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新しい大使

 あっという間に、2週間が過ぎた。

あの騒ぎが、嘘のように静かだった。

あの後、玄武が、敵のアジトを見つけ、コテンパンにやっつけたのが原因かもしれない。

結局は、燐光の追放された国王と追い出した侯爵とが手を組んで、さらに、以前雇ってた殺し屋の残党がグルになっていたらしい。

 彼らは、その日訪れた大使を人質にして、何とか復権しようと企んだようだ。偽大使とも知らずに。

夜襲で誤って殺してしまっても、姫様の所為にして、すべてを闇に葬る予定だったようだ。

その後、彼らがどうなったかは玄武しか知らない。

玄武は、いつも通りに仕事をしているので、誰もそのことには触れなかった。

「姫様、聞きました?」ユキが、その日の書類を確認して、サインをしている姫様に向かって声を掛けた。

「なに?」

「日本から新しい大使がやっと来るみたいですよ。その便で、お母様も戻ってこられるようです。」

「そう。」

 今回は、歓迎会をしないので、少年騎士団とのダンスの練習もなく大使も到着したら、お城へも入れずに大使館の方で何事もなかったように入るだけだった。

「ユキ、お母様が戻ってくるなら、内輪だけで、歓迎会でもしますか?」

「私、姫様とダンスしたいです。」

「あっ、それいいわね。」

「じゃ、これが片付いたら、大広間で練習しましょう。」と言うと、ユキの顔が曇った。

 先日の襲撃で、あの大広間で数人が死んでいる。私は、感じないけど敏感なユキは、血の匂いを感じてるのかもしれない。

「ユキ、私は、気にしなくてよ。どうせ、このお城にも血塗られた歴史の上に成り立ってるんでしょうから。」

「要塞タイプにしては、守りが弱いわよね。」

「そうですか、姫様がそうおっしゃるなら。」

「それと、お風呂は、プールに改装しました。それと、3階に新しいお風呂がもうすぐ完成します。」

「すごいわね。お母様も喜んでくれるかしら?」

「それと、プールは、国民にも開放してね。」

「わかりました。冬場は、以前のお風呂の施設を利用して温水も入れるように致しました。」

「周りに海がないから、皆さん喜びますよ。」

「そうね。」

 それから、数日後日本から戻ってくる母親を迎えに、馬車で空港まで向かった。

飛行機からは、お母様が、ハイヒールをカツカツと音を立てながら、タラップを降りてきた。

「おかえりなさい、お母様。」

「ごめんに、結構長くなって。それに、大変だったわね。偽大使なんて。ちゃんと政府に抗議しておいたから。」

「ありがとうございます。」

「と言うことで、今日から、私が日本の大使だから、丁重に扱うように。」

ちょっとびっくりしたけど、顔には出さない。ちょっと、数秒答えに困っただけ。

「そうなんですね。まさか、お母様も偽大使って言うことは、無いですわよね。」

「あなたも、身内が大使の方が色々やり易いでしょ。玄武、よろしくね。」と、玄武の方を見た。

「畏まりました。」玄武が、即答した。

さては、知ってたな。やっぱり、玄武は、信用できない。

問い詰めても、しらばっくれるに違いない。

母親との入れ違いに、偽大使が飛行機に連れていかれた。

「あれが、偽大使ね。」そう、母親が言った。

「そうです。」と玄武が、答えた。

「生かしておいたのね。玄武にしては、珍しいわね。」

「いえ、代わりに城を襲ったやつらには数倍の苦痛を与えておきました。」と言って、ニヤッと笑った。

「そうなの?そっちも、とりあえずひと段落と思っていいのね。」

「大丈夫です。」

「レイラ、お城に行きましょ。」

「はい、お母様。」

「ユキも久しぶりね。レイラを守ってくれてありがとう。」

「すみません。姫様を危険な目に合わせてしまって。」

「気にしなくてもいいわよ。」

「人間に、私たちを傷つけるなんてできないから。」

「はい、奥様。」そう言って、ユキが深くお辞儀した。

 やっぱり、ユキもお母様が怖いのね。

まあ、何とかなるでしょう。でも、これぐらい迫力が無いと一国は、まとめ上げられないわよね。

あれやこれや、なんやかんやで、みんなで城に向かった。

 お城に着いた途端、大広間で、歓迎会を開いた。

姫とユキは、ワルツを踊ってみんなをもてなした。

母親も、ひとしきり食事やダンスを楽しんだ後、疲れたのか自室に入っていった。

とりあえず、何事もなくその日が過ぎていった。





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