学園祭4
夕方になっても真紀は、目覚めなかった。そして、姫様が、真紀の傍でうとうとし出した。
「姫さん、真紀の状態は大丈夫?」
と突然、後ろから声を掛けられ目が覚めた。
「まだ、眠ってるけど大丈夫みたい。私も今、ちょっと眠ってたかも。」
「起こしてしまって申し訳ない。」しまった、声を掛けなければ、姫の寝顔が見れたのに!と白虎は思った。
「姫さんも、着替えてきなよ。部室、閉められるよ。」
「もうそんな時間?」
「6時前だよ。」
二人が会話していると、保健室のドアがノックされた。
「どうぞ。」と姫。
扉が静かに開くと、明日香が顔をのぞかせた。
「真紀、大丈夫?それと、部室閉めるから、二人の荷物持ってきた。まだ、着替えてないでしょ?」
「ありがとう。」と姫。
「もし、あれなら、部屋に戻って着替えてきなよ。私が、見てるよ。その格好のままだと風邪ひくよ。」
「でも、学校の保健室にもそんなに長く入れないわよね。」
「そうね。」
3人で、いろいろ会話していると、真紀が、突然目を覚ました。
「みんな、何してるの?ここは、どこ?」
「真紀、目を覚ましたのね。良かった。」
「俺、保健の先生呼んでくる。」そう言って、白虎は慌てて廊下に出て行った。
しばらくして、白虎が保健の先生を連れて戻ってきた。
小柄で、優しそうな先生だった。
「どう、気分は?吐き気とかしない?とりあえず、熱を測りましょう。」
そう言って、体温計を真紀に渡した。
「男子は、外に出てて。」
「白虎、ごめんね、後で連絡するから、男子寮に戻ってて。」
「おう。」そう言うと、白虎は、廊下にでて、そのまま帰っていった。
「熱は、無いわね。」
「多分、学園祭の準備でほとんど寝てなかったから、それが原因ね。頭は、打ってないって、聞いてるから大丈夫そうね。もし、何か有ったら、寮母さんに言って、すぐに病院に行ってね。」
「わかりました。」と真紀の代わりに、姫が答えた。
「女子寮まで、行けるかしら?」
「真紀、ベッドから立てる?」
「大丈夫です。」そう言うと、真紀は、意外としっかり立ちあがった。
「心配して頂いて、申し訳ないけど、眠ったおかげで、調子が良くなったみたい。」
「そう、それは良かったわ。じゃ、あなたを助けた人に感謝しないとね。」
「彼の方が、重症みたいよ。」
姫と明日香の方を心配そうに交互に見つめる真紀。
「あなたが、タワーの上から頭から落ちて床にそのままぶつかりそうになった時に、その間に体を滑り込ませて、あなたを受け止めた人がいるのよ。その人は、今、亜紀先生と病院に行ってるけど、まだ戻ってきてないわ。」
「亜紀先生が、戻ってきたら状況が分かるんだけど。」
「そうなんですね。」それを聞いて、真紀は、ちょっと震え出した。
「大丈夫よ、真紀。その人、真紀も知ってる人だし、白虎も、奴は体を鍛えているから、あれぐらいなら大丈夫って言ってたから、心配しないで。」
「だから、一旦女子寮に戻りましょう。」
「先生、ありがとうございました。」と、保健の先生に3人で頭を下げると、女子寮に向かって、歩き出した。
部屋に戻ると、真紀の顔が青白くなっていた。
「真紀、大丈夫?顔が真っ青よ。」と、姫が声を掛けた。
「本当に、大丈夫なんでしょうか?私を、助けてくれた方は?」
「ごめんね、真紀。無理な演技をさせて、私の所為ね。」と明日香が言った。
「責任なら、私にもあるわ。だから、真紀、自分だけの所為だと思わないで。」
「違うんです、明日香も姫も悪くないです。あの時、佐々木さんが見に来てくれてるか?そればっかり気にして、ほんとは、もっと演技に集中しないといけなかったのに、すべて私の所為なんです。」
その言葉で3人は、黙ってしまった。
しばらくして、部屋のドアをノックして、亜紀先生が入ってきた。
「真紀、大丈夫?」
「ちょっと、顔があおいわね?頭は、打って無いはずだけど?」
「体は、大丈夫なんですけど、メンタルがちょっと。」と明日香が言った。
「先生、彼は大丈夫でした?」
「大丈夫よ。肋骨にヒビが入っただけで、本人は、けろっとしてた。笑うと痛いって、ぼやいてた。」
「でも、学外で一人暮らしだから、今日から、男子寮で寝泊まりするように手続きしてきたわ。」
「真紀も、お礼が言いたいでしょうから。」
「ありがとう、お姉さん。」
「お姉さん?」明日香が反応した。
「ごめんね、明日香さん、今聞いたことは内緒ね。」と亜紀先生。
「真紀、今から、お礼に行く?」
「行きたい。」
「先生、私もチア部を代表してお礼を言いに行きたいです。」
「じゃみんなで行くか?その前に、そのチアの衣装は、制服に着替えてね。その衣装を見て、男子寮の人たちが変な意味で、元気になったら困るわ。」
10分後に制服の3人と亜紀先生が、男子寮に入っていった。
「女子寮には、男子は立ち入り禁止だが、男子寮には、女子は、自由に立ち入りできるって知ってた?」
と、いきなり亜紀先生が、言いだした。
「知りません。でも、誰も行ってないですよ。」
「そりゃ、そうよ、用事もなく、男子寮に行くもの好きはいないって。」と明日香。
それとは、反対に、「そうなの、そうなんだ。」と嬉しそうな、姫。
「姫、駄目ですよ。白虎の所に行こうなんて考えては、校則が無いというだけですからね。」
「はーい。」と姫。
男子寮の一階の一番手間の部屋に、ノックして亜紀先生が入っていった。
「大丈夫?あなたに、お礼を言いたいって人を連れて来たわよ。」
その人は、一目見るなり、
「真紀さん、大丈夫ですか?」と自分の事より、先に真紀のことを心配して声を掛けた。
「顔が、青い。頭、打ったりしてないですよね。ちゃんと受け止めたはずなんだけど。」
真紀は、会ったこともない男子が、親し気にしゃべってくるので、もしかして、頭を打って自分が記憶を無くしたのかもと思った。
不思議そうな顔をする真紀に、彼は、
「佐々木ですよ。さ・さ・き。今日の昼までは、女の子に化けてました。ごめんなさい。」
「それには、色々理由が有るのでまた今度話すね。」
そこまで聞いた、真紀は、しばらくして目の前でベッドに腰かけて座っている男子が佐々木さんにどことなく似ていることに気が付いた。
そして、急に涙ぐんで、
「ありがとうございます。佐々木さん、いえ、佐々木くん。」
そう言って、真紀は、彼に抱き付いた。
「貴方がいないと、私は、今頃ここに居なかったかもしれません。本当にありがとうございます。」
「僕の方こそ、真紀先輩をだましてすみませんでした。それでも、真紀先輩の演技が見たくて、白虎先輩と一緒に一番前で見ていたので何とか動けました。もしかして、先輩、僕をじゃない彼女を捜していたんじゃないですか?見ててそんな気がして、僕が女装のまま見に行ってれば、こんなことにならなかったのに。僕のせいで、一瞬でも貴方を苦しめた。」
その言葉に、感動した真紀は、さらに強く彼を抱きしめてしまった。
「ぎゃ、」っという悲鳴とともに、慌てて離れる真紀。
「ごめんなさい。ちょっと肋骨にヒビが入ってまして。」涙目で、彼は言った。
「ほんとに、ごめんなさい。私って。」
その時、今の悲鳴を聞いて、白虎が部屋に飛び込んできた。
「どうした?佐々木、今の悲鳴は?」
扉を開けると、亜紀先生と姫と明日香と真紀が居た。
白虎は、着替えてる途中で慌てて出てきたのか、下着姿だった。そして、
「おう。」と言って、慌てて扉を閉めて出て行った。
みんな、それを見て笑い出した。
そして、その笑いに一番苦しんだのが、佐々木だった。
「先輩、笑わせないでください。肋骨に響く。」
それを見て、みんな、さらに笑い出した。




