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直也之草子 〜世界最強を目指す純情少年の怪奇譚〜  作者: 政岡三郎
二之譚 執着ノ轍

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〜第二話 カサイケイジ〜

 ドーモ、政岡三郎です。直也之草子二之譚第二話、始まります。踏切へやってきた直也の前に現れたのは___。

 駅から少し歩いたところにある踏切。


 三ヶ月前に人身事故で女子高生が亡くなり、その一ヶ月後辺りから下半身の無い"テケテケ"という悪霊の目撃談が囁かれる場所。


 ───そして実際に、里田渚がそのテケテケを目撃した場所。


「……」


 雨の中、目深に被った半袖パーカーのフード越しに、直也はその現場を見つめる。


 渚はこの踏切の線路の真上で倒れていたらしい。


 幸いにも通りかかった通行人に発見され、電車が来る前に事なきを得たようだが、その日から渚の脚は動かなくなったのだ。


 直也は右手に持ったギターケースの取手を強く握り締め、ゆっくりと踏切に一歩を踏み出す。


 雨粒で濡れる踏切を一歩一歩踏みしめながら、直也は周囲の気配に気を配る。


 とりあえず踏切の反対側までたどり着くが、何も起きない。


 直也はそのまま踵を返し、渡ってきた踏切を戻っていく。


 雨の中、直也は踏切を渡っては戻ってをゆっくり、二回程繰り返すが、テケテケは現れない。


(参ったな……やっぱ、そう簡単には現れねえか?)


 今のところ直也以外に人の気配は無いが、これ以上うろついてもし誰かに見られたら、不審がられるかもしれない。


(さて、どうしたもんか───)


 そう考えた、その時だった。



 ピチャッ。



 水音がした。


 雨音ではない、誰かが水面を意図的に叩くような水音。


 それが、直也の背後から───。


「……」


 踏切に水溜まりなどできてはいなかったし、そもそも辺りに直也以外の人影はなかった。


 直也は立ち止まってゆっくりとギターケースを持ち上げ、ケースを開閉するためのツマミのロックを外す。



 ピチャッ。



 再び水音がする。


 先程よりも近い。


 直也はケースの中から大通連を取り出す。




 ピチャンッ。




 三度目の水音。


 もう真後ろだ。


「───ッッ!!」


 直也は振り向き様に空のギターケースを投げつけて、素早く大通連を抜く。


 しかし、後ろには誰もいない。


 気のせい?いや、そんな筈は───。




「ななな直也ぁーー!!うし、後ろぉーーー!!」




「ッ!?」


 突然、テンパった健悟の声が聞こえ、直也は前方に倒れ込むように身を乗り出しながら体を反転させ、立っていた場所を刀で斬り上げる。


 一瞬視界に映り込む何者かの影。その肩口を斬りつけながら、直也は地面を転がり体勢を立て直す。


 直也は改めて、背後から襲ってきた"ソレ"と向き合う。


 女の上半身。


 下半身の無い"上半身のみの女"が踏切の上にうつ伏せで倒れている。


「こいつが……テケテケか?」


 成る程、確かに噂通り下半身の無い上半身だけの女が、高校の制服らしきブレザーを身に纏っている。


 もっとも制服といっても、それはボロボロでかつ血と泥にまみれていて、元の形や色合いが想像できない程に、見るも無惨な有り様だ。


 直也のもとに駆けつけてきた健悟と月男は、ソレを見て思わず息を飲む。


 テケテケの千切れた下半身と直也が斬りつけた傷口から、止めどなく血が溢れて踏切に広がっていく。


「うわぁ……」


「う、うっぷ……」


 そのあまりの凄惨な有り様に、月男は言葉を失い、健悟は思わず吐き気が込み上げる。


「おめえら、油断すんな!!」


 直也が二人にそう言うと同時に、直也に斬られてから動きのなかったテケテケが動く。



 ピチャンッ。



 テケテケの手が、自らの血でできた血だまりを叩く。



 ピチャンッ。



 両手を血だまりについて上体を起こし、腕や肩の関節をボキボキと音を鳴らしながらくねらせるテケテケ。


『 イ タ イ  イ タ  イ   コ  ワ イ  イ タ   イ』


 それは壊れたロボットのようでいて、その実決して無機質ではない、仄暗い感情の籠った声。


(…………あれ?この幽霊……?)


 目の前のテケテケをまじまじと見て、月男は人知れず、妙な引っ掛かりを覚える。


「来るぞ!!おめえらは下がって───」


 直也が言い終わる前に、テケテケが目にも留まらぬ速さで直也に組み付き、押し倒す。


(は……()ぇえ──!?)


 それはさながら、疾風の如く………直也が刀を構える暇もなかった。


 あまりに速い体当たりに、直也は持っていた大通連から手を離す。


 押し倒した直也の首に、テケテケが手をかける。


「クッ……!?」


『   カ  エ シ  テ   ワ タ   シ 』


 テケテケは直也の首を万力のような力で締め上げる。


「健悟!」


 月男が直ぐ様健悟に合図を出し、二人はコンビニのレジ袋からあるものを取り出す。


「う、うおおおおお!!」


「喰らえ!ノクター超プレミアムピーチ!!」


 二人が取り出したのは、1リットルの桃果汁100%のジュースだった。


 二人はペットボトルの蓋を開け、同時にテケテケにジュースをかける。


『   ウ   ア    ア  』


 テケテケは転がるように直也の体から離れ、まるで熱湯に体を打たれたかのように身悶える。


「うぉぉ……マジで効果あった!?」


 その様子を見た健悟が驚いている。


「ゲホッケホッ………いったい、どうなってやがる?」


 咳をしながら立ち上がった直也は、どういうことか解らず二人に訊ねる。


「うん、えっとこれは───」


 月男が説明しようとすると、体勢を立て直したテケテケが、先程と同じ猛スピードで月男に突進する。


「あっ───」


 テケテケの手が月男を捉えようとした、その瞬間───。


「そう何度も───」


 直也が横からテケテケの脇腹に飛び膝蹴りを入れる。


「───同じ手喰らうかよ、バーカ」


 テケテケを蹴り飛ばした直也は直ぐ様取り落とした大通連を拾う。


「健悟!月男!よく分かんねえけど、そのジュースまだあんのか!?」


「うん。こんなこともあろうかと、買えるだけ買い占めたよ」


 月男が答えると、直也はニヤリと笑う。


「上等!なら、あいつが近寄れねえようにそれ適当に撒き散らしてろ!」


「ま、任せとけ!!」


「アイアイサー!」


 そう答えると、健悟と月男は桃ジュースを辺りに撒き散らしていく。


『  ア   ア ア   カ エ   シ   』


 撒き散らされる桃果汁と辺りに立ち込める桃の香りに、テケテケは徐々に後退していく。


「一本貸せ!」


 そう言いながら直也は、返事も待たずに健悟から桃ジュースを一本ぶん取る。


「奢りだ───」


 そう言って直也はジュースを宙に放り投げ、キャップを開けるのも面倒臭いと云わんばかりに飲み口のプラスチックを刀で切り落とすと───。


「やるよッ!!」


 ジュースの溢れるペットボトルを一度つま先でトラップした後、それをテケテケに向かって蹴り飛ばした。


 ペットボトルは真っ直ぐ飛んでテケテケの顔面にぶつかり、テケテケは中身のジュースを頭から被る。


『  ア  ア    タ ス    ケ    カ エ  シ 』


 地面を転がり身悶えるテケテケに向かって、直也が走る。


「終わりだ!!」


 刀を逆手に持って力の限り跳躍し、直也は刀の切っ先を───。




『   たす   け   て   』




「───ッッ!?」


 刀を逆手に構え跳躍した直也が、テケテケの正面に着地する。


 刀をテケテケに突き立てたのかどうかは、健悟と月男の位置からは見えない。


「な………直也?」


「やったか!?」


 ───刀の切っ先は……。


 テケテケの顔の───数㎝横に突き立てられていた。


「……」


 直也はあえて、最後の一撃を外した。


 理由は、テケテケの"眼"だ。


 直也が最後の一撃を突き立てる瞬間、仰向けに横たわったテケテケの眼には、それまでの悪霊としてのものとは違う、人としての確かな"光"が宿っていた。


 今この瞬間だけは、目の前の存在はテケテケではない。


 無念を抱いて死んでいった、一人のか弱い女子高生であった。


『   く  や    しい   』


 仰向けに倒れる女子高生が何かを訴えるように直也の頬に手を伸ばす。


 直也はその手を払い除けるような真似はせず、ただ黙って彼女の次の言葉を待つ。


 彼女が何に嘆き、何に怒り、何故死んでしまったのか……それを知ることこそが、里田を………そして、彼女を救う鍵になる。


 直也はそう直感したのだ。


『    か   さ    い   』


 彼女の手が、直也の頬に触れる。


 彼女は、目の前の少年に自らの無念を伝えるため、必死に言葉を紡ぐ。




『    か   さい    け い     じ  』




「かさい………けいじ?」


 直也は彼女の言った言葉を繰り返す。


 かさいけいじ……おそらく人の名前だろうが……。


「……その、"かさいけいじ"って野郎が………あんたを殺したのか?」


 直也が彼女に問う。


 しかし、彼女の体は既に消えかかっていて、最早事の仔細を伝えるだけの時間は残されていなかった。



『  と


        り



             か

                え


                     し


                       て  』



 最後にそう言い残し───。


 ───彼女は消えた。


「…………お………………終わっ…………た?」


 健悟がおっかなびっくり訊ねる。


「…………いや」


 短く呟いて、直也はゆっくりと立ち上がり、雨の中何も言わずにその場に佇む。


 踏切の警報器が音を立てて点滅する。


 それを聞いた健悟は、慌てて直也が踏切に落としたギターケースと鞘とペットボトルを回収する。


「直也、電車が来るよ?」


 踏切から出るように促す月男に、直也が言う。


「………探すぞ」


「え?」


 健悟と月男は顔を見合わせる。


「探すって……」


「何を?」


 二人の問いに、直也は答える。



「"かさいけいじ"を探すぞ」






________________________







「───つまりね?桃には邪鬼や災いを退ける力があるんだよ」


 帰りの電車を待つ下り線ホームのベンチで、月男が先程の桃ジュースのことについて説明していた。


 月男曰く、桃は日本神話において聖なる果実であり、払魔(ふつま)の力が宿るとされているらしい。


 古くは国産みの神、伊邪那岐(イザナギ)黄泉比良坂(よもつひらさか)で追手の八雷(やくさいかづち)を退けるために桃の実を投げつけた話が起源であり、昔話の桃太郎のルーツも、桃が邪鬼を払うという言い伝えにあるとか。


「成る程な。それで桃ジュースか……。じゃあ、あの女子高生の霊が正気を取り戻したのも、一時的にそれの効果が出たのかもな」


 ベンチに腰かける直也が、そう呟く。


「それで、テケテケ……あの女子高生の霊は、"かさいけいじ"って言ったんだよな?」


 健悟が直也に、女子高生から聞いた言葉の内容を確認する。


「ああ」


 短く答える直也。


「かさいけいじ……人の名前だろうけど、漢字が分からないね」


「だな。今んとこ分かるのは、男の名前だってことぐらいか……」


 月男と健悟がそう話しあう。


「それだけじゃねえ」


 そう言うと直也は膝に肘をついて両手を組む。


「あの姉ちゃんは、明確に名前を知っていた。つまり、かさいけいじはあの姉ちゃんの知り合いだってわけだ」


 直也の言葉に、健悟は絶句する。


「マジかよ……。じゃああの女子高生、知り合いに、その………殺されたかもしれねえっての?」


 恐ろしい可能性を口にする健悟。


「分からねえ………が、少なくともその"かさいけいじ"って野郎が、あの姉ちゃんが満足に成仏できねえ"何か"を握ってるのは、確かだろうな」


 あの場面で女子高生の霊は、特定の個人の名を呟いた。


 ということは、"かさいけいじ"はあの女子高生の事故に何らかの関わりがあるのは明白なのだ。


「かさいけいじ……男友達か、或いは………恋人とか?」


「二時間サスペンスでよくある、痴情のもつれ的な?」


 健悟と月男が考察する。


 下衆の勘繰りじみているが、考えられる線としてはベターだ。


「とにもかくにも、まずあの姉ちゃんがどこの誰なのか分からなけりゃあ、話になんねぇ。お前ら、三ヶ月前の事故のニュース、覚えてねえか?」


 直也が二人に訊ねる。


「う~ん、そう言われてもなぁ~……。僕、朝の情報番組なんて、占いのコーナー以外興味ないし……新聞も、読むのは四コマ漫画の欄だけだしなぁ~……あ、でもでも、あの幽霊の人なんか引っ掛かるんだよなぁ~……」


 無表情で考え込みながら、月男は先程から感じている疑問を口にする。


「……?あの姉ちゃん知ってんのか、月男?」


「いや、知ってるとかじゃ……ごめ~ん、やっぱ気のせい」


 珍しく煮え切らない様子の月男。


「あ、俺覚えてるぜ?」


 健悟がそう口にすると、直也と月男の二人は揃って健悟を見る。


 金髪に日焼けした肌と、見た目こそヤンキーじみている健悟だが、そのくせニュース番組などはマメにチェックしているのだ。


「えっと確か……事故が起きたのは3月6日の午後9時5分。事故に遭った女子高生は車輪に轢かれて、胴体が真っ二つになったっつう、結構凄惨な事故だったみたいだぜ?」


 ニュースの内容を思い出し、小心者の健悟は思わず身震いする。


「……成る程な。それであの姉ちゃんは、あんな姿だったってわけか」


 直也は得心がいったように頷く。


「ただ、こっからがこの事故の不気味なところでさ?女子高生を轢いて運転士が慌てて急ブレーキをかけて、鉄道会社の本部に連絡を入れて、そんで係員が現場を確認しにいくと、現場から車輪で切断された女子高生の下半身だけが、消えてたんだって」


 健悟の話を聞いて、直也と月男はクラスメイトが話していた噂の内容を思い出す。


「そういやぁ、クラスの奴らの話の内容も確か、そんなんだったな。そんで、その女子高生の名前は何てぇ名前だ?」


 直也の問いに、健悟は顎に手をあてて考え込む。


「ええと、轢かれた女子高生の名前は確か……森下……いや、木下だっけ?」


「思い出せ。正直今は、お前の記憶が頼りだ」


 直也が思い出すよう促すが、健悟はう~んと唸るだけで、それ以上思い出す気配はない。


「う~ん、済まん。さすがに三ヶ月も前の事だし、ちょっとうろ覚えだ」


 申し訳なさそうに頬を掻く健悟。


「そうか……。なら月男、お前んちパソコンあったよな?悪いがそっちで、事故のこと調べてもらえねえか?」


 直也の家にもパソコンはあるが、それは基本母親の珠稀が仕事で使う用なので、珠稀の目を盗んで内密に調べものをしたとしても、検索履歴が残るから一発でばれてしまう。


 だからこそ直也は月男に頼んだのだが、月男はいつもの無表情で声だけ残念そうに、直也に告げる。


「ごめ~ん。じつはこの前、父さんと一緒に海外のエロサイト観てたら、パソコンがウィルス感染しちゃって……母さんに、パソコン禁止にされちゃった♪」


「…………なにやってんだ、テメェもおやっさんも……」


 直也は呆れてため息を吐く。


「クソッ、なんとかするってかのこと約束したってのに、これじゃあ八方塞がりじゃねえか」


 歯痒い現状に直也が悪態をついた、その時。


「………………いや待った…………案外さ…………そうでもねぇかも……?」


 ふと、今まで顎に手をあてて考え込んでいた健悟が、何かを思い出したように呟く。


「??健悟、何か思い出したっぽい?」


 月男の言葉に、健悟は「ああ」と呟く。


「名前はまだ思い出せねえんだけどさ……、事故に遭った女子高生が通ってた高校が、ニュースに出てたんだよ。あれ確か、西高だよ。"県立西原高等学校"」


「県立西原高等学校?聞いた覚えあんな……。確か、去年甲子園に出場してなかったか?」


「甲子園の一回戦敗けだったよね?」


 健悟の話を聞いて、直也と月男が西原高校に関する知っている情報を口にする。


「そうそう、その西高だよ。間違いない」


 そう言う健悟に、直也はにやりと笑う。


「欲しかったのはそういう情報だ。でかした、健悟。その西高はどの辺りにあんだ?」


「そう遠くはない……っつっても、都市の二駅手前くらいだから、行くんならそこそこ電車には乗るけど、乗り継ぎ無しの一本で行けるぜ?」


「了解。そんだけ分かりゃあ充分だ。明日乗り込むぞ」


 直也の言葉に、健悟は難色を示す。


「乗り込むって、お前……明日月曜日だぞ?ただでさえ学校があるのにそこまで行ってたら、また帰り遅くなるって……」


「なにも、髪鬼ん時ほど遅くなる訳じゃねえだろ?っつか、明日は俺学校休むわ。生徒の大半が帰った放課後に西高に乗り込むんじゃ、遅すぎるからな」


 直也の台詞に、健悟は目を丸くする。


「おまっ、休むって……お前の母ちゃん、そんなことで休ませてなんてくれないだろ!?」


「学校に行くフリはする。だが、実際には行かねえ。お袋の目を盗んで、仮病使って学校に休むって電話入れる。そうすりゃあ問題ねえ」


「いや、問題大有りだわ!!第一、お前が西高行ってどうすんだよ!?」


「決まってんだろ?聞き込みだよ。"かさいけいじ"が誰か、特定する」


 迷いのない直也の口調に、健悟は思わず頭が痛くなる。


「お前なぁ~……考えてもみろよ?学校と無関係の小学生が校内彷徨いてたら、不審がられるのは火を見るより明らかだろ?」


 健悟の言葉に、直也は少し考え込む。


「………………受験前の学校見学……ってことで、誤魔化せねえか?」


「時期じゃねえし参加するとしても中学生からだわ!!」


 至極真っ当な突っ込みを受け、直也はうむむ……と唸る。


 そこへ横から月男が口を出す。


「ねえ直也ー。わざわざそんなことしなくてもさぁー?西高生なら、たぶん会えるよ?」


 月男のそんな言葉に、直也と健悟は顔を見合わせる。


「ねぇ健悟~?西高って男子はみんな、今時珍しい学ランだよね?」


「あ、ああ。確かそうだったと思うけど……、お前、よく知ってんな?」


「去年の11月頃、甲子園に初出場した西高野球部のドキュメンタリー番組が放送しててね?僕も父さんの影響で、エロサイトと高校野球はよく観るから、なんとなくその番組観てたんだよ。そしたら、映った男子生徒が学ラン着てて、今時珍しいなーって」


(エロサイトは余計だわ……)


 そう突っ込みそうになった健悟だが、口にすると話の腰を折ってしまいそうだと思い、あえてその突っ込みは心の中に留める。


「それでさ?うちの県の高校に通ってて学ランを着てる人、僕たち"一人知ってる"じゃない?」


「あ?」


「学ラン着た高校生……」


 少し考え込んだ後。



「「あっ」」



 直也と健悟は再び顔を見合わせた。




──第三話へ続く──

 直也之草子二之譚第二話、いかがでしたでしょうか?それではここからは、登場人物紹介其の十四です。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


・田村珠稀


・誕生日:12月27日(40歳)


・身長:145cm ・体重:37kg


・サバサバした性格の女性で、直也の母親。身長が低く見た目が幼いため、よく子供と間違われる。直也と並んで歩いていると、姉弟と間違われることもしばしば。けれど昔は、東京丸ノ内にビルを構える一流企業の企画開発部門のエースで、バリバリのキャリアウーマンだった。結婚して一時は専業主婦になったが、夫の失踪を気に独立した元後輩のツテで再就職。仕事はほとんどリモートで、月に一度日帰りで東京の本社に顔を出している。日頃なにかと無茶をする直也を、いつも厳しく叱りながらも心配している。

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