第三話 ニート、少女に助けてもらうが…
「きみ、、、、ラブルはなんでこの砂漠にいたんだ?」
「ははは、、話したら長くなるんですけど…まぁ遭難ですかね」
彼女が頭を掻く。
どうやら訳ありなようだ。
「今の位置は大体わかっているので、ここの砂漠の隅っこにある町を目指してます。」
とりあえずこの子についていくことにしよう。
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「あのー、後どれくらいで着くんだ、、、、、」
「あ、あれぇ?もうとっくのとうに着いているはずなんですが……おっかしいなぁ」
ラブルは地図を見て頭を悩ましている。
3日前の地点で1日で着くと言っていたのだが、すでに5日経過している。
まぁ、見ず知らずの俺に食事と水を分け与えてくれるので、さほど地獄じゃないが‥
にしてもこの子は何を持っているんだ。
彼女は常に彼女の背広より2回りほど大きい麻袋を引きずっている。前に中身を聞いたが、適当にごまかされてしまった。
「少し、その地図を貸してくれないか?」
ラブルからよれた地図を受け取る。
どうやらこの地図には、現在地と目的地が表示されるらしい。
仕組みはわからないが思ってたよりこの世界の技術は発達しているのかもしれない。
とりあえず、目的地の方角に矢印が出ているのでその方向に向かって歩くことにした。
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「一つ、思い出したことがある」
「な、何でしょうか……………………」
「俺が馬鹿だったということだ」
ラブルに会ってから10日が経過した。
いくら歩いても着かない。
矢印の方向にいっているはずなのに、地図の現在地は10日前より遙かに離れている。
転移以前はスマホを持っていなかったから。マップ機能なんて使えなかった。
(最も、まともに家を出てなかったので使う必要もなかったが...
水はラブルが持っていた謎の装置でどうにかなっている。
食料は時折出てくるあのワニを食べている。
火を通すおかげでおなかを壊すことはなくなったが、劇的に不味い。
ラブルはほんとにこれ食べるんですか?と涙目になっていた。
生よりましだ。頑張ってくれ。
この10日間、ラブルからいろいろなことを聞いた。
どうやら彼女はかなりの有名人らしい。
なぜか具体的なことは教えてくれなかった。
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「あのぉ、後どれくらいで着くのでしょうか、、、、」
ラブルがかすれた声で言う。
「あと、もう少しなはずだ、、、」
俺も痩けた声で言う。
ラブルと会ってから1ヶ月が過ぎた。
ここんところは毎日ラブルと変わり番こで地図を見ている。
「確実に近づいている、、、、、、というかもう着くはずなんだ、、、、」
本当に地図にはもう目と鼻の距離になっている。
「あああああああああああっっっっっっっ」
「狂います!狂いますよ!どれだけ歩いても砂!砂!砂!吐くほど不味いワニ!」
ラブルが今までで一番取り乱している!
「お、落ち着いて!!!!!ほんとに後もう少しなんだ!!!」
そう、ほんとにもう少しなんだ。
「それ5日前にも聞きました!!!」
「…………………」
「お、落ち着いたか? 絶対に今日中に着く、、、、!」
多分、、、、
「……………わかりました。」
ようやく冷静になったようだ。
「よ、よかった「ただし!!!」
ひっっ!
「今日、着かなかったら、一緒に死にましょう」
なに言ってんのこの子。いや、聞き間違いかな。。。。?
「トシャを殺して私も死にます」
オワタ
受験落ちた時を遙かに上回る絶望感。
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やばいやばいやばいやばい
もうそろそろ日が出てきてしまう。
いつもは火を焚いて休んでる時間だが、今日に限っては日が噴出する箱を手に持ってその光を便りに暗闇を歩いている。
この箱はこの世界の発明品らしく、メカニズムに関しては専門用語だらけでよくわからなかった。
日が出てきてしまう。それは俺の死を意味する。
ラブルはさっきから無言で俺の後ろを着いてきている。
その右手には人のいのちを確実の刈り取る形をした短刀が握られている。
もう心中する気満々じゃないですか・・・・・
可愛い女の子と一緒に歩く。
これだけ聞くとなんて美しい響きなんだろう。
その右手には短刀が。
一気に物騒になった。
一筋の光の光が差す。
終わった。日が出てきたのだ。
「頼む、早まるな!」
ラブルが即座に俺に短刀を振る。
慈悲はないようだ。
俺は短期間で何回死にかけるんだ。
刃先が目の前。
を通り過ぎる。
あれ…………?
生きてる………?
「それじゃ、行きましょうか!」
あの世でしょうか………
もう一度太陽の方を見る。
あれは太陽の光じゃない。砂嵐が吹いていて常に細くしていた目を擦り、大きく開く。
町の光だ。
ラブルの頬が上がっているのが分かる。
彼女の笑顔は久しぶりに見た。
この子は笑顔がよく似合う。
二人の声が重なる。
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」
「「ワニ以外を食べれる!!!!!!」」
本当に不味いんだ、あれ。
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次回!ワニを食う!