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思い出5

 次の日は、外出を自重した。

昨日のように、迷子になるのは嫌だと思った。

昨日のジョギングの疲れが出たのか、今日は10時になっても起きれなかった。

それでも起き上がったのは、11時に固定電話が、鳴ったからだ。

それは、母親からだった。

「学校から、電話があったわよ。」

「外泊するときは、外泊届けを出しなさいって。」

「どうせ、貴方のことだから、そこだと思っていたわ。学校が始まるまでには戻します。って、言っといたわよ。」

「ありがとう。お母さん。」

「あなたに、お母さんて呼ばれるの何年振りかしら?」

「そうだね。」そう言いながら、佐々木は偽のお母さんのことを思い出し苦笑いした。

「学校に戻るときは、そこの戸締りちゃんとしてね。」

「わかりました。それと、お父さんに冷蔵庫の食べ物もらったって、言っといて。」

「わかったわ。」

そう言うと、電話が切れた。

『相変わらず、あっさりしているな。』と、思った。

『まあ、そんなに心配するような息子でもないか。3番目だし。』

佐々木は、顔を洗って、コーヒーを入れた。そして、冷食のロザリオを電子レンジで加熱してから食べた。ところどころ冷たいところが有ったが、温かいところとかき混ぜて食べた。

食べ終わると、2杯目のコーヒーを飲んだ。

その後は、学校の宿題を少しだけ片づけた。

午後からは、道場に行って、柔軟をした後にいつものように素振りを始めった。その後に、高さの違う丸太2本に防具を付け、木枠の足を付けた練習台を、相手に面打ちと胴打ちの練習をした。

それから、1本の藁束とそれを立てる足を持ってきた。それから収納庫の鍵を開け、金属ケースから真剣を取り出した。

正座した左側に真剣を置き、深呼吸した。

精神を統一すると、その真剣を持って立ちあがった。

その藁束の前まで、すり足で進むと再び精神を統一した。

「いやあっ。」という気合の元、その藁束を袈裟懸けに切った。

そして、佐々木は、黒龍を袈裟掛けにした感触と比べていた。

やっぱり、自分は、黒龍を退治してないのではないかと思った。

この今の切り込みより、黒龍を切ったという感触がなかった。

あの後、影のように消えたから、黒龍に実態があったかどうかも疑わしいが。

しばらくすると、真剣に夕日の光が反射して、道場の壁をオレンジの光が獣のように走った。

『やっぱり、遅くまで眠っていた所為で、あんまり練習できなかったな。』

佐々木は、真剣を、収納庫にしまうとその扉の鍵を閉めた。

真剣は、使う使わないに限らず、普段からその扱いに慣れておくことが、佐々木家の方針のようなものだった。

ふたりいる兄たちも、平気で日本刀を振り回している。

でないと、肝心な時に役に立たない。

黒龍の部下とそして黒龍と対峙したときも、この日頃の鍛錬が役に立った。

道場を出ると、白樺林の方を見た。そして、そこからかすかにラベンダーの香りを感じたので、道着のまま、その白樺林に入っていった。

白樺林を抜けると、そこには、やはり、ラベンダーがあたり一面に咲いていた。

そして、その中央に昨日と同じように子狐が眠っていた。

手を伸ばして、その子狐を撫でようとすると、いつの間にか自分も子供に戻っていた。あの子狐を助けた少年に。

そうすると、『この目の前にいる子狐は、あの時、助けた子狐なのか?』 

 実家に戻って、その後どうなったか心配で夜も眠れなかった子狐は、キズも癒えて、すやすやと眠れるほどに回復したのか?と思った。

思わず、口元から「良かった。」と声が出た。

子狐を起こすといけないと思って、すぐに口元に手を当てたが遅かった。

その子狐が、ゆっくりと目を覚ました。

その子狐は、佐々木の顔をみて、

「くうん。」と鳴いて、頬を摺り寄せてきた。

やっぱり、あの子狐だったんだ。

「傷が、治ってよかったね。」そう言って、再び、佐々木は、その子狐を撫でた。

その子狐も佐々木に撫でられて、嬉しそうだった。

「そろそろ帰らないと。明日、また来るね。」そう言うと、子狐は、再び眠りに着いた。

やっぱりまだ、体調は、戻っていないんだ。と思った。

佐々木は、家に帰ると、明日、その子狐が食べられそうなものが無いか、冷蔵庫を漁った。

凍らせたシャケの切り身が有ったのでそれを明日子狐に持って行くことにした。

それから、佐々木は、昨日と同様お風呂に入って冷食を食べて、星の王子様の続きを読んだ。

星の王子様が、英語版ということもあり、すぐに佐々木は、眠りについた。









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