お母様
翌朝、お城の執務室で仕事をしているとお母様がknockもせずに入ってきた。
「おはよう。朝から、大変ね。」
レイラは、ちらっと時計を見た。
「お母様、もうすぐお昼ですよ。」
「そうね。」
「日本の大使館は、いつから始まるんですか?」
「そうね、そのうちに始めようかしら。」
「それまでは、こちらで対応します。」
「あなたも、もの好きよね。隣の国の国民にもパスポートを発行して、日本に送り込んでくるなんて。」
「でも、ちゃんと旅行でお金を落としてるでしょ?それに、隣国もこの国とのつながりを切りたくないから表面上は、友好国同士よ。」
「でも、その国の国王から命を狙われたんでしょ。」
「この国の人間にも命を狙われてるから、一緒ね。」
「お母様も、気を付けてね。」
「だいじょぶよ、私を人間ごときが殺せるはずないわよ。」
「そうですね。」
「お母様、一つお聞きしてもいいかしら?」
「なに?」
「どうして、お母様は、この国に嫁いできたんですか?」
「それは、ひ・み・つ。」
「娘の私にも?」
「そうね、日本に来た時にお会いして、優しかったので気に入ったのよ。それに、日本を離れかったしし。」
「狭い国なのに、色々あって鬱陶しいでしょ?総理大臣も、国民が選ぶ訳でもないし、表だって、悪いことしなければ、順番になれるような組織じゃあね。しかも、いかにも自分が国を動かしてるって顔をしてる。国民も、それに慣れ切ってる。選挙に来る年代にウケる政策を掲げて、公約を守らなくても誰も責めないなんて、変な国よね。馬鹿みたいに高い手当払わされて。」
「あのまま日本に居て、お父様が引退したら、私がそのいやな奴らを守らなきゃいけなくなるのよ。」
「だから、あなたのお父様に、嫁いできたのよ。安心して、愛してもいたから。貴方が、生まれて本当に二人とも喜んだんだから。」
「慰めは、良くってよ。お母様。」
「でも、外から見ると、日本ほど平和な国もないわよね。」
「何故かわかる?」
「4神がいるから?」
「それもあるけど、今までは周りを海に囲まれてるっていうのも有ったわね。」
「今は、技術も進歩して、地理的な優位も意味をなさなくなる。」
「要するに、他国との連携を取る必要も出てきたのよ。」
「この国にレアメタルが埋蔵されていたのは、偶然と言うことにしておきましょう。」
「お母様、色々教えて頂きありがとうございます。」
「娘とは、秘密は、持たない主義だから。」
「うそでしょ。」
「ほんとよ。」
その時に、ドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
その声を聴いて、ユキが入ってきた。
「奥様、こちらにいらしたんですか?」
「姫様、昼食の準備ができました。奥様もご一緒にいかがですか?」
「よろしければ、食堂の方に運びます。」
「ユキ、ありがとう。」
「そうね、話の続きは、食堂で、ワインでも飲みながらしましょうか?」
「ユキ、貴腐ワイン有ったかしら?」
「ございます。」
「じゃ、レイラと一緒にお昼、頂くわ。」
「畏まりました。」
ユキは、踵を返して出て行った。
どことなく、ダンスのステップのような足さばきなのは、私の思い過ごしかもしれない。
もしかして、ダンスに誘ってる?
「ユキも、すっかり、メイドが板についたわね。」
「サキも、私と一緒に戻ってきたから、うれしいのかも。」
「そうかもしれませんね。」
「では、お母様、食堂に参りましょう?」
「あなた、まだお酒は、飲めなかったのかしら?」
「大丈夫です。法律は、状況に応じて、変えるためにあるんです。」
「おっ、出たな権力者。」
「それほどでも。」
「でも駄目よ。母親として、未成年の飲酒は認めません。」
「そうおっしゃると思ってました。」
「言うようになったわね。」
「お母様の娘ですもの。それに、一人でずっとやってきましたから。」
「はいはい、母親らしくなくて済みません。でも、しょうがないでしょ、隣国に捕まってたんだから。」
そんなことを言いながら、二人仲良く食堂に向かった。
窓の向こうでは、先日の喧騒とは不釣り合いな白鳥が、広い湖で羽を休めていた。




