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5話 聖女、仕事する

「さて、ここで問題です」


 次の日。もう一度我が家に来ていただいて、作戦会議をしています。わたくしはビシッと問題提起をしました。するとキコールさんがうなずきながら「ああ、エザークを安全に管理する体制が必要だ」とおっしゃいました。ああああああ! それわたくしがかっこよく言おうとしたんですのよ! セリフ取っちゃうのひどい!


 昨日からわたくし、ずっとおうちにいるんですの。食事はセネガーがどうにかしてくれますし。現に今もいますし。なぜかって言うと、そりゃあ、エザークがたくさん咲いたからですわね! すっごい高価な物なんですのよ! 盗まれたらたいへん! なので、不用意に家を空けられないのです。


「まあ、俺がずっと居てもいいんだが」

「え、やだ」


 即答したらセネガーがちょっとよろっとしました。キコールさんは「警備体制は整える必要があるだろう。それと、ここの畑でなければならないのか。それとも環境を整えれば他の場所でも栽培可能なのかを検証したい」とおっしゃいました。

 それはどうなんでしょうねえ? わたくしはプーに、「そこらへんどうですの?」と尋ねました。プーは『ぷー……』と難しそうな表情をしました。おめめしかないけど。

 椅子から降りたいと言うので降ろしました。てってって、と外へ向かって行きます。わたくしが着いていくとキコールさんもセネガーもいっしょに来ました。プーは畑とは反対側、街道に続く道へ走って行って、途中でしゃがみこみます。なにをしているのかしら。


「なんですの、プー?」

『ぷ、ぷー!』


 畑以外の土とお話ししてみるんですって! あらかわいい。わたくしも隣にしゃがみました。キコールさんとセネガーも。……なんでしょうこれ。


『……ぷ!』

「まあ、ほんと⁉」

「なんだって?」

「できるかもですって!」


 ということで。プーはキコールさんの研究所の敷地内で、わたくしといっしょに土壌作りに励みます!

 が。


「……いっっっっっっっっったあああああああああああ!!!」


 突如! 全身が! 立ち上がったと同時に痛みが走ってもう一度うずくまりました。てゆーかそのうずくまる動きすら痛い。もうどうしようもなく痛い!

 セネガーが抱き上げて家まで運んでくれました。ベッドに寝かしつけられ、「医者を呼んでくる!」と言われたのを止めました。


「はあ? なんでだよ?」

「お医者さまにかかるほどではないんですのよ……」

「いやまじで痛がってただろうが、診てもらった方がいいに決まってる」

「……この痛みに心当たりがありまして」


 セネガーは「なんだ?」とこちらに向き直り、キコールさんは心配そうな表情をされました。プーは『ぷ』とうなずきました。


「……これたぶん……盛大な筋肉痛ですの」


 エザークを成長させるために全身運動しましたからね。普段使っていない筋肉とかいろいろ動かしたんだと思います。あと聖女としての理力をいっぺんに持っていかれた反動でしょうか。

 一瞬静まり返ったあと、セネガーの爆笑が響きました。本当になんて失礼な男でしょう。


 そんなこんなで。とりあえずわたくしのお家にはそれなりに頑丈な囲いを設けます。そしてわたくしの体調が万全になるまで、プーは午前中キコールさんにつれられ研究所の土とお話しをしに行きます。

 エザークの畑を見張るための人を雇おうって言ったんですけど。それはセネガーがやるってきかないので任せることになりそうです。


「うすうす感じてはいましたけれど……セネガー、あなた」

「……な、なんだよ」


 わたくしがジト目で近づくと、目に見えてうろたえました。――はっはーん。やっぱりねえ。

 憐れみの気持ちから、その肩をぽんぽんと叩きました。


「……クビになったんですのね、お仕事……かわいそうに」

「ちげーーーーーーーーーよ!!!!」


 はい、違うのは知ってます。セネガーは第五王子から派遣されたわたくしの見張りですからね。そっちはまあ、クビにならないでしょうけれど。表向き彼は雇われ人夫をしていまして。そちらを指して言いましたの。もちろん彼はそう受け取っています。わたくしにもろもろバレているの、気づいていませんし。

 ていうか、まったく興味がないので知らなかったのですが、セネガーが住んでいるところって『豆と麦』の近くなんですって。なのでわたくしのお家からも近いのです。通い警備はしやすいと。なるほど。でも人夫のお仕事と両立はできないでしょうにねえ。設定どうやって保つのかしら。

 とかなんとか考えていたら。次の日に「仕事、辞めてきた」とか言い始めましたわ。信じられない。ろくでもないヤツですわね。


「わたくしはお給金出しませんわよ?」

「キコールと話は着いている、だいじょうぶだ」


 まあ、いつの間に。それに呼び捨てですのね。仲良くなったんでしょうか。

 キコールさんといっしょに研究所から帰ってきたプーに「首尾はどうですの?」と尋ねてみたら、右腕を突き上げて『ぷー!』と言いました。上々のようでなによりですわ!

 それでですわね、なんだかセネガーはわたくしの用心棒をするそうなんですの。聖女としての理力が発現している事実。またそれが資産価値の高い物を生み出せる可能性がある事実。その二点を考えたら、身の回りへ一層慎重になった方がいいとの判断だそうです。キコールさんとセネガーの。なんでわたくしのことなのにわたくしが話に入っていませんの。なんで二人は仲良しこよしなんですの。


 そんな流れでですね。結局エザーク畑をいい感じに見張って管理してくれる方を、他にも雇う話になりまして。じゃあわたくしが最初に言った通りじゃないですの? といっても研究所にお勤めの方たちが交代で来てくださる感じになったんですけれどね。

 イキュア・クリアスは、あんまり研究員さんは多くないそうなんですの。いっぱい他に引き抜かれちゃったんですって。キコールさんがんばれ。なので、今は四人。お当番制で見張りに来てくださいます。エザークを触れるからってみんなよろこんでいるそうですわ。そのための仮小屋みたいのを、土で作れないかあとでやってみようと思いますわ。ずっと畑に立ってるわけにはいかないですからね!

 そしてわたくしは結局お医者様から湿布を処方してもらって、とりあえず今は動けます。ですけど、しばらくの間はきっと理力を使うたびに湿布を貼るんでしょうね。お医者様が「なにしたんだい、聖女さん」とあきれた声色で尋ねてきたので、「畑仕事を少々」と言いました。「そんな細腕でそんな重労働をいきなり始めたら、こうなるに決まっているでしょう。ほどほどになさい」と叱られてしまいましたわ。そうも行かないんですのよー。


 と、いうことで。

 我が家のエザークを保守管理しつつ、イキュア・クリアス薬学研究所敷地内でのエザーク栽培の始まりですの!


 が。問題が発生しましたわ。もーーーー!

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