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転校生

 レイラは、毎日、寮と学校を行き来していた。

忘れた過去の上書きに、1年を費やそうとしていた。

記憶のない1年があるということも徐々に忘れかけ、普通の学生生活を送ろうとしていた。

同室の3年生の山田佐紀先輩も卒業して部屋を出て行った。

 2年生になれば、一人になれると思っていたけど、間髪入れずに同じクラスの白川真紀が、レイラの部屋に引っ越してきた。

洗濯から、身の回りの世話を今度は、真紀がそつなくこなすようになった。

この寮に入ってから、1度も洗濯も部屋の掃除もしたこともない。

さらに言えば、翌日の授業の準備すら、真紀が揃えていた。

『このままだと、本当のお姫様じゃない。』そう思って、何度も真紀に『自分でする。』って、言っても『姫は、何もしなくていい。』の一点張りだった。

 そんなある日、2年生のクラスに転校生がやってきた。

「今日は、転校生を紹介します。」

2年生からの担任、英語教師の中村亜紀先生が、一人の生徒を紹介した。

相変わらず、隣に座っている白川真紀の英語の先生を睨むことがなくなったのは良かったけど、前の英語の先生は、行方不明になったとのうわさがまことしやかに流れている。

「please self introduction.」

「先生、日本人なら日本語で言ってください。」と言って、彼は、先生を睨んだ。

「名前は、高橋白虎。」

「大阪から、来ました。本日からよろしくお願いします。」と言った。背中に白虎の刺繍の入った学ランを見せつけながら。

それから、彼は、クラスの女子の顔を品定めするように見渡した。

そして、その目が、レイラの所で止まった。

慌てて、真紀が、その視線の前に立ちはだかろうとしたが、途中で何かに邪魔されたように動きを止めてしまった。

「三下は、下がってろ。」

それから、1分程度レイラと白虎は、目を合わせていた。

「姫さん、お久しぶりです。自分は、貴方を守るために来ました。」と、深々と頭を下げた。

『誰、この人?』と思ったけど、一目見たときに、遠い昔に会ったような気がしていたけど勘違いじゃなかったみたい。

クラスの男子は、その言葉に『わー。』と大きな声を上げたが、彼が睨むと一瞬で静かになった。

 そのまま彼は、レイラの隣の席に座り込んだ。

不思議なのは、昨日は、あんなに元気だった隣の席の城之内くんが、今朝から学校を休んでいることだった。

「先生、今日から城之内君は、しばらくお休みします。って、昨日、僕の所に連絡が有りました。だから、ここに座って良いでしょ。」と言いながら、先生を睨んでいた。

「わかりました。城之内君が来たら、あなたがすわる予定の席に座ってもらうことにします。」

「ありがとうございます。」

「白虎さん、よろしくお願いします。」

 他の男子生徒が怖がる中、レイラは、彼の目を見てそう言った。

「さすが、姫さんだ。気迫が違う。こちらこそ、よろしくお願いします。父親からも、死んでも姫さんを守るように言われてきました。」

「そこら辺の妖狐どもにはかまうなとの事なので、先生どうぞ続けてください。」

レイラを含めクラスのみんなは、その言葉が理解できなかった。この教室にいた二人いや2匹を除いて。

それから、姫の右には真紀、そして、左には、白虎が常に並んで歩いていた。

トイレと夜はどうしたかって?

 トイレは入り口で、そして、夜は部屋の前でずっと座って周りを見張ってた。

白虎が居ないと思って、姫様に近づこうとした男子生徒は、ことごとく知らない間に後ろに立っていた白虎に殴られた。

「白虎、そんなことするんだったら、もう私に近づかないで。」って姫様に言われたときは、一週間ぐらい落ちこんでいたのに、次の週には、メガネをかけた優等生の格好をして以前と同じように並んで歩いていた。

 姫様に近づいてくる男子学生にも、気持ち悪いぐらい丁寧な言葉で、接するようになった。

そうこうしているうちに、いつの間にか、姫様の周りに学生たちが集まるようになった。

と言うのも、この学校の生徒たちが、他の学校の不良たちにいじめられていると、白虎が飛んできて、助けてくれるようになったからだ。

それも、姫様の命令だった。

ただ、違ったのは、同級生の真紀と担任の亜紀先生にだけは、いつも姫様を守ってでもいるかのように威圧的な態度で接していた。

「白虎、どうして、あの二人には、威圧的なの?」と聞いても、笑うだけで何も答えてくれなかった。

そして、『ただ、ユキが、今ここにいない以上、自分だけを信じてほしい。』とだけいつも言っていた。

『ユキって誰?』って、いつも思いながら聞いていたけど。

多分、ユキと白虎だけが、姫様が生まれ変わるカギになっているのかもしれない。











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