女子寮
放課後、白虎と姫と真紀は、女子寮に帰るところだった。
「白虎、今日も護衛ありがとう。」姫様が、白虎にそう声を掛けた。
「真紀、姫様をよろしくな。」
「わかってるわよ。それより、あなた、そこから一歩でもこの門の中に入ってきたら、警備員呼びますわよ。」
「警備員ごとき、へでもないよ。」
「そんなこと言っていいの?学校退学になったら、二度と姫様のお顔を見れなくなってよ。」
「わかったよ。姫様、もし何かあったら、これを使って連絡してくれ。」そう言って、黒い石のはまった首飾りを渡した。
「これに似たものを、前にもっていたような気がします。」
そうレイラが言った。
「これは、昔から我が家に伝わるもので、この石を持って助けを求めれば、その声が、同じ首飾りをしているものに聞こえるというものです。」そう言って、白虎は、自分の首飾りも姫様に見せた。
「そうなのね。ありがとう。御守りにします。」
「そんなこと言って、カメラか何か仕込んでないでしょうね?盗撮なんてしようものなら、本当に退学にしてやるから。」
「気に入らない野郎だな。俺が、そんなことするように見えるか?」
「見えるから、言ってるのよ。」
「もういい、わかったから。でも、くれぐれも姫様を守ってくれよ。」
関西から、白虎が出張ってくるなんて、本当は何かあるのかしら?と真紀は思ったが、そのまま、姫様と連れ立って、部屋に戻っていった。
姫様は、寮に戻るといつも一階の広間に置いてあるピアノを弾くようになった。
「姫様、ピアノなんていつ習ったんですか?」
「習ったことなんて無いわよ。でも、鍵盤を叩けば音が鳴るんだから、後は、適当に引いてるだけ。」
「そうなんですか?でも、なんか、優しいメロディーですね。」
「そう?ありがとう。私も自分で引いていて、徐々に気持ちが落ち着くのを感じるの。」
姫は、一時間ぐらい、ピアノを弾いて気が済んだら、自室で着替えてそのままお風呂にむかった。
と言うのも、17時から18時までは、姫さましかその寮のお風呂に入れなかった。
『他の方も一緒に入ってください。』と言っても、誰も入ってくれなかった。
真紀ですら、お風呂の外で、バスタオルを持って待っている。
レイラは、今日、白虎からもらった首飾りに試に、唯一一人になれるお風呂の中から話しかけることにした。
「白虎、聞こえる?」
しばらくして、白虎のびっくりしたような声が聞こえてきた。
「姫様、何かあったんですか?今すぐ、そちらに向かいましょうか?」
「大丈夫よ。今一人だから、試に使ってみたの。だって、本当に必要な時につながらないと困るし、他の人に見られても困るでしょ。」
「そうですね。でも、声がやけにこもって聞こえるんですけど。今、どこですか?」
「問題よ、女子寮の中で私が、一人になれるところは、どこでしょう?」
しばらく無言の白虎。そして、小さな声で、
「トイレですか?」
「残念。お風呂でした。」
「ああ、白虎、今私の裸想像したでしょ?」
「してませんよ。後、すみません。1つ言い忘れてましたが、場合によっては、その首飾りを通して、そちらの状況が見えたりします。」
「きゃっ。」と言って、姫様は、慌てて湯船に浸かった。
その声を、聴いて外で待機していた真紀が、扉を開けて風呂場をのぞいた。
「姫様、何か有りました?」
「大丈夫です。ちょっと、湯船の中で滑っただけです。」
「そうですか?でも、何か有ったらすぐに言ってください。」
「わかったわ。」
「白虎、さっきは、盗撮しないって言ってませんでした?」と小さな声で、首飾りに向かってしゃべった。
「いや、何か有った時に状況が分からないと助けにいけないじゃないですか?それに、自分の首飾りの黒い石を覗かないと見えないですから、大丈夫です。」
それを聞いて、姫は、自分の首飾りの黒い石をのぞき込んだ。
そこには、こちらを見てる白虎の目が映っていた。
「わあっ!」っという声が、首飾りからお風呂中に響き渡った。
「姫様、大丈夫ですか?」と間髪を入れずにマキがお風呂の扉を開けた。
でも、姫様しかいないのをみて、怪訝な顔をした。
「なにもなくってよ。」
「でも、今、男の人の声が聞こえたように思いましたけど。」
「女子寮なのに、男子がいるわけないでしょう。真紀の聞き間違いよ。」
「そうですね。」そう言って、再び扉を閉めた。
「白虎、覗いていたでしょう。」小声で再び姫様。
「すみません。でも、いつも首飾りを放さずに持っていただけると助かります。」
「残念ね、私しかいないから、他の人の裸は、見れなくてよ。」
「そう言う意味じゃなくて、姫に何か有ったらすぐにわかるじゃないですか。」
「しょうがないな、じゃ、これからは、私の裸だけで我慢してね。」
「いえいえ、姫様の裸を見たなんて、ばれたら父親に殺されてしまいますよ。」
「ばれたらって言ったわね。やっぱり見たのね。」
「見てませんって。」
慌てる白虎をからかっていると、ひとりでに笑みがこぼれてきた。
「白虎、もう出るから、覗いちゃだめよ。」
「わかりました。手で、握って見えなくするので大丈夫です。」
その言葉を聞いて、『もしかしたら、触れてる感触も伝わるのかしら。』そう思った姫は、その黒い石を小さな胸に押し当てた。
「白虎、感じた?」そう聞いたけど、白虎からは返事が無かった。その代わりに、『どす、ごん。』という、人が倒れれて何かにぶつかるような音が首飾りから聞こえてきた。




