第四話 ニート、体を休めるが…
「はぁぁぁぁぁぁぁ、温まるうう」
俺とラブルはまず風呂屋に行った。
あ、勿論別々だ。
大きい銭湯………ではなく足を少し曲げて入れる程度の桶に水を溜めて、下に薪をくべてる、いわゆる据え風呂だ。
それでも十分なほどリラックスできる。
よくよく考えればこの異世界に来て初めて死の恐怖から解放された気がする。
この1ヶ月ラブルと仲は深められただろうか…………
はじめ10日くらいはいろいろ話していたが、どんどん様子がおかしくなっていった。まぁおかしくならない方が珍しのかもしれないが…………
この町は『ウホオウ』というらしい。
真っ先にこの宿に来たが町に入って分かったことがある。
あまりにもこの町が小さいことだ。
見えた限り家は10数件しかなく、店は宿が一つ、そこの風呂をにはいらせてもらってる。
どうやって生活してるんだ。この町の住民は。
そろそろ出ようか。
この町に入ってからのラブルはまるで初日のラブルだった。
俺としても元気な彼女を見れてうれしい。
湯上がりのラブルを見るのが楽しみだ。
その後、食堂に向かうのだった。
**********
「嘘だ。。。」
夕食をこの町唯一の食堂に来てみたはいいんだが………
メニューはたくさんあった。
店のメニュー表にはこう書かれてた。
赤甲羅砂漠ワニのステーキ <2000ウィエン>
青甲羅砂漠ワニのステーキ <2500ウィエン>
赤甲羅砂漠ワニのスープ <3000ウィエン>
青甲羅砂漠ワニのスープ <3500ウィエン>
砂漠ワニミックススープ <3250ウィエン>
赤甲羅砂漠ワニの丸焼き <2000ウィエン>
青甲羅砂漠ワニの丸焼き <2500ウィエン>
生赤甲羅砂漠ワニ <2000ウィエン>
生青甲羅砂漠ワニ <2500ウィエン>
ウィエンはここらの国で使われている通貨らしい。
いや、そんなことはどうだっていい。
ワニ肉しかない。
隣に座っているラブルの目は心中しようとしていた時の目に戻っている。
しかし腹は減っている。
「赤甲羅砂漠カニのスープ1つ」
店員は、おそらく40代のおばさん。
かなり痩せ細っていて、頬骨が出ている。
貧しいのだろうか。
「ラブルは何にするんだ?何か腹に入れといた方がいいと思うぞ」
彼女は少し、苦虫をかみつぶしたような顔をして、口を開いた。
「私も、同じので………」
しばらくして、料理が置かれた。
なんというか、予想道理だ。
フォークとナイフは
俺とラブルは恐る恐る
「悪かったね。こんな飯しか出せなくて。」
奥のキッチンにいたおばさんが話しかけてくる。
どうやらここの宿を一人で経営しているらしい。
「前はもっといろんなモンスターが住んでたんだけど、他から輸入されてきたワニがここに群れを作って、他のモンスターを全部食べちゃったのよ・・・
仕方ないから植物を食べてどうにか暮らしていたけれど、ここら一帯のオリーブも食べ尽くしちゃって
。」
「ワニを食べればよかったじゃないですか?」
ラブルが物腰低く訪ねる。
「それが、どうやらそのワニは体内に毒を飼っているの。いくら熱しての消滅しない。」
なっっっっっっ!!??
ラブルと目が会う。
道理で不味いわけだ。
ラブルもしょっちゅう腹を壊していた。(俺には、ばれないようにしていたが………)
おそらく俺は序盤に生で食べていたから、強い抗体ができていたのかもしれない。
…………というかそのせいで死にかけたが………
というか、毒肉を店に出すな。
「うちにそれ以外の品はないよ。嫌なら、魔車鐘を鳴らして、魔車を呼ぶんだね。」
「ど、どうします………?」
ラブルが少し、苦い笑みを浮かべ、こっちを見る。
「えーっとまず、マシャガネって何だ……」
「あっ、はい、そりゃ分かりませんよね…
魔車鐘とは、魔車を呼ぶ鐘のことです。
魔車とは、種類にもよるのですが、大体は、操脳魔法、強化魔法を利用し、馬を動かして貨物や人を運ぶサービスです。」
「驚いた!この世界には魔法があるのか!」
俺にも使えるのだろうか。
夢もくそもない世界だと思っていたが、一つ楽しみができた。
「おい、そいつは大丈夫なんかい……?」
店主があきれたように言う。
「魔車を知らないだけでなく、魔法に存在まで知らないとは。
第一、お前らは一体どうしてこんな田舎にいるんだい。
普段ここに客なんて来ないよ。
国からの少ない支援金でやっとやっていけるって位なのに……」
「私は、ちょっと諸事情でここに落とされちゃって」
「俺は、記憶喪失でよく分からない。
ラブルとは偶然会ったんだ。」
異世界から来たなんて、いえるわけがない
「当然、金は持っているんだろうね」
「あ、それはこの子が……」
風呂に入る前に聞いておいた。
俺は当然一文無しなので、ラブルを頼ろうと。
彼女は、自信満々でもちのろんです!!
といっていた
「はい、これで!!」
そういうと、彼女は赤い、派手な装飾がされたカードを出した。
「ふふふ、トシャさんは知らないと思いますが、これはかの有名な《国が払ーうカード》です!!!」
「なんだその頭の悪そうな名前は。」
「酷い!」
ラブルが涙目になる。
「その名の通り、私が20戦姫を務める国、フイラが私の代わりに、代金をすべて支払ってくれるのです!!」
それが本当ならすごいが………
まさか借金じゃないよな………?
「それ使えないよ」
おばさんがあきれた声で言う。
「えっっっ」
「ここはフイラじゃないし、そんなカード都市部くらいしか対応してないよ。」
ガーーーーーーーん
ラブルが膝から崩れ落ちる。
「な、なんと……」
あれ?この子頼ってもいつも空回りしてないか………? 何かやってくれようとしているのは分かるのだが……
「しかし、どうするんだ。現金は持ってないのか?」
ゆっくり首を振る。 もうほとんど、食べてしまったぞ……
選択肢が3つある。
1.逃げる
2.殺ル
3.切腹
うむ、どーしよう。
「全部物騒じゃないですか!!!」
こ、この女、俺の頭の中を読みやがった...,
しかし、ラブルの突っ込み、悪くない...
「はぁ、じゃあ何か金目のものでも持って無いのかね...」
おばさんは、頭をポリポリ掻く。
「あのー、ちょっと待っててもらっていいですか.......」
そう言って、ラブルはドアを開けて外に出た
「まさか。ほんとに逃げるのか.....?」
「そんなことするわけ無いじゃないですか」
あきれたように言う。
まあ、さっきまで俺を殺して、自分も死のうとしてたやつが言っても、説得力無いけどな。
しばらくして、何かを引きずる音と供に、歩く音が聞こえた。
「これで、許してくれませんかね……」
これは、ずっとラブルが引きずっていた大きい布袋。
それは、ラブルに身の丈ほどあり、重いのか分からないが通ったところの砂は大きく抉れていた。
最初にラブルと会ったときは、新品なのかきれいな純白をしていたが、砂漠を歩くにつれて砂で汚れて小麦色になっている。
前に中身を聞いたが、「武器」とだけ教えられてはぐらかされてしまった。
ラブルは袋の口を縛る紐を抜くと、袋を横に倒す。
その風圧で、あたり一体の砂が高く舞い上がる。
そのまま、袋の中に手を突っ込み、その「武器」を取り出す。
「「これは」」
店主のおばさんと声が重なる。
それは黄金の装飾でまばゆく、重厚としたウォーハンマーだった。
片方は太く広くきれいな円を描き、もう片方は先になるにつれ、より鋭く、禍々しさを感じる。
戦姫とかそこそこ名が知れてる等と言っていたが、もしかして本当に....
いや、こんなドジっ子にそんなものが務まるわけ無いか...
「これ、多分高く売れるんでここはどうにか...」
しかし、絶対に大損しているぞ。
「こんなものもらえないわよ....」
うん、さすがに困っているぞ。
「悪いが、そのうちまたここを訪れる。
それまで貸し付けておいてくれないか?」
「しかたないね...」
うっっ。
睨まれる。
ほんとすんません...
ドンッッとドアが叩かれる。
「大変だ!!!!」
この村の住民だろうか。
30、代半ばだろうか。男性は鬼気迫っているように見えるが。
「一体どうしたんだい」
「サワラさん!!今すぐ逃げる準備をしてくれ!!速くしないとあの化け物が!!」
サワラさん...というのはおばさんのことだろう。
化け物だと...?
俺は知らせに来た男性を押しのけて外に出る。
俺らが通ってきた方に何かが見える。
何だあれは...巨大な、何か。
目を凝らす。
ワニだ!!ワニがこの村めがけて近づいてくる!!
あれは今までにみたワニとは違う。
おそらく全長は30メートルほどあり、なんと二足で歩いている。
その背後には無数の小さいワニがゾロゾロと..
「あ、あんた達も速く逃げた方がいい!」
あぁ、またピンチだ..
魔法だとか魔車だとか、この世界にロマンを求めた俺が馬鹿だった。
今度こそ死ぬ....
あ、そういえば風呂上がりの頬が紅潮したラブルはよかった。
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次回!ラブルが....