第六話 ニート、砂漠を抜けるが…
ゴトゴトゴトゴトゴト
馬の蹄が力強く道の石を蹴り飛ばす。
魔車に乗ってから二日の時が経った。
砂漠はとうに抜け、道が整備されてない草原を走っている。
魔車 と聞いて、どんなごついものが来るのか、はたまたカボチャの馬車で来るのかと思っていたが漫画とかでよく見る木造の馬車だった。
ただ、普通と違うのはそのスピードだ。
聞くと、身体強化魔法により馬の能力が格段に上昇しているらしい。普通に高速道路を走っているくらいのスピードは出ている、その早さに耐えられるのも魔法の影響とのこと。馬が怪我をしてしまったら回復魔法で、治す。このくリ返しだ。
その強化した馬をさらに操脳魔法というので馬を操っている、普通だと正気でいられないらしいからな。
当然馬の目は死んでいる。たまに
ひひひひひひひひひじじじじひひいいいいいいいんんn
と鳴くが、その度に御者が操脳魔法をかけ直している。
うんん!もう二度乗りたくない!現代日本で培われた道徳心が俺を苦しめる!
この世界で動物愛護が謳われるのはいつ頃だろう………
当然ここまで手がかかっているので、魔車を呼ぶのには偉い費用がかかるらしい。
さっきいった魔法に、長旅の食料、水。
前の世界では、中古車が買えるくらいだろう。
それでも、たいした距離は走れない、ラブルが自分の国に帰れるのはまだまだ先になる
と嘆いていた。
この魔車が向かっているのは、『ウラマ』と言う町で、ウホオウと比べると、比較的発展しているらしい。
ラブルによると、そこには『ギルド』なるものがあり、そこで依頼を受けて、金を稼ぐらしい。話を聞く限り、ゲームとかでよくあるものだろう。
俺はというと、もちろん戦う力も無いからそこで仕事を探そうか。
しかしやっぱりなんというか、この魔車は、乗り心地が………非常に悪い…………
魔車にもグレードがあるらしく、この魔車は一番低いグレードだ(それでも庶民からしたら贅沢)
どうたら差別化を図る意図もあるらしい。
なんたって振動がすごい。
ラブルは今にも吐き出しそうに、顔を青くしている。
とかいう俺も…………もう限界だ。
馬車の背部にまわり、壮大に吐く。
これを三日ともやっている。
俺、異世界に来てから何回吐いてんだ………?
「うぅ、気分悪い」
一通り胃の中のものを出し終わり、ラブルに言う。
「仕方ないですよ、村が支援してくれただけでも有難いですから…………」
ワニの大群を駆逐し、村の存亡の危機から救ってくれたおかげらしい。
最も、支援に相当な年月がかかるため、しばらくしたら倍の金を返せと。
言い出してくれたのは宿屋おばちゃんだった。
村のみんなが少しずつ資金を出してくれた。
しかし、あのおばさんがここまでやってくれたのは驚いた。
そもそもあまり裕福でないのに加え、村の復興で大変なはずだが。
「というか、ほんとにいいのかな………」
「なにがですか……?」
「おれ、なにもやってないぞ。
ただ無謀に突っ込んだだけだぞ」
俺は自分の分は援助しなくていいと言ったが、おばさんがそうさせてくれなかった。
「いいんですよ、だしてくれるなら。据え膳食わぬは男の恥ですよ。」
「それ、使い方間違ってないか…………?」
そんな言葉をラブルが知っているとは………
「それに……少しかっこよかったですよ。 果てしなく無謀でしたけど………」
「褒められているのかわからんな」
ラブルはそう褒めて?くれたが。正直喜べなかった。
この異世界に来てから不甲斐なさと空しさを感じるばっかりだ。
「お客さん、着いたよ」
御者が顔をのぞかせる。
俺は屋形から降り、地に足を着かす。
気持ち悪さ一気に体からぬけた気がした。
ゲームや漫画でよく見るような中世ヨーロッパの世界観。
石作りの建物、ちらほら鎧を着ている人もいる。
途端に、胸が熱くなった。
もっと、頑張ってみるか。
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次回!新たな道へ…………