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直也之草子 〜世界最強を目指す純情少年の怪奇譚〜  作者: 政岡三郎
一之譚 髪ノ怨念
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〜第四話 集団下校〜

 ドーモ、政岡三郎です。直也之草子第四話、始まります。喧嘩の二日後、直也達の学校で緊急の全校集会が行われます。

「え~、今日は校長先生から皆さんに大事なお知らせがあります。近所の中学校に通う男子中学生二人が、二日前から行方不明になっています」


 木曜日は校長先生による緊急全校集会でのそんな知らせで幕を開けた。


 生徒全体が僅かにどよめく中、直也は気だるげな様子で、呑気に欠伸(あくび)をしていた。


「……おい、直也。聞いてたか?中学生二人、行方不明だって」


 金髪色黒というリトルヤンキーのような見た目の割に妙に肝っ玉の小さい健悟が、不安そうに直也に耳打ちする。


「ただの反抗期の家出じゃねぇの?親や世間へのどうしようもない反発……若気の至りってやつ?」


「盗難バイクで走り出しちゃう感じのやつ?」


「それそれ。そんで学校の窓ガラスを叩き割ってまわりゃあ、100点満点だな」


 会話に割って入った月男の一言にそう返し、直也はクックと声を押し殺して笑う。


「こら、そこ!私語は慎む!」


 すかさずクラス担任の久谷に咎められ、直也は「すんませーん」と返して再び押し黙る。


 ある程度全校生徒のざわめきが収まったところで、校長が話を再開する。


「え~~、警察の方の話では、指名手配中の凶悪犯に似た人物が町の近辺で目撃されたという情報もあり、男子中学生二人の失踪に関与している可能性を考えて、鋭意捜査中とのことです。えー、つきましては事態が終息するまでの期間中、全学年での集団下校を行います。皆さん、下校時は先生方の指示に従い、真っ直ぐおうちへ帰りましょう」






「当分の間は集団下校だってな」


 全校集会が終わり体育館から教室へ戻る途中、健悟が口を開く。


「……らしいな」


 直也はどこか不機嫌な様子で返す。


「でもこういうイベントって、いつもの日常とはちょっと違う感じがして、少しワクワクするよね」


 少し不謹慎な月男のそんな言葉に、直也は露骨に嫌な顔をする。


「冗談じゃねえや!俺とかのこの甘酸っぱい蜜月な下校のひとときが、お陰で台無しだぜ!!」


「……お前ほんとブレないよな」


 呆れ気味の健悟の呟きも、憤慨中の直也の耳には届かない。


「それもこれも全部、その凶悪犯ってのと、家出なんかしやがった中学生共のせいだ!全員纏めてぶん殴ってやりてぇぜ!!」


「いや凶悪犯はともかく、中学生二人はとばっちりだろ……家出って決まったわけじゃねーし」


 健悟のツッコミの後、月男が校長の話を振り返る。


「確か校長先生は、二人の失踪にはその凶悪犯が関わってる可能性があるみたいなこと言ってたよね?」


「どーだか。その凶悪犯ってのは一人で、しかも逃亡中の身の上なんだろ?そんなやつが、わざわざ大の男二人引きずって逃げ回るか?」


「大の男ってお前、連れ去られたかもしれないのは中学生だろ?」


「中学生にもなりゃあ、もうイッパシの男だろ?マジで連れ去られたんだとしたら、情けねぇにも程があるぜ。二人がかりで、たった一人相手に抵抗も出来ねぇなんざよ」


「仕方ないじゃんか、凶悪犯なんだから刃物とか持ってたのかもしんねぇし」


 無茶な言い分の直也を健悟がそう言ってなだめると、月男がふと何の気なしに物騒なことを呟く。


「でもそしたら、拐われたっていう二人ももう刃物でポックリ逝っちゃってるかもしれないよね。さっき直也が言ってたみたいに、逃亡中の凶悪犯が生きた人間二人を連れて逃走とか、考えづらいしさ?」


 月男のそんな一言に、直也と健悟はショッキングな表情を浮かべて月男を見る。


「マジかよ………死んでたら殴れねぇじゃねぇか!!」


「お前この期に及んで殴る気だったの!?」


 直也の言葉に健悟が面喰らっていると、背後から大勢の足音に混じって直也達に駆け寄っていく足音が一つ。


「なおくん」


 聞こえてきたその声に直也は振り返り、頬を弛ませる。


「かのこぉ~~♥」


 直也のリアクションに、健悟と月男は(また始まった……)と顔を見合わせる。


「どしたかのこぉ~~♥今日も可愛いなぁ~~♪」


 組んだ両手を頬に当て、うっとりと鹿乃子を見つめる直也。


「も、もう……すぐそうゆうこと言うんだから……」


 そう言って、鹿乃子は少しだけ困った様子で頬を膨らませる。


「それより、校長先生のお話。わるい人がこの近くにいて、中学生のお兄さんをゆうかいしたかもしれないって。怖いよね?中学生のお兄さんたち、大丈夫かなぁ?」


 鹿乃子が不安そうにそう口にすると、直也は拳で自身の胸の辺りを叩いて得意気に言う。


「だぁ~いじょうぶだって!かのこはこの俺が絶対に守るからよ♪かのこに近づくクソ野郎は、俺が纏めてぶっ飛ばしてやるぜ!」


「……えっと………いいです」


 得意気な直也に鹿乃子は困ったような表情でそう告げる。


「なぬぅうっっ!!?」


 鹿乃子のまさかの言葉に、直也は盛大にズッコケる。


「な……なんでだ、かのこ!?……ま、まさか………俺のこと、嫌いになっちまったのか……!?」


 今にも泣き出しそうな表情を浮かべる直也に、鹿乃子は苦笑しながら首を横に振る。


「そうじゃないけど……。だってなおくん、そう言っていっつも無茶なことばっかりするんだもん。心配だよ……」


 そう。鹿乃子の言うように、直也は度々無鉄砲なことをやっては、周囲に心配をかけていた。


 ある時は近所の山で、誤って崖から滑り落ちて崖の中腹から降りられなくなった狸の子供を助けるために、命綱も無しで高い崖を登ったり……。


 またある時は居なくなった下級生の子供たちを捜しに雪の降り積もる山中を何時間もさ迷ったこともあった。


 教室が二階だった一、二年の頃などは、昼休みに校庭でサッカーに誘われては、この方が近道だと校舎二階の窓から外に飛び降りることもしょっちゅうだった。


「それに、なおくんが無茶なことしなくても集団下校で先生たちが守ってくれるし、わるい人と中学生のお兄さんたちも、おまわりさんが見つけてくれるよ。だから、いつもみたいに無茶なことしないでね?なおくん」


 鹿乃子がそう言うと、直也はオイオイと嬉し涙を流す。


「そうかそうか……かのこ、俺のことを想って……やっぱりお前は、天使みたいに優しい子だぜ。聖母マリアやナイチンゲールも顔負けだな!」


 大仰に讚美の言葉を浴びせる直也に毎度のことながら呆れ顔を浮かべる健悟。月男も相変わらず顔には出さないが、考えていることは健悟と同じだろう。


「だ、だから大げさだってば!なおくんってば、もう……」


 再び少し恥ずかしそうに頬を膨らませる鹿乃子を見て、そんな鹿乃子を可愛いと益々賛美する直也であった。





________________________






「機嫌直せよ、直也~」


「……ケッ!!」


 学校終わりの集団下校の途中、直也はこのように終始不機嫌であった。


 理由は単純で、鹿乃子と一緒に帰ることができなかったからだ。


 何を隠そう、直也の家と鹿乃子の家は学校を挟んで全くの反対方向にあるのだ。


 そのため、いつも直也は鹿乃子を送り届けた後、再び同じ道を引き返し、結果的に倍以上の帰宅時間を要しているのだ。


 その事を鹿乃子は度々申し訳なく思い、いつも一緒に帰らなくていいと言ったり、たまには自分が直也を家まで送ると提案したりするのだが……。


 そんな時直也は決まって「かのこと1秒でも永く一緒にいられるんだから(むし)ろ有り難い」「かのこにそんな長い距離を歩かせる訳にはいかない」の一点張りだった。


 全校集会で集団下校を言い渡された今日すらも、直也は例によって一緒に帰れると思っていたらしい。集団下校=二人っきりで下校ができない程度の認識だったようだ。


 当然鹿乃子と一緒に帰れないと知った直也は大層ごねたが、「先生を困らせちゃだめ!」と鹿乃子に怒られ、渋々一緒に帰るのを断念したのだ。


「一日くらい別にいいじゃねぇか、直也。たまには男同士でしか話せない話題に花を咲かせながら帰るのも良いもんだぜ?」


「そうそう。おっぱいの話とかしようぜ、おっぱいの」


「いやお前、集団下校っての忘れんなよ?今周りに先生とか女子もいるからな?」


 猥談を持ちかけた月男にそう釘を刺す健悟。


「……うるせぇ。何が悲しくて、テメェらと下卑た話に花を咲かせにゃならねぇんだ……」


 直也はにべもなくそう返す。


「……そもそもよ、健悟。おめぇは今、一日くらいっつったがな…………マジで"一日"で済むのか?」


 健悟をギロリと睨み付け、そう聞き返す直也。


「そ、それは……」


 健悟は言葉に詰まる。


 それもそうだ。行方不明の中学生と指名手配中の凶悪犯が見つからない限り、この集団下校は当分続く。いつ終わるかなど、誰にも分からないのだ。


「あぁぁ、このままズルズルと集団下校の期間が長引いて、俺と鹿乃子の二人っきりの時間が無くなったらと思うと…………俺はもう、自分を保っていられねぇ……!!」


 顔を両手で覆って天を仰ぎ、ワナワナと両肩を震わせる直也。今にも不満が爆発しそうな勢いだ。


「…………決めたぜ」


 次の瞬間、直也はフッと真顔になり、肩の震えが止まる。


「おめぇら、凶悪犯見つけるぞ」


「…………は?」


「そら、言うと思った」


 唐突な提案に困惑する健悟と、半ば直也がそう言い出すことを予期していた月男。


「そうと決まりゃあ、善は急げだ。お前ら、帰ったらコンビニ前に集合な」


 勝手に決める直也を諌めたのは健悟でも月男でもなく、集団下校で直也達のグループを引率していた2組の担任だった。


「た、田村君!?校長先生が言ってたこと、ちゃんと聞いてた!?今は危ないから子供だけで外を出歩いちゃだめです!!」


 教員が傍で話を聞いていることをうっかり失念していた直也は、チッと小さく舌打ちする。


「……分かったよ、分かりましたよ。家で大人しくしてりゃあいいんだろ?りょーかい……」


 口ではそう言いつつも、結局家で閉じ籠っている気など更々無い直也であった。






________________________






 家に着くなり、ランドセルを玄関に放り投げ、速攻で家を出た直也。


 健悟と月男も、同様の手口で家を出ていた。もしもここでもたついていたら、三人とも直ぐに母親に捕まり、一人での外出禁止を言い渡されていたであろうから、ある意味これこそが外に出るための最適解と言えた。


「さぁて、んじゃまずは、情報収集からだな?」


 そう切り出す直也だが、健悟はいまいち乗り気になれない。


「なぁ直也ぁ……マジでやんの?」


「ったりめぇだろ。このままじゃあ、いつまで経っても俺とかのこの甘酸っぱい二人の時間は戻って来ねぇんだ」


 しかしそう言いつつも、直也は直後にこう告げる。


「……とはいえ、だ。些か危険が伴う真似だってことは、俺だって理解しちゃいるぜ?だからよ、どうしても嫌なら、今回は無理に付き合う必要は()ぇぜ?」


「…………」


 直也にそんな風に言われては、健悟も腹を括るしかなかった。


 小心者だが、なんだかんだで付き合いの良い男なのだ。


「あ~もう、分かった分かった。で、情報を集めるって、何か当てはあんの?」


「あ"?()ぇよんなモン」


()ぇのかよっ!?」


「直也がこういう提案する時は、大体行き当たりばったりだよね」


 当の発案者がノープランなのだから、もはや言葉もないといった様子の健悟。


「ま、とりあえずは行方不明になった中学生二人ってのが具体的にどこの誰なのかを突き止めようぜ?そっから少しずつ手掛かりを探っていけばいいだろ」


 直也がそう提案した、その時だった。


「その必要は()ぇぜ」


 直也達の背後から、声をかける人物が一人。


 行方不明の中学生二人の情報は、とある意外な人物からもたらされることとなった。





───第五話へ続く───

 直也之草子第四話、いかがでしたでしょうか?展開が遅くて申し訳ありません……。ここからは登場人物紹介其の三です。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


・田口健悟


・誕生日:8月2日(10歳)


・身長:143cm ・体重:36kg


・直也の幼馴染。金髪に日に焼けた肌の、一見するとリトルヤンキーといった風貌だがそれはあくまでも見た目だけで、直也と月男の幼馴染三人の中では比較的常識人のツッコミ役。(むしろ見た目以外はそこそこ優等生?)髪を染めたり日焼けを好んだりは、母親がギャルなのでその影響。父親は単身赴任中で、今は母親とアパートで二人暮らし。

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