第92話:狭いよ【現世Part】
前回のあらすじ!
野球・サッカー < アリの巣さがし・卓球
「クラスのみんな、何してるかなー?」
卓球大会からの帰宅後──、昼食後の自室で課題を進めていると、卓袱台にほっぺたをくっつけたエっちゃんが、縁側を眺めながら呟いた。
エっちゃん、集中切れるの早いよ。これじゃあ最終日まで課題る羽目になるよ。
「それはそうだけどー、でも、気にならなーい? みんなは夏休み、どう過ごしてるのかー」
気持ちはなんとなくわかるけども。
──エリンっ
エっちゃんのほっぺを突いていると、スマホが鳴った。
覗いてみれば『エイリ:皆夏休み如何お過ごしー?』と既に送信されていた。
送らさった以上仕方ないので、潮時まで課題を打ち止めることに。
程なくして複数人から反応が寄せられる。一年三組の皆はノリが良かった(未読の人はトイレに行ってたんだろうな)。
『ひろと:兄弟でモッチャレ大会してた』
『仏くん:母の生家の墓参りに来ております』
『志桜里:同じくお盆帰省』
『ともえ:私はバスケだよ』
『ほ~こ:こっちも相変わらず走り幅跳び。プール行きたい!』
『ナルミ:夏の柔道は軽く死ねるぞ。熱気と汗の臭いで』
『竹太郎:生きて』
『ナルミ:其方は美しい』
『ときお:僕も部活と家の手伝いなのさ』
『仏くん:夏休みは書き入れ時でしょうから忙しいでしょう。熱中症にお気をつけて』
『ときお:ありがとうなのさ』
『志桜里:サッカー部なんだっけ確か? ポジションどこ?』
『ときお:キーパーなのさ』
『ナルミ:安定感凄そう(小並感)』
『ほ~こ:ゴールから反対ゴール手前まで蹴ってたわよ。ソースは陸上部の私』
『ときお:いずれはゴールに直接ぶち込んでやりたいさ。他の皆はどうなのさ?』
『茶之助:オレ親父の付き添いで広島』
『竹太郎:厳島神社』
『茶之助:行けたらいいな』
『仏くん:何の付き添いなのですか?』
『茶之助:要人の茶会。付き添いOKだったから荷物持ちでついて来させてもらってる』
『エイリ:凄ぉい』
『茶之助:そういう桐山は?』
『エイリ:たっくんに宿題でいじめられてます(泣)』
『竹太郎:夏季課題でしばいてます』
『志桜里:しっかりしごいときなさい。その子監視てなきゃ最終日まで溜め込むタイプ』
『エイリ:しおりん、エスパー?』
『志桜里:前の勉強会で大体把握した』
『ひろと:というか木下地元帰らないのか? 家から離れてるって聞いてるけど?』
『竹太郎:帰ってきてるよ?』
『ひろと:? カメラ通話で勉強してんの?』
『エイリ:一緒に居るよ?』
『ひろと:もしかして……、一緒に帰ってる~⁉』
『仏くん:トゥルルルル~ル トゥ~ルルルルルル~』
『ほ~こ:君の前前前背』
『ほ~こ:誤送信!』
『志桜里:一緒に帰省してんのアンタたち⁉』
『ともえ:わぁ大胆』
『エイリ:愉しいよ』
『志桜里:そういう問題じゃない!』
『茶之助:そういや保護者同士知り合いなんだっけ? 三者面談で親父とも喋ってたな』
『仏くん:ほなええか』
『ほ~こ:いとこの家に行くようなものね!』
『竹太郎:中途乱入してきた理事長とギャルピースしてたもんね』
『志桜里:うっわ気持ちわる』
『ともえ:志桜里くん。ステイ』
『ときお:悪口はハウスなのさ』
『竹太郎:~理事長のスマホ自撮り棒を添えて~』
『ともえ:ごめん。気持ち悪いw』
『ときお:絵面が強すぎるのさw』
『茶之助:つーか今日何してた? オレは観光がてら昼にお好み焼き』
『竹太郎:広島風お好み焼き?』
『茶之助:それそれ。あと~風はやめといた方がいいらしいぞ』
『竹太郎:どして?』
『茶之助:地元のが一番精神』
『竹太郎:へー』
『ときお:僕は練習試合だったのさ』
『仏くん:サッカーボール、お腹で防いだりしましたか?』
『ときお:流石にうっ……てなったのさ』
『志桜里:したんかい』
『仏くん:その一方で、私はヨガってました』
『竹太郎:あのオットセイになるやつ?』
『仏くん:叔母がヨガ教室インストラクターなのです』
『仏くん:木下さんは何してました?』
『竹太郎:卓球してた♨』
『仏くん:温泉で卓球、いいですねぇ』
『ほ~こ:温泉でまったりもいいわね~』
『志桜里:アンタたち、多分勘違いしてるわよ』
『竹太郎:温泉じゃなくて学校だよ』
『ひろと:学校?』
『エイリ:たっくんが通ってた小学校で卓球したんだよー。その映像がこちら』
『志桜里:うわ激し』
『竹太郎:僕と校長先生の試合、撮ってたんだね』
『エイリ:ぺチが三点脚立で撮ってくれてたよー』
『志桜里:誰よぺチ』
『竹太郎:野山に棲んでる犬の一匹だよ』
『志桜里:撮影できる野良犬がいてたまるもんですか』
『竹太郎:地域によりけりだよきっと』
『志桜里:あってたまるか』
『ナルミ:野良のわりに球拾ったり賢いな。……ホントに犬かこれ?』
『ともえ:狼……に見えなくもないね』
『竹太郎:ぺチたちはオオカミじゃないって言ってたよ』
『ときお:けど結構似てるのさ。テレビで見たけど胴長で脚と耳が短かったのさ』
『竹太郎:だったらコーギーだってオオカミだよ』
『志桜里:二度と犬語らないで』
『茶之助:それよりよ、この校長先生の戦闘スタイル、なんか似てるんだよな』
『志桜里:戦闘スタイル』
『茶之助:最近卓球の世界大会、テレビでやってたじゃん』
『茶之助:それに歴代覇者の優勝した瞬間映ってたんだけど』
『茶之助:志賀ケンヂって選手と校長先生がダブった』
『仏くん:オリンピック三連覇の方ですか? 私もその番組見ました』
『仏くん:言われてみれば、随分似てますね』
『ほ~こ:きっと強い影響を受けたのね!』
『ともえ:卓球人の多くが憧れる選手っていうもんね確か』
『竹太郎:僕も世代だったら、ケンヂさんに憧れたのかなぁ』
『エイリ:きっとそうさ』
『茶之助:ところで、今年の夏祭り行く人いる? オレは帰れたらだけど』
『ときお:ノ』
『ひろと:ノ』
『ほ~こ:ノ』
『ナルミ:なんやかんや結構いるな』
『ともえ:折角だし、集まれる人で一緒に行くかい?』
『ほ~こ:行く!』
『ひろと:あとで呼びかけてみるか』
『竹太郎:僕もお祭り行くよ』
『竹太郎:地元のお祭り』
『竹太郎:蛍が綺麗だよ』
『志緒里:今どきホタルいるの⁉』
『ほ〜こ:私もホタル見たい!』
『ほ〜こ:写真お願いしてもいい?』
『エイリ:かしこまりー』
『ほ〜こ:ヨロシク‼』
『竹太郎:しかし彼女は撮影が下手だった』
『ほ〜こ:やっぱ木下くんで!』
『エイリ:(´;ω;`)』
『茶之助:にしても今どきホタル飛んでるんだな』
『竹太郎:おかけでこの時期は観光客で賑わうよ』
『竹太郎:多分遥ねーちゃんも来る』
『竹太郎:大学生の時も、帰省しては欠かさず行ってたし』
『竹太郎:去年はともかく』
『仏です:大学四年生ですと、就活とか実習ですかね?』
『ときお:なら忙しかったろうし、仕方ないのさ』
『ときお:だから僕も休憩を終えて、忙しい手伝いに戻るのさ』
『茶之助:あ、もうこんな時間?』
『ともえ:気付けば随分と喋っていたね』
『ひろと:ちょうどいいしお開きにするか』
『仏くん:それでは皆さん、また次回お会いしましょう』
『ほ~こ:解散‼』
ということで、各々スマホにさよならバイバイし、僕もエっちゃんに鉛筆を持たせて課題を再開するも、その日分のノルマを果たし、縁側でまったり過ごし、夕飯と入浴を済ませ、布団に横になったところであることを思い出した僕は、本棚に突っ込んでいた卒業アルバムをスマホの明かりを頼りに引っ張り出し、在籍教師のページを開いてみると──、
校長:志賀ケンヂ
…………世間は狭いね。
伝説のジジイはなりを潜めているものです。
明日は9時投稿です。
よろしくお願いします。




