる。』
それから、私は、そばを通った、男の子を捕まえて、
「ちょっとみんなを集めてきて。」
暫くすると、子どもたちが集まってきた。
「あなたたちに今から、王女の騎士になるテストをします。見事、クリアすれば、あなたたちを私の騎士に任命します。」
「何を、すればいいの?」
「さっき見せた首飾りが、何者かに盗まれました。貴方たちは、それを見つけ出し、どこにあるか私に報告して下さい。」
「取り戻さなくていいの?」
「それは、危険だから私がやるわ。」
「わかりました。姫、我らにお任せを。」
そう言うと、狭い機内の中を器用に動き回り出した。
「でも、誰が一体私が寝ているすきに首飾りを盗んだのだろう?」
「全然、気が付かなかった。」
暫くすると子供たちが戻ってきた。
「姫様、見つけました。向こうで寝ている子供が首からかけてました。」
「わかったわ、ありがとう。ちょっと、そこまで連れて行ってくれる。」
子供も達は、自分たちの手柄と言わんばかりに私の手を引っ張った。
どんどん飛行機の前の方に連れていかれた。
それぞれのシート個室のように仕切られたところにやってきた。
そして、子供たちが一斉に指をさした。
そこには、まぎれもなく私の首飾りをしながら寝ているちょっと小太りの侯爵の子供がふんぞり返って寝ていた。
私は、迷わず彼をゆすり起こし、首飾りを返すように言うと
どこかともなく侯爵夫人が現れ
「あら、姫様、うちの息子に何をされるんですか?」
「こいつ、私の首飾りを取ったのよ。」
「あら、失礼な、これは、我が家に伝わる家宝ですわ。姫様でも泥棒呼ばわりは、許せませんわ。」
その時、窓の外がさっきと違って、青空になり綺麗な星が見えているのに気付いた。
やっぱり、アキとサキが言ったことは本当だったんだ。私が、この首飾りに近づくことで嵐が収まった。
「じゃ、いいわ、そうしてなさい。その代わり、この後、何があなたのご子息に起ころうと知りませんからね。」
「さあ、みんな、行きましょう。こんな所じゃなく、エコノミーで楽しくやりましょう。」
「私が、飛行機会社に連絡して、国王の特権で飛行機にあるお菓子を私の騎士たちみんなに配るようにしてあげる。」
多分、あの侯爵のガキが乗ってるってことは、お菓子がいっぱいこの飛行機に積んであるってことよ。
それに、日本に着いて、あの首飾りをしたまま、私から離れたらどうなるか実験してやりましょう。