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第58話:振り返るよ【〃】

前回のあらすじ!

体育祭当日。

「以上をもちまして、亜如箆莉野(アニョペリノ)中学校体育祭を終了致します」



 ◇ ◇ ◇



「皆、すまなかった!」


 二日後——。振替休みの月曜日を挟んだ火曜日の一年三組教室。

 当日欠席した巴さんは、登校してくるなり五体投地した。


「まさか当日に限って両親が出張に出払い、姉も時間を違えた大学講義に大慌てで受けに行ったところで、家の猫が体調を崩してしまうなんて! 体育委員会でありながら誠に申し訳なかった!」

「仕方ねぇよ。家族の体調不良に対処できるの加藤さんだけだったんだろ?」

「そうだったんだ! ミーちゃんは8歳の誕生日に家に迎えてから毎日毛繕いをする仲で、病院に預けて自分だけ学校へ……と考えられる頭ではなかった! 本当にすまないと思っている!」


 まぁまぁ巴さん。家族が具合悪くしてるのに平常心でいる方が難しいよ。


「寧ろ、ネコちゃん放っぽって、学校来た方が、わたし、怒ったよー」

「そ、そうなのかい?」

「桐山さんの言う通りさ。事情は先生から聴いているし、僕らは家族の安否を優先した加藤さんを責める気は毛頭ないのさ。ね?」


 時生くんの問いかけに皆は、


「福多くんの言った通りだよ」

「加藤さんは何一つ悪くないよ」

「それよりミーちゃんだっけ。大丈夫だった?」


 ちっとも気にしていなかった。


「み、みんな……ありがとう……」


 巴さんは再び頭を下げた。一年三組は温かかった。


「ほらほら加藤さん。もう五体投地なんてしなくていいから。謝罪よりも体育祭の話をしましょ。ね?」

「そうだ。その体育祭はどうだったんだい? 私、まだ結果を聞いていなくてね」


 それじゃあお答えしんぜよう。あの日、学校で何があったのかを……。


「体育祭だね」


 そうだね。


「自由撮影OKだったので、録画してたんです。皆で見ましょう」


 僕らは当時をダイジェストで振り返った。



 ◇ ◇ ◇



 3年生の入場だよ。


「見ろ! 小倉奎吾だ」

「紅組を率いる3年生、怒弩寿琥(ドドスコ)・小倉奎吾だ」

「不良を名乗りながら紅組リーダーを推薦されるなり快諾した小倉奎吾だ!」

「戦鬼と謳われときながら微塵も凶暴性が見られない怒弩寿琥(ドドスコ)・小倉奎吾だ!」

「またお前等かぁぁぁああ‼‼‼‼‼ そっちから聞こえたぞぉぉぉおお‼‼‼‼‼」

「うぇっへへーい」


 前にも小倉さんを野次っていた彼らは、小倉さんが発信源に辿り着いた頃には人混みに紛れて消えていた。



「あの二人、一体何なんだろうね」

「噂によると、怒弩寿琥(ドドスコ)に助けてもらった恩義があるって、尊敬と感謝と畏怖を籠めて、誰もがほっこりする風評被害をバラまいてるそうですよ」


 感謝しているんだか、恩に唾吐いているんだか、よく分からない行動原理だった。



 ◇ ◇ ◇



 徒競走・男子の部。


「位置について! よーい……!」

「ドン! ズシャア……‼」

「あえぇぇぇええ⁉」


 不運の象徴・吉川善信くんが謎の豪運を発揮して一位となったとさ。



「キミの不運はノックアウト機能でも搭載されてるのかい?」

「吉川以外靴ひも踏んで一斉にコケるなんて誰が思ったよ?」

「吉川くん。君、実際のところは運をここ一番で解放しちゃってるから、後が不運続きなんじゃないかい?」

「そんな気はしてるよ。今年の運全部使い果たした気がする……」

「次は女子の部よ」



 ◇ ◇ ◇



 徒競走・女子の部。


「フッ……!」


 エっちゃんがぶっっっっちぎりの一位だったとさ。



「桐山くんは忍者の末裔かなんかかい?」

「昔から変わらない一般人だよー」

「一般人は瞬間移動しないと思うわよ?」



 ◇ ◇ ◇



 組体操。


「とりー。……ぷりっ」

「いぎゃぁぁぁああ」


 ピラミッドは瞬く間に崩壊してしまったとさ。



「まさか人生で絨毯爆撃を受けることになろうとは……」

「何羽飛んでたの?」



 ◇ ◇ ◇



 玉転がし。


「モグラー」

「ディクター」

「ディグ夕ー」

「うぎゃぁぁぁああ」


 突如地面から顔を出したモグラの集団に躓き、巨玉は全てコースアウト。教師陣営を破壊する大惨事となったとさ。



「モグラって集団で行動しているものなのかい?」


 知らね。


「それより先生の心配しましょ?」



 ◇ ◇ ◇



 男女混合・障害物競走。


「黄組、圧倒的大差でゴォォォオオル! 初志貫徹の卓越した身のこなしで他を寄せつけなかった彼の名はァ……!!」

「イッツミー、マ」



「これ以上はいけない気がする」


 優勝した真尚(まりお)くんの何が悪いのさ。


「誰だよ真尚(まりお)

「初めて聞いたよどちらさま?」

「この日の為に付けられたような名前しやがってからに」

「志桜里、慎みなさい!」

「一年二組・山本真尚(まりお)くんですね。私、同じ委員会なのですが、「マーリモーへの憧れからパルクールパフォーマーを目指して日々研鑽を重ねている」だそうです」

「名前の憶え違いが絶妙に憎たらしい」

「因みに、緑組の一年四組には同じ夢を抱く双子の妹・累那(るいな)さんが居ます」

「やかましいわ」



 ◇ ◇ ◇



 男女混合リレー。


「ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!」

「うわぁぁぁああ肉玉が迫ってくるよォォォオオ!⁉⁉‼‼」

「誰が肉塊さぁぁぁああ‼‼‼‼‼」

「そこまで言ってなぎゃぁぁぁああ」


 他組は時生くんの力士体型の圧に飛び退き、一年三組の独走になったとさ。



「私がアンカーで出る予定だったやつだね。当日は誰が代わってくれたんだい?」


 弘人くんだよ。


「ありがとう戸田くん。ところで福多くんって第一走者じゃなかったかい?」

「まさかアンカーで誰とも競り合わないとは思わなかったよ……」



 ◇ ◇ ◇



 パン食い競走。男子の部。


「よっと……ぱもっ。ダッ!」

「ゴォォォオオル‼‼‼‼‼」


 鳴海くんが圧倒的だった。



「パン食い競争ってジャンプなしで成り立つんだね」

「あのときのアンパン程楽な競技はなかった」


 鳴海くん、つま先立ちで届いてたもんね。


「高さ的に私もワンチャンだったな」



 ◇ ◇ ◇



 女子の部。


「せやぁぁぁああ! ブチィッ!」

「青組一年竜胆蓬子さん、まさかのひとっ跳びで食み千切ったァァ‼ そしてそのままァァァ⁈」

「ぶべぇぇぇええ」

「ぐぎゃぁぁぁああ」

「ゴールを飛び越し、教師テントに突っ込んだァァァアア‼‼‼‼‼」



「あの日の竜胆さんの跳躍は舞空術の域に達してたわ」

「ドラ●●●ールに憧れると覚えられるもんなのかね?」

「ところで、女子の部になった途端、どうして男子たちは黙りこくって見てるんだい? 桐山くんも真剣な表情で……?」


 それはね。多分だけど目に焼き付けてたんじゃないかな? 目線的におっ


「次行こう!!!!!」



 ◇ ◇ ◇



 男女別借り物競走。


「さぁ始まりました借り物競走男子の部! いち早くゴールを目指すはライダーキック木下竹太郎! 新卒新任教師四ノ山遥先生の手を引いてゴールイン! はてさてお題は……『同小歳上眼鏡女子』! 彼女は木下さんと同郷同小OGだと判明しております! お題達成です!」



「木下くん、四ノ山先生が居なかったら詰んでなかったかい? 集落育ちなんだろう?」


 おら地元此処じゃねぇだァ。


「無理に寄せなくていいからね?」


 だじゃだじゃだじゃ。


「流石に来年度からチェック入るそうですよ」

「女子の部のも二度はねぇだろうなぁ」



 ◇ ◇ ◇



「さぁ、続きまして女子の部! 最初に躍り出たのは徒競走女子最速記録・桐山永利さん! 『怒弩寿琥(ドドスコ)』副総長・野中俊成を引き連れた肝心のお題は⁉ ……『犬を飼っているスキンヘッド不良もどき』! 彼は休日率先して犬と散歩している愛犬家だとタレコミがあります! お題達成です‼」

「イェーイ」

「お題の作成者誰だァァァアア⁉‼‼‼‼」



「これほどまでにピンポイントな方が居るとは誰が思ったでしょう」

「もしかしなくても薫先生だよね作成者?」

「快眠テンションだったらしいぜ」

「あのときの小倉さん、大爆笑だったー」

「どんな感じだったんだい? 私も見たかったよ」


 こんな感じだったよ。

 笑い声に釣られて個人で撮っておいたスマホ映像をお見せする(拡散許可承諾済み)。


「ファーーーー! ボほっほホホっほ! プギャーーーーー‼‼‼‼‼」



 ◇ ◇ ◇



 騎馬戦。


「おい、あれ見ろよ」

「あぁ。あの騎馬だな」

「バイクを乗り回していると見紛える、騎馬戦姿が良く似合う怒弩寿琥(ドドスコ)の小倉奎吾だ」

「でも免許は持っていない怒弩寿琥(ドドスコ)・小倉奎吾だ」

「そもそも自転車以上は運転したことがない怒弩寿琥(ドドスコ)の小倉奎吾だ」

「免許は高卒まで待つべきだと勉学に集中している怒弩寿琥(ドドスコ)・小倉奎吾だ」

「不良グループ頭領でありながら授業を欠かさず出席している怒弩寿琥(ドドスコ)の小倉奎吾だ!」

「小学校から皆勤賞の怒弩寿琥(ドドスコ)・小倉奎吾だ!」

「いい加減にしろやぁぁぁああ‼‼‼‼‼ そこかぁぁぁああ‼‼‼‼‼」

「ぎぎゃぁぁぁああ」


 二人はとうとう捕まり、鉢巻をふんだくられたとさ。



 二人におちょくられる小倉さんには、流石の野中さんも爆笑を禁じえなかったよ。


「あれ借り物競走の腹いせもあったよな絶対」


 違いない。と、もう一度録画画面を開く。


「ダははハはハ! ウィっひひひヒ! どひゃーーーーー‼‼‼‼‼」

「笑うな俊生ーーーーー‼‼‼‼‼」

「てめぇが言うなぁーーーーー‼‼‼‼‼」


 二人が青筋を浮かべて頭を掴み合う大喧嘩は騎馬戦以上に盛り上がったとさ。



 ◇ ◇ ◇



 閉会式。


「以上をもちまして、亜如箆莉野中学校体育祭を終了致します」


 こうして、体育祭は小倉さん率いる紅組の勝利で幕を閉じたとさ。



「ここまで映しといて青組(一年三組)じゃないのかい⁈」


 巴さんの言う通り、一年生の部は9割青組で取っただったけど、「お前等の分は俺たちが取り返す」って小倉さん率いる三~二年生に総なめされちゃったよ。


「あの人信頼厚すぎるだろ‼ ……失礼、荒ぶった」


 とうとう巴さんの口調が砕けっちゃった。


「そうか……。青組、負けちゃったか……」


 まぁまぁ、巴さんも気負わないで。こればかりは仕方ないよ。


「正直な話、戦ってる姿の小倉さん見てて、勝てる姿が浮かばなかったよー」

「あれはアッチが一枚上手だったというか、相手が悪すぎた」

「他の組も、小倉さん相手に敵うわけないってぶーたれてたのさ。指示も的確だったし」

「おかげで彼、また人望が増したそうで。最早不良面は機能しなくなってるそうです」


 そりゃあ解散検討するわな。あーややこやや。

 体育祭の振り返りは、HRまで続いた。



 ◇ ◇ ◇



 そして3日後――。


「それはそうと焼肉だァーーーー‼‼‼‼‼」


 次回、打ち上げ焼肉編突入!

「ところで〝ディ●ダ〟はマズくないかい?」

「〝ディ『クタ』〟と〝ディ『グ夕』〟だよ」

「やかましいわ」


次回は1/21・17時 or 18時投稿です。気が向いた時に読んでいただければ幸いです。

それでは、せーのっ


脳 み そ 溶 け ろ


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