第7話:流れたよ
前回のあらすじ!
カモメ。
えっほ。えっほ。
どむんっ。
ゎああぁああ。
ひょっこらせ。
えっほ。えっほ。
ぃああぁああ。
以下、エンドレス。
僕はカモメに咥え逃げされた後、気を取り直した漁師さんたちと一緒に、箱詰めされた魚を荷台に積む作業をしていた。
「おう、ぼうず。箱持つなら、底から抱え込んだ方が、腕疲れずに済むぞ」
漁師さんの一人が教えてくれた通りに、持ってみる。
あ、ホントだ。
漁師さん、ありがとう。
作業は至って単純。けれどそれ故に難しい。箱の持ち方を工夫しないと直ぐ腕が疲れて持ち上げられなくなるし、ペースを考えないと体力が尽きる。なんやかんやで考えることが意外と多い。「シンプル・イズ・ザ・ディフィカルト」ってやつだ。
加えて凄く暑い。建物が少ない港なのもあって陽射しが諸に当たる。長く居たら日射病になってしまいそう。
にもかかわらず、漁師さんたちは誰一人休まずに動いている。だったら僕も遅れを取るわけにはいかない。
えっほ。えっほ。
ゎああぁああ。
「おう、タケ。張り切るのは良いが、トバしすぎんなよ。此処は屋外な分ただでさえ暑いから。厳しいようなら日陰に行けや」
グラさんはそう言って、日陰を指差す。
えー……。
「なんだよ。なんか文句あんのか?」
だって、みんな、全然休んでないよ?
「……あのなぁ、タケ。俺たち、お前に休まずやれって一度でも言ったか?」
グラさんがため息を吐いて、呆れ顔で訊いてくる。
……言ってないね。
「俺たちゃあ慣れてるからまだしもよ、お前は初めてだろ? 初心者なんだからキツイに決まってんだろが。なあ親父」
「ぶっ倒れたら承知しねぇぞーーーー‼」
マッチョッチョが、どっかん、と、安定の爆声を投げてくる。周りは吹っ飛ぶ。
「俺も若手だから偉くは言えねぇけどよ、休むことは恥じゃねえぞ。仕事探しで焦ってるだろうが、休める時はちゃんと休め。ぶっ倒れたら元の子もねぇんだから」
そう言ってグラさんは、向こうへ箱を運びに行った。
「……まあ、ぼうず。今はグランの言う通り、少し落ち着いてきたらどうだ?」
ぽつねんと佇んでいると、近くを通り掛かった漁師さんが僕にそう言ってきた。
僕は取り敢えず、グラさんと男の人の言う通りにすることにした。
日陰へ向かいながら思い出す。
村長も似たようなこと言ってたなー。
◇ ◇ ◇
「よーし、今日の作業終わりー‼ 帰れーー‼」
「うぃーす」
数時間後――。
魚を積んだ荷台を持って出て行った人たちが戻ってくるなりマッチョッチョが作業終了を宣言した。船長の一声で漁師さんたちは一斉に作業を止めて帰る準備を始める。
ふーっ。
……さて、仕事が終わったけど、これからどうしよう。もう少し村の中を回りたいけどお昼だし、いったん家に戻ろうかな。
……あ、そうだ。
エっちゃんのところへ行こう。もしかしたら未だ農家さんのところにいるかも知れない。おばあさんは一人で営んでいるそうだからその分時間が掛かっている筈だ。
でも、農家さんの家、何処にあるのか知らないや。
グラさん。グラさん。
「おう、なんだ?」
農家さんの家って、何処かな?
「農家の婆ちゃん? 急にどうした?」
僕は港に来る前、エっちゃんと鍛冶屋にいて、彼女が農家さんのところへ行ったことを伝えた。
「なるほど。農家の婆ちゃん家ならまず広場に行って西通りに入るんだ。そしたら三つ目の角を右に曲がってあとは道なりに歩けば婆ちゃん家に着くぞ」
ありがとう。グラさん。
「ぼうずーー‼」
わあ。
見ると、船長さんがどごんどごん――と、地響きを鳴らして迫ってきていた。
どごんどごん。ぴたっ。
船長さんが立ち止まる。
「手ぇ、出せ‼」
はい。
「違う‼ 両手だ‼」
はい。
どすんっ。
船長さんが僕の両手に乗せてきたのは、商品にならなそうな魚の袋詰めだった。
「仕事決まんなかったら、うち来いや‼」
うん。マッチョッチョ、ありがとう。
「俺はアラールだーー‼」と叫ぶ船長さんたちにお疲れ様でしたして、僕は港を出発した。
◇ ◇ ◇
おこめこめこめ、おこめこめ。
オコメコメコメ、オコメコメ。
お米米米、お米米。
ふぇーーーー。
「おこめの歌」を口ずさみながら、僕は小道を歩いていた。
小道は楽しい。石がある。土がある。知らないだけで名前がある草が生えている。人が歩いた跡がある。蟻の行列が「今日も仕事日和ざますね吉田さん」「僕、田中です……」と犬に蹂躙されながら行進している。
道中で家畜を見かけた。放牧式のやつで、牛さんたちが「ウシー」と草をもっさもっさ食べていて、豚さんに羊さん、馬もいた。小屋からは「コウッコッココココケー」とニワトリさんの鳴き声がした。小屋の配置からしてそれぞれ独立して暮らしているのだろう。
あんなにたくさんの動物をお世話するのは、これでもかと体力と愛情を有するだろう。
家畜農家さん、凄い。凄い。
小麦農家さんも見かけた。辺り一面が金色一色で、爽やかな風につられて、さわーっと嫋やかに揺れていた。
あんなにたくさんの小麦を育てるのは途轍もない年月を有しただろう。実家が趣味ではあるが農家である身として、作物を育てることがどれだけ大変かは分かっているつもりだ。
小麦農家さん、凄い。凄い。
そんで、パン職人さんは、あれを上手い具合にパンにするのだろう。
パン職人さんも凄い。凄い。
あ、着いた。
そんなこんなで僕は野菜畑に差し掛かり足を止めた。
地面からはニンジンの葉っぱが生えている。間違いない。ここだ。
顔を上げて、遠くを見渡す。
いた。
エっちゃんはおばあさんの傍で荷台に野菜を積んでいた。
僕は待った。作業中に水を差してはいけないので、彼女の動きが止まるまで、辛抱強く待った。
エっちゃんが腰に手を当てて背伸びした。
そのタイミングで僕は声をかける。
おーい。エっちゃーん。
手をぶんぶんと振る。
「あー。たっくんだー」
エっちゃんが、僕に気付いて声を上げる。
畑道を歩いて、彼女の傍まで行く。
「おや、あんた。最近来たって子かい?」
おばあさんが、優しい声で話し掛けてくる。
うん。昨日引っ越してきた、竹太郎です。
「だったら、引っ越し祝いだ。このキャベス、持っていきなさい」
そう言っておばあさんは包丁を取り出すと、足元のでっかいキャベツをザックザックと切って、僕にくれた。
どうやらこの世界では、キャベツはキャベスって言うらしい。
だったら、レタスは、レタツだろうか?
……ふふっ。
おばあさんはちょっくら離れたネギ畑まで歩くと、ネギを一束ずぼっと引っこ抜いて、持ってきた。
「このノギも持ってけ」
ネギ。
……ふふっ。
おおばあさんは近くの枝木がうじゃうじゃ生えている中を進んで行くと、トマトを何個か抱えて戻ってきた。
「トムトも食べなさい」
猫と鼠の大惨事大合戦を思い出す。
……ふふっ。
僕の腕は、たくさんの野菜でいっぱいになった。
おばあさん、ありがとう。
「ねーねー、たっくん。さっきから気になってたんだけど、その魚、どしたの?」
エっちゃんが右手に下げた魚の袋を指差してくる。
マッチョッチョから貰ったの。
「マッチョッチョ?」
エっちゃんは「誰それ?」と首を傾げる。伝わらなかったらしい。
グラさんのお父さんから貰ったの。
「グラ……グラにぃかぁ。港にも行ったんだ」
うん。
あ、そうだ。
おばあさん。この魚あげるよ。野菜くれたお礼。
エっちゃんに野菜を何個か持ってもらってから、魚の袋をぐーっと押しつける。
「ああ。わし、あまり魚は食べないんじゃ。ごめんねぇ」
あら、残念。
まあ、そんな人もいるよね。
「でも、くれるものを突っ返すのは悪いからね。一匹だけ、貰うとするかね」
おばあさんは袋を受け取ると、魚を一匹、素手で取り出した。
おばあさんは魚を持って、近くの家に入っていき、しばらくすると、袋を持って帰ってきた。
「これに野菜、入れんさい」
おばあさん、ありがとう。
袋を受け取り、野菜を詰める。キャベス、ノギ、トムトの順で入れる。ノギはキャベスの隣に差し込むように入れる。
「さて。じゃあ、行くとするかね」
おばあさんが宣言する。エっちゃんが「おー」と言う。
エっちゃん、これから何処に行くの?
「あー、そっかー。たっくんは、初めてだもんねー。昼市」
ひるいち?
「まー、行ってみれば、分かるよー。それじゃあ、レッツゴー」
エっちゃんは宣言と共に荷台を引いて、おばあさんと僕が来た道を歩き出した。
僕は後ろをついてった。
◇ ◇ ◇
広場に出ると、朝には見かけなかったものがあった。
実家の近くで見たことがある無人直売所が設置されていた。
それも複数個置かれていた。
そういえば、さっきここ通った時も一台あったっけ?
まあ、いっか。
その無人直売所に群がる人たちで、広場は賑わっていた。
「これが、昼市だよー」
と、エっちゃんは言った。
なるほどなー。昼市って、朝市の昼バージョンのことだったのか。
あ。ということは、漁師さんたちが広場に魚を持っていってたのも、これのためだったのかな?
「そうだと思うよー。ほれ、あそこー」
エっちゃんが指差した方を見やると、コインロッカーがあった。扉部分に取り付けられたガラス越しに港で見た魚が見える。しかも冷蔵機能付き。
なんて懐かしい。ばあちゃんが「昔はね、これを冷蔵庫にしてたんよー」って、教えてくれたやつだ。
あれ? でも、冷蔵箱って、電気使うんじゃなかったっけ?
そこんとこ、どうなってるの?
「リリさんが、作ってくれてるよー。魔法で、電気バリバリーって」
そうなのかー。
「しかも、魔法の扱い、すごい上手いんだよー。リリさんがやれば、七日はぶっ続けで、使えるよー」
マジでっかー。
すごい人なんだね。リリさんて。
「そうだよー。ユイねぇも、すごい師事してて。成人して四年経った今でも、リリさんが村にいる時は、戦い方、教えてもらいに行くらしいよー」
普段はいないの?
「そうなんだよー。一度充電したら手持ち無沙汰になるからって、近くの国まで出稼ぎに行ってるんだって。日帰りで」
近いのかな?
「どうだろうねー? リリさん、ワープ魔法使えるらしいし」
じゃあ、距離関係ないか。
ところでエっちゃん。昼市ってどれくらいやってんの?
「昼ごはん、食べ終わる辺りまでだよー」
じゃあ、一時間くらいかー。
どんなのが置いてあるの?
「色々だよー。なんなら、見てみる? ちょうど野菜、並べ終わったし」
ホントだ。荷台の中もう空だ。
じゃあ、見る。
「なら、急いで回ろー。早くしないと、みんなが買ってっちゃうしー。おばーちゃーん。昼市見てくるから、荷台、後で持ってくねー」
「はいはい。行ってらっしゃい」
帰ってくおばあさんに、見えなくなるまで手を振る。
「ほんじゃ、行きますかー」
わーい。
早速、最寄りの、おばあさんと並べた野菜ではない方に、「ぅわあぁあ」と行ってみる。
置かれていたのは、赤いお肉だった。けれど、なんのお肉か、よく分かんない。豚肉は、もっとピンクだし……?
「これは牛肉だよー」
そうなのかー。しかし、なんで分からなかったんだろう?
…………。
ああ、なるほど。食べたこと無いのだ。僕のじいちゃんとばあちゃんは「豚肉・鶏肉の方が好き」と基本的に豚肉しか買っていないから、必然的に見慣れてなかったのだ。まぁもしかしたら、何処かしらでは食べたことあるのだろうが。
「たっくん。牛肉食べたいの?」
エっちゃんが訊いてくる。まじまじと見過ぎちゃったみたい。
見てただけだよ。昨日お肉食べたばかりだし。
「そうは言っても、お肉は次に出るまでが長いよー。牛だと尚更長いから、今日過ぎたら十日は買えなくなるよー」
だったら豚さんとニワトリさんはどれくらいなの?
「豚は三日で、鶏は半日らしいよー。あ、でもこれは殺してから置いとくまでの最低限の目安で、実際はもっとかかるらしいよー」
そうなのかー。
……あれ? にしては豚さんとニワトリさんの肉、見当たらないよ?
「今日はお休みみたいだねー。豚は五日、鶏は三日ごとに並べられてるのー。数が限られてるから、国みたいに毎日は並べられないってー。行ったことないし、何処にあるかも、知らないけどー」
へー。
お肉って、作るの大変なんだね。
「そうだよー。わたしもイノシシ狩ったりするから、よく分かるよー」
改めて、凄いんだね。エっちゃん。
「えへへー」
エっちゃんは、とても嬉しそう。
そういえばエっちゃん。さっき、休みがどうこう言ってたけど、今日って山仕事、休みなの?
「休みだよー。時期にもよるけど、七日に一日は、休みだよー。今日が休みだから、明日の朝、また山に行くよー」
山では、何を採ってるの?
「ワリャビとかの山菜やキノコ、果物だよー。たまにイノシシやシカだよー。イノシシやシカの時は、半日から一日中、山にいると思うよー」
そうなのかー。
「あ、そだ。たっくん、明日、一緒に行く? 今ちょうどキノコの時期で、すっごい生えてんのー。一人じゃ持ちきれないのー」
キノコかー。
そういえば、収穫したキノコは結局食べず終いになってしまっていた。あのような特に気にしていない虚しさを繰り返さないためにも毒キノコの見分け方は早いうちに覚えておきたい。
行こう、行こう。
「りょうかーい。……て、あ。ユイねぇだー」
エっちゃんが見ている方に顔を向けると、ユイねぇさんがいた。
おーい、ユイねぇさーん。
僕はユイねぇさんを目指して歩いた。エっちゃんも僕の速度に合わせて歩く。
のこのこ。
のこのこのこのこ。
のこのこのこのこのこのこ。
のこ。
ぴたっ。
ユイねぇさんの目の前まで辿り着く。
「遅いわ」
怒られた。
「ユイねぇ、何買いに来たのー?」
エっちゃんがユイねぇさんの手元を覗き込む。
「卵を買いに来たんだ。切らしたことをすっかり忘れていたばかりに、今朝方、ベーコンエッグを作りたかったのに、只の焼きベーコンになってしまったんだ。ベーコンエッグの気分だったから、気分が晴れなくて、こうして来てみたんだ」
「やーい、間抜けー」
エっちゃんがゲッツしながら笑う。
「なんだとコノヤロー」
「きゃー」
ユイねぇさんは生優しくエっちゃんをシバく。二人のやり取りは姉妹みたいで見ていて楽しい。
「…………お……」
群衆の賑わいにかき消されてしまいそうな小さい声がした方を見ると、リンねぇさんが人混みの中からこっちを見ていた。
目が合うと、リンねぇさんは歩み寄って来た。
とことこ。
とことことことこ。
とことことことことことこ。
とこ。
ぴたっ。
「お前もか」
リンねぇさんも怒られた。
リンねぇさんはうんと頷くと、手に持っていた袋の中身を見せてくれた。
ベーコンだった。
……もしかして、卵無かったの?
「ん……」
どうやらリンねぇさんも、ベーコンエッグを食べ損ねたようだ。
「なんだなんだ? みんなして集まって?」
今度はグラさんが現れた。なんて偶然。
てくてくてくてくてく、ぴたっ。
グラさんは僕たちに気付くと、あっという間にやって来た。
「…………ありがとう……」
「いや、なんすか急に……?」
ユイねぇさんからの突然の感謝に、グラさんは少し気味悪がっている。
グラさんも、ベーコンエッグ?
「ベーコンエッグ? 俺は牛乳を買いに来たんだよ。今日はシチューだって」
ぶー。
「ぶー」
「ぶーぶー」
「ぶぅ」
「なんで責められてんの俺?」
僕に続いて、エっちゃん、ユイねぇさん、リンねぇさんに謂れのないクレームを送られ、グラさんは困惑する。
そんなこともあるさ。昼市なんだもの。
「あってたまるか」
その昼市だけど、なんで昼市なの?
「いきなり急だな。昼市の何が疑問なんだ」
僕が住んでたところだと、朝に開いてたからさ。なんでなのかなーって。
「眠いじゃん」
みんなは顔を見合わせると、口を揃えて、そう言った。リンねぇさんだけ、うんうんと頷いていた。
そっかあ……。
…………。
そうだよねー……。
◇ ◇ ◇
荷台を農家のおばあさん家に届けた後の帰り道。
僕はエっちゃんとおばあさんの関係を訊いてみた。
エっちゃんって、おばあさんとは長いの?
「昔からの付き合いだよー。この村に住み着いてから、一人でも食べていけるようにって、山菜の採り方とか、教えてくれたのー」
おばあさん、山菜も採ってたの?
「昔はそーだったみたいだよー。でも、おばあちゃんになって両立が大変になったとこで、わたしがユイねぇに色々教わるようになってから農業に専念してんだって。山に入るなら、山菜を見かけることがあるだろうって。おいぼれはさっさと引いて、仕事は次世代の若者に託すべきだーって」
一緒に暮らそうとか、考えたりしなかった?
「考えたことはあるよー。実際、うちの子にならんかーって、誘われたことあったよー。けど、おじいさん家で暮らしたいなーって思って、断ったよー。おじいさんと会ったことないけど、最初の家には代わりないからさー」
そうなのかー。
人生は色々ある。僕も二歳になっていたのかいないかの辺りで、お父さんとお母さんが死んじゃったものだから、その時から、じいちゃんばあちゃんの家で過ごしていた。故にお父さんお母さんと暮らしていた家のことは微塵も覚えていない。
でも、もしも物心ついた状態でお父さんお母さん亡くなって、じいちゃんばあちゃんと暮らすことになっていたら、家を出るのを躊躇ったかも知れない。「お父さんお母さんの家出たくないー」って駄々を捏ねていたかも知れない。
「もしかしたら、そうだったかもねー。というか、わたしたち、共通点多いねー」
そうだねー。あんまり、口に出して言えることじゃないけれどー。
「なんか、たっくんとは、一目見た時から、気が合うと思ってたんだよー。もしかしたら、どっかしらで会う運命だったのかもねー」
エっちゃん、運命とか、気にしなさそうだなー。
「あー、言ったなこのやろー。わたしだって、ロマンチストなんだぞー」
運命かー。
エっちゃんと出会うのが運命なら、ここに来るも運命だったのかな?
じいちゃんとばあちゃん、元気かなー?
「あ……」
向こうの世界に残してしまった祖父母を案じていると、急にエっちゃんが立ち止まる。
どうしたの? エっちゃん?
「牛肉忘れてた」
あ……。
あーあ……。
ててんて、ててんて、どぅどぅっどぅどぅ♪
脳内で、地元のねぇちゃんにやらせてもらったゲームの音楽が流れた。
エイリ「マリ――」
竹太郎「やめてぇ」