目覚め
あれから、一か月。
毎日忙しい日々が続いた。
隣の国からは、日本に行きたいという人達が、毎日のようにパスポートを作りに来る。
「玄武、そろそろ街の中に、パスポートを発行できる出張所作ってよ。こう毎日来られると疲れるわよ。」
「姫様が、お約束されたことですので、もう少し我慢してください。」
「でも、パスポート発行代と、飛行機代で儲かってるでしょ。」
「それはもう、姫様のおかげです。でも、日本からの飛行機代には不足してます。」
「それよ、それ。親切で飛行機を手配してくれたんだと思ったら、往復の飛行機代で1千万円って、高すぎるわよ。それなら、機内食、全部食べてきたのに。たこ焼きも。」
「そうですね、姫様。お紅茶お持ちしました。少し、休憩してください。甘い、お菓子もありますよ。お嬢様からの贈り物です。」
「お母様から、頂くわ。でも、お母様もあれから、ずっと戻ってこないし、先日も朱雀と一緒にDランドでのツーショット送ってくるし。」
「そうですわよね。朱雀を締めるって言ってたのに。」
「姫様、お嬢様と朱雀様は、幼馴染ですよ。ずっと仲が良かったから、締めるなんて無理ですよ。」
「もしかして、玄武も幼馴染だったりする?」
「とんでもないです。あんな、ばばあと、いや、失礼、お姉さま方と同じにしないでください。」
「それより、姫様、お隣の国から、姫様を両国の国王にして、国を一つにしたいとの打診がありますが、いかがいたしましょう?」
「お互い、小さな国同士なので、少しでも協力してやっていきましょうとのことです。」
「じゃ、パスポートの発行もしなくてよくなる?」
「そうですね。」
「お互いの国の代表で議会を作って、その上に姫様が指名権だけを持って君臨する。」
「もともと、1つの国でしたし。問題ないかと。」
「わかったわ。後は、任せます。」
「これも、玄武の思い通り?」
「いえ、ここまでは。姫様の日本での活躍がなければ無理です。」
「そう、ありがとう。」
そう言って、フォートナム&メイソンのローヤルブレンドの紅茶を一口すすった。
そして、ポッキーをかじった。
「やっぱり、紅茶には、ポッキーよね。」
「さあ、もうひと頑張りしましょう。」
「ユキ、5時にお風呂に入るから準備しておいてね。」
「はい。」なぜか、頬を赤らめるユキ。
「玄武、5時までに業務を終わらせるから、報告事項が有ったら私が仕事中でもどんどん報告して。」
「畏まりました。」
「まず、お母様の帰国ですが、しばらく帰ってこないとのことです。向こうで、色々やることがあるとのことです。」
「わかったわ。ついでに、この国の大使になって、旅行者の面倒も見るようにお伝えして。」
「畏まりました。それて、来月、日本から大使がお見えになります。大使館は、街の方に作ってあります。来られましたら、ご挨拶に伺いたいそうなので日程が決まりましたらご連絡いたします。」
「その時に、簡単な歓迎パーティを開きますので、明日から、ダンスのお稽古をして頂きます。」
「わたしが?」
「そうです。姫様が。」
「どうせ、ダンスの練習するなら、ブレイクダンスがいいな。」
「私、うまいのよ。日本で、教えて貰った。」
「駄目です。社交ダンスを習って頂きます。」
「わかった。」
それから、5時までみっちり仕事をした。
「玄武、そう言えば、私まだ、13歳だよね。こんなに仕事していいの?」
「大丈夫です。1日は、24時間有りますから。」
「普通、この年頃の女の子は、同級生と遊んでるわよね。」
「日本なら、そうですね。」
「わたしも、遊びたい。」
「ねえねえ、玄武。16歳になったら、日本の高校に留学したい。」
「わかりました。お嬢様とそれまでにこちらに戻ってくるように調整しておきます。」
「ほんと、あのお母様って母親らしくないわよね。」
「そうですね。」
「じゃ、玄武、仕事も終わったから、お風呂に行ってくるわね。」
そう言って、疲れた体を引きずってお風呂に向かった。
「ユキ、お風呂入るよ。」
そう言うと、どこからともなくユキが現れて、服を脱がせてくれた。
「姫様、お疲れ様です。」
それから、綺麗に体を洗って、夕日を見ながらお風呂に浸かった。
しばらくして、ユキが、オレンジジュースを持って来てくれた。
「ありがとう。」
「ユキも、一緒に入って。」
「畏まりました。」
「来月、日本から、大使が来るから、明日から社交ダンスの練習だって。」
「ユキ、ダンスできる?」
「できますよ。」
「こう見えても、子供のころから、ダンスは習ってました。」
「じゃ、教えて。」
そう言って、ユキの手を引いてお風呂から上がった。
「ここで、ですか?滑ると危ないですよ。」
「大丈夫よ、ユキが守ってくれるから。」
「わかりました。」
「最初は、向かい合って、手をつないで、男性の手を姫様の脇の下から肩に、そして、姫様は私の左手の上腕に添えてください。」
「そして、体が触れるか触れない状態でAステップ。」
「これが基本ですね。ステップは、私の足の動きに合わせて動かしてください。」
「キャッ。動けない。」
思わず、転びそうになったのでユキが抱き留めてくれた。
ユキの温かい体温が、全身に伝わってきた。
「姫様、体が冷えてますわ。湯船に浸かりましょう。」
「ダンスの練習は、私も一緒に参加しますわ。でも、先生は誰でしょうね?」
「まさか、玄武?」
それから二人で、夕日が沈もまで、湯船に浸かっていた。




