表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
直也之草子 〜世界最強を目指す純情少年の怪奇譚〜  作者: 政岡三郎
一之譚 髪ノ怨念
1/73

〜第一話 日常〜

 はじめまして!政岡三郎と申します。以前はpixivで『タンポポボーイアキラ』という名前を名乗って活動していました。今日から約二ヶ月間、二週に一回のペースで二日の投稿休みを挟みつつ、”ほぼ”毎日直也之草子を投稿していこうと思います。よろしくお願いいたします!!(なお、書き溜めしている話数のストックが無くなり次第、本作は不定期更新になります。何卒、御了承の程よろしくお願いします)

 小学校二年生の頃、冬の昼下がり。


 人気(ひとけ)の無い公園で、少年は天使と出逢った。


 ふんわりとした亜麻色の髪に、大きな目の少女。歳は少年と同じくらいだが、どこか歳不相応な儚げで憂いを帯びた横顔。


 もう一つ、あえて大きな特徴を挙げるとするなら、その少女は右腕の二の腕から先が無かった。


 事故か何かによるものか。恐らくは後天的なものであろう少女のその腕は、他人から見ればとても痛ましく見える特徴であったが、少年……田村直也(たむらなおや)にとってはそんなことは気にならない程に、その少女の横顔が美しく見えた。


 直也は惚けた面でブランコに座るその少女の横顔を眺めながら、無意識に少女の笑った顔が見たいと思っていた。


 その時、ふと少女は直也の視線に気付いた。


 少女と直也の目が合う。


「…………え、えっと……」


 少女は何も言わずに自分を見つめる同い年くらいの少年の眼差しに、最初は戸惑いを見せた後、照れたような笑みを浮かべて一言。


「こ、こんにちは……」


 そう呟いた。


 その瞬間、まるで雷に打たれたような衝撃が、直也の全身を駆け巡った。


「す………すす…………すすきゃきゃ…………」


 まるで壊れた機械のように言葉を紡げないでいる直也。


「……?」


 少女があどけなく小首を傾げた瞬間───。


「好きだあああああーーーーー!!!!」


 直也は叫んでいた。


 近年稀に見る、典型的な一目惚れの瞬間であった。







______________



[2年と数ヶ月後───]





「風に揺れる♪君の髪を♪そっと撫でた二十歳(はたち)のonenight♪」


 桜もとうに散り、新緑の映える五月の初旬。


 豊崎(とよさき)小学校の五年一組の教室から、80年代のヒットナンバーを口ずさむ声が一つ。


 声の主は田村直也。昭和歌謡をこよなく愛する、少し茶色がかった黒髪の少年だ。


 給食後の昼下がりの陽気に当てられ、つい懐かしのヒットソングを口ずさんでしまったのだ。


 強いて今、彼の行動の何が問題かを挙げるとするなら、それは今が休み時間ではなく5時間目の国語のテストの真っ最中だということだ。


「こら!田村君!」


 案の定、担任の女教師が直也の机の前に立つ。


「テスト中に歌うんじゃありません!もう問題は書き終わったの!?」


 厳しい口調の担任に、直也は「まぁまぁ」と彼女を宥める。


「ちょっとくらいいいじゃないっすか、パイセ~ン。ただでさえ食後のゆったりした時間に、この五月の陽気だ。鳥のさえずりに釣られて、ついつい歌い出したくなっちまうのが、人情ってモンだ」


 そう言って座りながら軽く伸びをする直也に、担任はいまだに厳しい口調のまま柳眉をつり上げる。


「そういうことは休み時間にしなさい!真面目にテストを受けている他の子にも迷惑だし、授業は真面目に受けてこそ意味があるんです!あと、誰がパイセンですか!?私は君の先輩ではなく、担任の教師です!」


「んなこと分かってるって。パイセンってのは先輩って意味じゃなくて、おっぱ……」


 思わず[パイセン]の意味を言いそうになった直也は、慌てて言葉を飲み込む。


「……いえ、なんでもありません、先生」


「どうしてそこで急に真面目な口調になるのかしら!?絶対になんでもないことないわよね!?一瞬言いかけた[おっぱ]ってどういう意味ですか!?」


 そう言いつつ、担任の久谷(ひさたに)は豊満な胸を両腕で隠し、眉根をつり上げながら僅かに顔を赤らめる。もうなんとなく意味を察しているのだろう。


「やめましょうよ、先生。世の中には、知らなくてもいいことだってあるんです」


「なにを達観したかのような発言をしてるの!?あとこの際だからみんなに聞きますけど、私のことを[パイセン]って呼んでる子は正直に手を上げなさい!!」


「は~い」


 久谷の言葉に素直に手を上げる馬鹿が一人。直也の幼馴染みの田中月男(たなかつきお)だ。


 少し青みがかって見える黒髪の中性的な顔の少年で直也とは幼稚園の頃からの腐れ縁だ。


 普段何を考えているのか分からない程に無表情な少年だがこういうときは存外にノリが良い少年だ。


「おめぇも久谷センセのことパイセンって呼んでるだろおが健悟(ケンゴ)ォ!!」


 すかさず直也は、手を上げていないもう一人の幼馴染みを吊し上げる。


 名前を呼ばれ、金髪に焼けた肌の、見た目リトルヤンキーといった感じの少年がびくりと肩を震わせる。


「お、俺はパイセンがそういう意味だって知らなかったし……お前らがそう呼んでたから釣られてそう呼んでただけだっつーの!」


 そう弁明するこの少年こそ、直也のもう一人の腐れ縁、田口(たぐち)健悟だ。


 見た目こそヤンチャな少年だが、これで実は三人の中では一番良識のある少年だ。


 直也、月男と合わせて、近所や学校内では[三田郎]などと呼ばれていたりする。


「健悟、嘘はいけないよ?あれだけ立派な乳房を見れば、パイセンがオッパイ先生の略だなんて、猿でも分かるだろう?」


 嘘をついた子供を諭すような口調で月男が言う。


「あっ、言っちゃった」


 直也がそう洩らした途端、久谷は顔を赤くしながら言った。


「っっ~~!!あなた達……廊下に立ってなさい!!」








「おめぇのせいだぞ、月男。オッパイ先生ってはっきりと言いやがって……」


「え~、僕のせい?」


「俺はマジでとばっちりじゃんか……」


 廊下に立ち、それぞれ不平不満を洩らす直也達三人。


「ったく……、今日日罰として廊下に立たされるなんざ、学園ドラマでも見ねえぜ?田舎町だからって、世界観昭和に置き去りかよ……」


 そう言って頭を掻く直也。


「逆に考えよう。水の入ったバケツを持たされないだけ、まだ昭和よりマシだってね」


「ハハ、確かに。そこまでいったら、マジで無形文化遺産だな?テレビで取り上げられんじゃねぇの?」


 そう冗談めかして笑う直也に、健悟は心配そうに顔をしかめる。


「お前ら、声抑えろって。またパイセ……先生に怒られちまうだろ?」


「へいへい、分かったよ」


 直也は適当にそう答えるが、次の瞬間には何かを思い付いたかのようににんまりと笑う。


「……でもまぁ、これも怪我の功名だぜ。なんせ───」


 そう言うと直也は、忍び足ですぐ隣の五年二組の教室の前まで移動する。


「あっ、おい……」


 健悟の制止も聞かず、直也は奥の扉の窓から二組の教室をこっそりと覗き見る。


 二組は今、算数の授業中で生徒達は皆、真面目に授業を受けている。


 その中の一人───窓際の席に座る、"右腕の無い少女"こそ、直也のお目当ての天使であった。


「なんせ、授業が終わるまでずっと"かのこ"を拝んでいられんだからな♪」


 そう言いながら、直也は表情筋を限界まで緩ませる。


 柚澄原(ゆずみはら)鹿乃子(かのこ)。直也が二年生の頃にこの町に越してきた女の子で、直也にとっての天使だ。


「はぁぁぁもぉかわいいかわいい♥真面目に授業聞いてる姿、天使過ぎんだろ……」


 うっとりした顔で、自分の体を両腕で抱き締めながらくねくねと体を動かす直也。


 見ての通り、鹿乃子を見るときの直也は些か気持ち悪い。


 見馴れない者が見ればドン引きするような絵面だが、直也とは古い付き合いの健悟と月男はもう見馴れ………いや、健悟の方は今でも若干引いている。


 ふとその時、直也の視線に気付いた鹿乃子が教室の後ろの扉を見る。


 目が合った瞬間、満面の笑みで鹿乃子に手を振る直也。


 鹿乃子は一瞬驚いたような素振りを見せた後、微笑んで小さく左手を振る。


 それを見て直也は、鹿乃子に向かって執拗なまでに投げキッスをする。


「こ、こら!田村君!なにやってるの!?」


 直也の存在に気付いた二組の担任が、廊下に出て直弥を叱る。


「何ってそりゃあセンセ、一組(ウチ)の担任教師に廊下に立ってろって言われたから立ってるんすよ」


 悪びれもせずに言ってのける直也に、二組の担任は思わず言葉に詰まる。


「そ、そうなの……?で、でも、どうして二組の教室の前に……」


 教師の問いに、直也はポンと手を叩いて言う。


「そりゃあんた、せっかく廊下に立ってんだから、どうせならかわいいかのこの授業参観をと思いましてね?パイセンも廊下に立ってろとは言ってたけど、廊下のどこに立ってろとは指定しなかったし」


 そう屁理屈をこねる直也に、教師はおどおどと困ったような様子を見せる。


「え、ええっと………た、確かにそこも、廊下の内だけど………たぶん、そこはだめだと思うなぁ……」


「まぁまぁそんな堅いこと言わずに!ほら、センセ。授業の邪魔はしねぇから、俺に構わず戻って続きを……」


 直也の言葉を遮るように、一組の教室から久谷が柳眉を吊り上げながら出てくる。


「こらー!!田村君!!」


「やっべ」


 この後、直也がこってりと絞られたのは言うまでもない。







________________________








「最悪だよ……」


 放課後、コンビニの入口横の壁を背に、アイスバーを片手に座り込みそう呟く直也。


「こっちの台詞だわ!お前らのせいで、俺まで居残りテスト受けたんだからな!?」


 直也の右隣でアイスの袋を開けながら、健悟がそう不平を漏らす。しかし、心ここに在らずといった様子で意気消沈する直也の耳には届かない。


 直也の落ち込みっぷりは相当なもので、下に向けたアイスの棒からアイスが滑り落ちてもお構い無しだ。


 直也の左隣では月男が、直也の持つ棒から滑り落ちたアイスに蟻がたかる様を、無表情で見つめている。


「居残りテストとかマジチョベリバッファローだわ……。今日はかのこを、放課後デートに誘うはずだったのによぉ~……」


 とうの昔に死語になった時代錯誤な言葉を呟き、俯く直也。


「お前いつも柚澄原と一緒に帰ってんじゃん。たかが一日一緒に帰れなかったぐらいで、そんなに落ち込むか、フツー?」


 あまりの落ち込みっぷりを見兼ねた健悟が呆れながら言う。


「おめぇになにが分かる!?漢字の宿題をやってこなかった罰で昼休みを図書委員の手伝いに費やすことになっちまったから、実質今日は午前の授業後の5分休みでしかかのこと話せてねぇんだ!!それでも今日はかのことの放課後デートだけを楽しみに、ずっと我慢してたんだぜ!?」


「昼休みに話せなかったくだりは、完全に宿題忘れたお前の自業自得だよな?」


 健悟が突っ込むと、直也はピシャリと言い放つ。


「勘違いするな!忘れたわけじゃねえ!覚えてたが面倒だったからあえてやらなかったんだ!!」


「お前救いようがねえ!」


「ここまで開き直られたら、最早なにも言うことはないね……」


 心底呆れきった様子の健悟と月男。


「ああ、逢えねえ時間ってのは、どうしてこうも切ねぇんだ……。さながらかのこと俺は、織姫と彦星……残酷な運命に引き裂かれたロミオとジュリエットだぜ……」


「シェイクスピアと東洋の伝説ごちゃ混ぜじゃんか……」


 直也に似合わないおセンチな言葉に健悟が一言。


「織姫と彦星だって会うのを1年も我慢してるのに、直也は3、4時間しか我慢できないんだね。きっと二人も鼻で笑っているよ」


 更に月男が追い討ち。


「あ~~もう、うるせえうるせえ!!ろくすっぽ恋もしたことがねぇお前ら非モテに、俺の気持ちは分からねえよ!!ヘッ!!」


 そう言って、不貞腐れたように腕を組む直也。


 そんな風に三人がいつもと変わらぬやり取りをしていると、そんな三人に近付く人影が二つ。


「ぉおう!!いけすかねえ面のガキがいると思えば、よく見りゃあ田村クンじゃねえか、ああ?」


「あん?」


 直也が顔を上げると、そこにいたのは彼がよく知る中学生の不良(ワルガキ)コンビだった。


「なんだ、誰かと思えば鴇島(ときしま)鶫屋(つぐみや)じゃねえか」


 小学生の直也に呼び捨てにされ、二人は眉間にシワを寄せる。


「へっ、性懲りもなくまた呼び捨てか、田村ぁ?」


「先輩に対する礼儀がなってねえんじゃねぇか、ぁあ"?」


 凄みを利かせる不良コンビを、直也は意にも介さない。


「先輩風吹かせたきゃ、年下のガキいびって小遣い巻き上げるのやめろよな?威厳ってやつはまず、年下連中への優しさでもって示すモンだぜ、センパイ?」


 飄々とした直也の物言いに、鴇島と鶫屋は額に青筋を浮かべる。


 金髪刈り上げの鴇島が、コンビニの壁に背中を預けて座り込む直也の顔の横を、靴の裏で蹴りつける。


 これ以上無い高圧的な壁ドンに、直也ではなく右隣の健悟がビビって腰を浮かす。


「イキってんじゃねえぞ、小坊(ショーボー)が!今日こそその減らず口を叩けなくしてやるよ!!」


 鴇島の凄みに対して、直也は冷静に両側にいる健悟と月男に両掌を翳す。下がっていろというジェスチャーだ。


「やめとけよ、鴇島。この前もそう言って、俺にボコられたのを忘れたか?鳥頭コンビは三歩歩いちまえば、都合の悪いことをすぐに忘れちまうからいけねぇや」


 (とき)(つぐみ)で鳥頭コンビとは、直也が付けた蔑称だ。


 二人が下級生からカツアゲしていたのを直也が諌めて以来、なにかと手口を変えて直也に挑んでは返り討ちに遭うというパターンを性懲りもなく繰り返している内に、自然とこの呼び方が定着していた。


「誰が鳥頭だ!!忘れるわけねぇーだろうが!!」


「ヨユーぶっこいていられんのもこれまでだぜ!!白鳥先輩!!」


 鶫屋がそう言うと、高校生くらいの学ランを着た少年が直也達の方に歩いてくる。


「お~う、待ちくたびれたぞ鴇島、鶫屋ぁ~」


「白鳥先輩、こいつです!こいつがいつも俺らに喧嘩吹っ掛けてくる田村です!やっちゃってください!!」


 そう言う鶫屋に、直也は呆れながら言う。


「毎度喧嘩吹っ掛けてきてんのはテメェらだろうが……。っつーか、これまで武器に不意討ちときて、お次はいよいよ他力本願か?だからテメェらには、年上としての威厳ってやつが()ぇんだよ」


 これまで何度か喧嘩をしてきた直也と鳥頭コンビだが、直也に負ける度に二人は金属バットで武装したり、直也が道を歩いているところを背後から襲い掛かったりと、姑息な手を使ってきた。


 その上で今度は自分達より強い者にすがっての他力本願だ。もはや直也としては、呆れ果てて言葉もない。


「一丁前に不良(ワル)気取ってんなら覚えときな。テメェらみてぇなやつらのことを、[シャバゾウ]ってんだよ」


「うるせえクソガキ!!」


「白鳥先輩に睨まれちまったら、おめぇいよいよ終わりだぞ?」


 年上の高校生の威を借りてイキる鴇島と鶫屋。


「なんだ、生意気なやつがいるからシメてほしいとか言うから来てみれば……小坊じゃねえか」


 拍子抜けしたように呟く、白鳥と呼ばれた高校生。


 その高校生を見ながら、健悟が直也に耳打ちする。


「お、おい直也!相手高校生だぞ?さすがにまずいんじゃ……」


 心配そうな健悟に、直也は不敵に返す。


「問題ねぇよ。この俺が喧嘩で負けるとこ、想像できるか?」


 そう言って直也は立ち上がる。


「場所移そうぜ、白鳥センパイ?」


 不敵に笑いながら、直也は言った。



──第二話へ続く──

 改めまして、どうも皆様はじめまして。政岡三郎夜の山申します。


 以前はpixivで『タンポポボーイアキラ』という名で某格闘ゲームのキャラクターを主人公にした二次創作小説を書いておりました。


 小説家になろうへの投稿及び、一次創作作品の投稿はこれが初めてになります。


 第一話の時点ではまだ、面白いと感じてもらえる要素は無かったかもしれません。(今後も保証はできません……)


 それでも、精一杯面白い物語を描けるよう、誠心誠意精進して参ります。どうか、長い目で見守っていただけたら幸いです。


 なお、次回からは粗筋にて登場キャラクターの設定等を一人ずつ書いていこうと思います。


 皆様に少しでも、直也之草子の世界観を楽しんでいただければ幸いです。


 それではこれから、出来れば完結まで、直也之草子をよろしくお願いいたします。m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ