この弱味をさらすのは無礼ではなく互いのため。
デリケートな話
今日はお茶会にお越し下さり、まことに有難うございます。ええ、事前に手紙で伝えた通り、とても大事な話があるのです。
そう身構えないでください。この話は婚約には影響のないものです。いえ、あるのでしょうか?それを判断するのは私ではないことはご理解ください。
人払いをしているのは、人前で話すべき内容ではないためです。他意はありません。
前提からお話しましょう。失礼ですが“月のもの”をご存知ですか?ええ、殿方には馴染みのない言葉でしょう。存在は知っていても詳しくないのが普通です。
月のものと言うぐらいですから、これは月に一回くるものです。病気や年齢などの理由がなければ、全ての女性にとって当然あるものです。驚くことに、この世にいる大半の女性が月に一回は出血しているのです。
ええ、はい。出血しているのです。一か月かけて貯めた血を捨てているだけですから、この出血で命を落とすことは滅多にありません。ご安心ください。気分の良いものではありませんが、世継ぎを残すためには必要なことであるとご理解ください。
月のものには個人差があります。勉学が得意な方、剣術が得意な方、背の高い方、金髪の方など私達には個性がありますよね。それと同じです。個人差があり、正解などないのです。
ですから、月のものの影響を受ける方と、そうではない方がいらっしゃいます。強い影響を受ける方の場合、痛みで起き上がることも出来なくなります。私はそこまで重くありませんが、痛みで激しい運動ができなくなります。月のものは痛みを伴うことが多いのですよ。もちろん、これにも個人差がありますが。
また、月のものは短くとも三日は続くものです。七日ほど出血があるのは普通のことかと。二日から三日ほどは一日中出血している方が殆どではないでしょうか。ええ、ずっと出血しているのですよ。月のものがある日に淡い色のドレスなど怖くて着ることができません。
厄介なことに、月のものは出血をしていない時にも体に影響を及ぼすのです。
出血が終わってすぐの頃は、穏やかな気持ちでいられます。一週間ほどでしょうか。この時の私が本来の私であると考えてください。
二週間を過ぎたあたりから少しずつ不調になります。上の空になってしまったり、疲れやすくなってしまったり、情緒が不安定になったり。三週間目にはこれらの症状が更に悪化していることでしょう。いつもより空腹を強く感じることもあります。
いうまでもなく、体調が最も悪いのは出血している時なのですが。
ここからが伝えたいことです。
先日まで穏やかであった私が、不機嫌に見えることがあるでしょう。それは貴方のせいではありません。常にそのような態度であった場合は話し合う必要がありますが、そうではない場合は『そういう時期なのだ』とご理解ください。
この時期の私が酷いことを言ってしまった時、貴方が許す必要はありません。たとえ時期の問題だとしても、人として言ってはいけないことは存在しております。
ですが、時期があることは忘れないでください。私もそうしたいワケではないと知ってください。できることならば、いつも穏やかでありたいのだと私も思っているのです。些細な短所であれば許しあえる仲でいたいとも思っているのです。
私が濃い色のドレスを着ている時は、やむを得ない理由があると知ってください。その時に遠出を断ることがありますが、けして貴方と出かけるのが嫌になったわけではありません。ただ体が痛くて動けないだけなのだと知ってください。一週間後にまたお誘いいただければ幸いです。
また、月のものは必ず同じ周期でくるわけではないことをご理解ください。体調不良や、気温、ストレスでズレてしまうことがあります。そのため、2~3日前後することは当然にあることだと心に留めておいてください。
できれば私は、この婚約を大事にしたいと思っています。
私という女が弱味をさらけ出すことを「無礼者」と呼ばず、どうか信頼を築くための行為であることをご理解ください。