会議
1時間も経っただろうか、玄武の使いがやってきた。
「姫様、お城の中も片付いたので一度昨日の状況のご説明と今後の対応を打ち合わせさせてくださいと、玄武様がおしゃられてます。申し訳ありませんが、2階の執務室までいらしてください。とのことです。」
「わかったわ。すぐにいきます。」
「ユキ、一緒に行きましょう。」
「姫様、昨日の襲撃は、一体誰の差し金なんでしょうね?」
そう言いながら、姫様とユキは階下に向かった。その後を、少年騎士団が続いた。
2階までは、結構階段を降りなければならなかった。
「朱雀のビルみたいにエレベーターが欲しいわね。」
「そうですね、姫様。」
「あっつ、姫様贅沢言ってる。」騎士団のひとりが声を掛けた。
「でも、毎日上り下りしてたら、疲れますよね?」別の騎士団の女の子が助け舟を出した。
「ありがとう。普段は、ここまで上がってくることは無いからいいんだけど。やっぱり、欲しいわね。」
「そうですね。姫様。今度、玄武に言っておきます。」
少年騎士団とは、執務室の前で別れた。
「姫様、気を付けてね。」
「あなたたちもね。今日は、ありがとう。」
そう言うと、騎士団は、お城の中庭の方向に走っていった。
執務室に入ると、玄武と偽の大使が、手足をロープでぐるぐるにまかれて立っていた。
「まだ生きてたのね。」ユキが、偽大使を睨んだ。
「姫様、申し訳ありません。こちらから伺えばよかったんですが、こいつに色々聞きながらの方が良いと思ったので。」
姫様は、大きな机の向こうに窓を背に椅子に座ろうとした。
慌てて、ユキが、外を見てからカーテンを閉めた。
「姫様、迂闊に窓のそばに立っては、駄目ですよ。誰が、狙ってるかわかりません。」
「試に、そいつを窓にそあにったせてみましょうか?」
偽大使の体が、小刻みに震え出した。
「これからする質問に、答えなければそうするわよ。」
「昨日、私たちを襲ったのは、あなたの知り合い?」偽大使は、口も縛られているので、
「イエスなら頷いて、ノーなら首を振ってちょうだい。」
偽大使は、ちょっと渋っていたが、頭を横に振った。
多分、偽大使は、下っ端で夜襲のことは、聞いていなかったのかもしれない。それに、彼を捕まえたことで油断しているタイミングを狙って襲ってきたのかもしれない。
もしくは、本当に関係ないかだ。
「お前は、日本政府に雇われて、この国に来たのか?」
これも、首を振った。
「質問は、ここまでだ。とりあえず、日本政府からは、お前を送り返すように連絡が入った。」
「日本人だったことが、幸運だったな。パスポートが無ければ、そのまま、湖に沈めてもよかったんだが、仕方が無い。」
玄武は、そう言うと、偽大使を城の護衛に引き渡し、
「地下牢に日本からの迎えが来るまで入れといてください。それと、食べ物だけは、与えるように。」
と言った。
玄武は、こちらを見ながら、
「今後のために、自分たちが、日本人に寛容であること、そして、約束を守ることを示しておきましょう。」
「それに、貿易の件は、ちょっと強引だけど、うまく話が成立したので問題ないと思っていますし、
日本政府としては、我が国を、厄介者と認識されても困りますので。」
貿易の件は、青龍の縁者でなければ、さっさと追い返されていたかもしれない。
「多分、夜襲は、隣国の国王と侯爵が仕組んだことだと思います。」
「お城の間取りと姫様の行動を利用して、最後の悪あがきをしたってところかもしれない。」
「玄武とユキが居なければ、自分は、どうなっていたかわかりません。ありがとう。」
「姫様、もったいないお言葉です。湯船に、睡眠薬を入れられたことに気付かなかったのは、私の落ち度です。」とユキが言った。
「とっさの事とはいえ、お二人を裸のまま牢屋に送ってしまい私も申し訳ありませんでした。」
「ユキが、一緒なので何とかなると思ってましたが。」
「とりあえず姫様、しばらくは、上階で窓のそばには、立たないでください。国民には、体調が悪くて臥せっていると伝えます。また、夜襲が有ったことも国民が、心配するので伏せておきます。大使が偽物であったことも、新しい大使が来るまで伏せておきます。」
「わかったわ。しばらくは、おとなしくしてるわ。」
「玄武、早く昨日の夜襲の元締めを突き止めてください。」とユキ。
「大丈夫。そのあたりは、抜かりはない。逃げた兵士に、GPSを仕込んである。」
「今晩中には、ボスの居所が分かるでしょう。」
「捕まえに行くときは、連絡しなさいよ。私も行きます。」と再びユキ。
「ユキは、駄目。私のそばに居て。」
「姫様が、そうおっしゃるなら仕方ないですね。」
「わたしも、その方が色々な意味で安心です。しばらくは、お二人とも城の中でゆっくりして下さい。」
「わかったわ、あとは、玄武に任せます。」
「そうそう、お母様も代わりの大使と一緒に戻ってくるとのことです。」
「やっと、母親らしく、娘の心配をしてくれるようになったのかしら?」
「では、姫様、私は、これで失礼します。ユキ、姫様をよろしく。」
ユキは、何故か、玄武を睨んでいた。
「姫様、玄武は、あまり信用しない方がいいですよ。奴は、あくまでも日本政府寄りですから。何を考えてるかわからないところが有ります。」
「まあ、おじい様もそうだから仕方ないわね。そこは、何故、お母様がこの国に嫁いできたかの理由がはっきりすればわかることよ。」
「ユキ、上にもお風呂有ったわよね?」
「ございます。それぞれの部屋に付いてます。」
「良かった、それだけわかればいいわ。」
そう言って、姫とユキは、再び、降りてきた階段を上っていくことにした。




