【声劇台本】3年目の告白
志村 真
上京したばかりの青年。好きなモノの為ならなんでも出来るタイプ。
青島 七海
真の高校時代の先輩。
【配役】
マコト(男性):
ナナミ(女性):
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マコト:あ、楽器屋なんて出来たんだ……ここ。
(おもむろに入ってみる)
ナナミ:いらっしゃいま……
マコト:……あ、青島先輩……
ナナミ:久しぶり、マコトくん。卒業以来……だね
マコト:そう……ですね。3年ぶりくらいですか?
ナナミ:うっわ、3年とか生々しい数字、言われると歳を感じる
マコト:先輩、僕の2個上ですよね?
ナナミ:そういう事じゃなくて……もういいよ
マコト:あはは……
ナナミ:え、ここ来るって事は今もギター弾いてるの?
マコト:そ、そう……ですね。最近は忙しくて弾けてませんけど。
ナナミ:そっか、まぁマコトくんは就職しちゃったしね。
マコト:え、なんで知ってるんですか?
ナナミ:なんでも何も、ほら顧問の豚ヒゲ先生と連絡取ってるから。卒業した後も部活メンバーの話は聞いてたんだ。
マコト:そうだったんですか。……ってか豚ヒゲ先生とか久々に聞きましたよ。
ナナミ:ねー懐かしいよね。最近さ豚ヒゲ先生また太ったんだって。
マコト:え?そうなんですか?
ナナミ:そうそう、健康診断で引っ掛かってヤバかったらしいよ。
マコト:あの人タバコも吸ってましたしね。色々と問題ありそうですよね
ナナミ:ねー。っと、いけないいけない。接客しなきゃ。
マコト:あ、そういえば。
ナナミ:それで、今日は何をお求めで?
マコト:あいや、何か探してる訳じゃないんですけど……そうですね、良い奴あります?
ナナミ:ギター?
マコト:ギター。
ナナミ:んー、そうだなぁ……最近だとこれかな。
マコト:うわっ……派手な赤ですね。
ナナミ:マコトくん、いつも赤い物を身に付けてたからさ。良いかな〜と思って。
マコト:良く覚えてますね。
ナナミ:むしろ忘れる方が難しいって。いっつも視界に赤があるんだよ?
マコト:そう言われると、そうかもですね。
ナナミ:でしょ?……どう?弾いてみる?
マコト:良いですか?
ナナミ:もちろん!楽器屋ですから。
マコト:じゃあ……お言葉に甘えて……
(椅子に座りギターを構えるマコト)
ナナミ:ふふふっ。
マコト:な、なんですか?
ナナミ:いーや?なんでもー。
マコト:あ……そうですか……
(指を動かすマコト)
マコト:……あれ?
ナナミ:ん?どうしたの?
マコト:あいや……えっと……
ナナミ:もしかして……マコトくん、ギター弾いてない?
間
マコト:あはは……バレちゃいましたか……
ナナミ:どうして?最近、弾いてないってどのくらい弾いてないの?
マコト:1年……くらいですかね。
ナナミ:たしかマコトくんの就職先って工場だよね。もしかして、指を?
マコト:あいえ、そんなことはないです!……ただ、高校の時より傷だらけにはなりましたね。
ナナミ:マコトくん……
マコト:そんな顔しないでくださいよ先輩。
間
ナナミ:ちょっとこっち来てくんない?
マコト:え?
(ナナミがマコトの腕を強く引く)
ナナミ:叔父さん!裏行く!
マコト:え?先輩お店良いんですか?
ナナミ:良い。ここ叔父のお店だから融通が聞くの。
マコト:え?じゃあ、どこに?
ナナミ:この店、中に防音室あるから、そこで練習。
マコト:え?え?え?
(勢いよくドアを開け、防音室に備え付けられた椅子に座るナナミ)
ナナミ:マコトくん、そこ座って。
マコト:え?あ、はい。
ナナミ:じゃあまずは……
3時間後
ナナミ:うん、弾けるようになってきたね。
マコト:いや、キツすぎますって……
ナナミ:私の指導がキツイのは知ってるでしょ?
マコト:はい、思い出しました……
ナナミ:いやー、でもこうしてると思い出すね。
マコト:高校の時……ですか?
ナナミ:うん。特にマコトくんが入ってきたばかりの頃。
マコト:あー……あの時はギターの持ち方も知りませんでしたからね。
ナナミ:そうそう、意気揚々と入部してきたから経験者かなーって思ったら全然だったもんね。
マコト:そんな勢いで入りましたっけ?
ナナミ:うん、すっごい息巻いてた。
マコト:まぁ、そんな時もあったって事で……
ナナミ:えーなにそれ?なんか私だけ覚えてるとか変じゃん。
マコト:いや、まぁ……あの時の記憶はなるべく思い出したくないです。
ナナミ:え、なんで?
マコト:なんでもです。
ナナミ:良いじゃんケチ。ね、なんであんなに意気揚々と入ってきたの?
マコト:それは……
間
マコト:部活紹介の時の先輩が……カッコ……よかったから。です。
ナナミ:へえ、私が?カッコよかったから?ふふ、照れるなあ、そう言われると。
マコト:ええ……まぁ……
ナナミ:ね、それだけじゃないでしょ?
マコト:え?
ナナミ:マコトくん、私に隠してることあるでしょ。
マコト:それは……
ナナミ3:年ぶりに会ったんだからさー。聞かせて欲しいなー。
マコト:それは……
ナナミ:それは?
マコト:それは僕が……好きだったから……
ナナミ:何が好きだったの?
マコト:…………先輩のこと……
ナナミ:え?聞ーこーえーなーいー。
マコト:俺!先輩の事、好きだったんです!!
ナナミ:あー、言っちゃったー。
マコト:先輩が言わせたんでしょう!
ナナミ:えへへ、まあね〜。
マコト:それで……返事は?
ナナミ:んー?そうね……
マコト:……
ナナミ:実は……知ってました。
マコト:え?
ナナミ:マコトくんが私の事、好きだったの知ってた。
マコト:え、本当ですか?
ナナミ:だってぇ、マコトくん私と練習すると指じゃなくて私の事ばっかり見てたじゃん。それに気づかない程、私は鈍感じゃないよ。
マコト:マジですか……
ナナミ:ふふふ、ごめんね?イジワルして。
マコト:いやホント……タチ悪いですって……
ナナミ:まぁその時は私、勉強とか部活とか色々と忙しかったから。正直、告白されたらどうしようって思ってた。
マコト:は、はぁ……
ナナミ:でも今はね……
マコト:……
ナナミ:今はマコトくんと話してて楽しいなって思った。ノスタルジーっていうのかな。懐かしさももちろん有るけど……ココ最近で1番、楽しかった。
マコト:っ!じ、じゃあ……
ナナミ:でーも。3年ぶりに会って告白されて、じゃあ付き合いますとはならないよ?
マコト:っ!……ま、まぁそうですよね……
ナナミ:だからさ……
マコト:……
ナナミ:今日から暇な時は来てよ。
マコト:え?
ナナミ:「まずは友達から」……って言うと勘違いされるかもしれないけど。3年空いた分は大きいからさ。色々と聞かせてよね。
マコト:…………はい!
ナナミ:ふふふ、よろしくね。マ、コ、ト、っくん!