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第50話:増えたよ【異世界Part】

前回のあらすじ!

アルバム読んだ。

 ほぎゃぁぁぁぁぁ……‼


 お?

 翌日の異世界にて――。

 いつも通り、昼市に商品を並べていると、ベイビーの泣き声を遠くから聞いた。


「おうおう。今日も派手に泣いてんなぁ」

「ヨシさんのとこのだろ? もう26龍週(1龍週=1週間)経つのに、あの子、未だに夜泣き激しいもんなぁ。……この時間帯なら昼泣きか?」

「まぁまぁ。そう言ってやるな。『赤子のひと泣き勇者の一声』って言うだろ? 終わる時期なんざ赤ん坊それぞれなんだから気長に待ってやろうや」

「それもそうだな」


 それってどんな意味だっけ? と、すっとぼけてみせると、ゴンゾーさんが快く教えてくれた。


「赤ん坊の泣き声からは勇者の鼓舞同等の元気を貰えるってやつだ。勇者に恩のある国王さまが待望の跡継ぎに恵まれた際に作ったことわざだよ」


 優しい世界。


「野菜生活」

 と、横で山菜を置いていたエっちゃんがすかさず挟んでくる。


 ……ふふっ。


「待てよおやっさん。にしてはちょっと遠くねぇか? 道具屋ならもっと近ぇだろ?」

 と、魚を陳列していたグラさんが異議を唱える。


 言われてみれば、だった。

 ヨシさん住まう道具屋が位置するは中央広場西通り入口に対し、泣き声が聴こえてきたのは西通りの奥の方。道具屋の子ならもっと響いてくるはずだ。


 待てよ……? ベイビーに西側……?

 この情報、どっかで聞いたのと合致するぞ?


 僕は既聴感の正体を探るべく、記憶の奥底を手繰り寄せた。



 ――おねえちゃんになるのー。

 ――近いのー。

 ――広場から西に行ったところにあった。



 記憶の整理がついたところで、西口をちらり——と見やる。

 西通りの奥の方には、リコちゃんの住まうお家があった。


 もしかして――、

 と、真相にたどり着きそうになったところで、突風が吹いてきた。



 その瞬間、黄金の軌跡がお腹の位置を横切った。



 稲妻を纏った金髪の青年だった。

 黒眼に青い瞳を宿したその青年は、僕と一瞬目を合わせたが気にも留めずに、そのまま東口へと走り去っていった。


 その直後、ドォン――! と、今度は落雷音が広場に鼓動した。


「なんだ? 春雷か?」

「にしては、何処も降ってなさそうだぞ」

 と、青年の通過を見ていなかった村人たちは山の方を見上げている。


 そこへ更に、キキィィッ――! と、急ブレーキ音が鳴り響いた。


 コウくんだった。

 コウくんは酷く慌てた様子だった。


「おうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおううおうおうおうおう!」


「落ち着けコウ。先ずは深呼吸しな。吸って〜、吐いて〜……」


 グラさんに宥められ、コウくんは深く深く……砂埃が舞うくらい呼吸した。


「落ち着いたか? じゃあ、話してみろ」

「おー……」


 コウくんは一拍置いて、改めて口を開いた。



「男の子だったよ」



 言われた瞬間――、確かに広場の空気が止まった。

 が、言葉の意味を理解した途端、瞬間最大風速を観測した!


「産まれたのか!?」

「おー……!」

「うおおおおぉ! こうしちゃいられねえ! 祝包丁打ってくる‼‼‼‼‼」

「親父ぃ! リィネさん男児産んだってよ! 出航準備だぁ!」

「言われずともだぁ! 最高の黒王鯛獲ってくるぞぉぉぉぉおおお‼‼‼‼‼」


 グラさん、コクオウダイって?


「この村で代々獲ってる祝魚だ。男児が産まれたら黒王鯛。女児だったら白妃鯛だ」


 めでたいね。


「んはははは。面白ぇ言葉遊びだな。今度別のも教えてくれよ。つーわけで他の漁師にも声掛けてくるぜ! 人海戦術必須なんだ! またな!」


 グラさんは指を二本、ピッと立てると、漁師が多く住まう南口へと走り去っていった。

 そこへ今度は、エっちゃんが話しかけてくる。


「たっくん。ちょっと今から、山ミクァン採りに、また山、潜ってくるねー。お昼は先に、食べちゃってー」


 言うや否や、エっちゃんはさっさと籠を携えて、広場を出て行ってしまった。


 ミクァンかぁ。

 ……ふふっ。


 それにしても、皆どうしたのだろう? グラさんにエっちゃんを始め、食材職の面々が急に休憩返上で仕事に戻り出したではないか。


「タケタロウや。並べ終えたなら追加だ。ホウェン草とコマッツナを採るよ」


 状況を飲み込めていないところへ更に立て続けに、おばあちゃんまでもが仕事即再開を言い渡してきた。

 いい加減なほうれん草と小松菜の名称に吹き出しそうになるが、もう笑っていられない。悶え散らかす腹筋を宥めながら理由を訊く。


「そういえばタケタロウは初めてだったね。知らないなら混乱して当然だねぇ」


 おばあちゃんは僕の心境を察してくれた。


「この村ではね、子宝に恵まれたら皆で祝ってやるのさ。鍛冶屋だったら祝包丁、儂たち農家や山菜採りといった食材関係の者は産後に適した食材を振舞って母親の体調を支えてやるんじゃよ。母親の健康あってこその赤子の健康じゃ」


 村全体でお世話しているんだね。


「左様。村というのは一つ気を抜けば直ぐ人が出て行ってしまう。だから少しでも居心地を良くしてやらねば、やがて消えてしまう運命じゃ」


 地方の悲しい運命だね。


「と、まぁ。ああだこうだ言うてみたが、それ以上に何より——、」


 何より?


「赤子は何人産まれても可愛がりたくなるからのう」


 言えてるー♪


「ほっほっほっ」

 腰に両腕組んで爆走するおばあちゃんを、僕は台車を引きながら追いかけた。



 ◇ ◇ ◇



「あら、タケタロウくん。ご無沙汰ね。元気してた?」


 収穫して一旦広場に戻ってくると、アフノさんがいた。

 アフノさんは世界を巡り回る交易商人。一年の半分を私有船の中で過ごす、中々お目にかかれないレア村人だ。


 久しぶりアフノさん。今日も綺麗なアフロだね。


「ありがとう。日々の手入れの賜物よ♪」


 アフノさんは得意顔で自前のアフロを強調する。


「聞いたわよ。村長の手紙によれば、キエさんの跡継ぎに名乗りを上げたそうじゃない。キエさんが作る野菜は人気商品だから、私からもお礼を言わせてちょうだい。受け継いでくれてどうもありがとう」


 どういたしまして。


「ところで――、昼時にしては随分と静かね。帰ってくる際、漁師たちが沖へ出ていくのも見えたし……何かあったの?」


 そっか。アフノさんは帰ってきたばかりでまだ知らないもんね。

 産まれたんだよ。ちょうどさっき。リコちゃんに弟が出来たんだって。


「あら!」

 と、アフノさんは満面の笑みで驚愕した。


「遂に産まれたのね! おめでたいわ! 早速リコちゃんが好きそうなおもちゃ見繕ってこなくちゃ! お土産に何個か買ってきたのよ!」


 リコちゃんも祝うんだね。


「当然よ」

 と、アフノさんは続ける。


「リコちゃんからすれば、家族が増えたと同時に、お姉ちゃんデビュー日でもあるもの。何かしらで応援してあげなくちゃ。それに——、しばらくは寂しい思いをするでしょうから……」


 寂しい?

 言いながら儚げな表情を浮かべた彼に、どういうことか問いかける。


「赤ちゃんが産まれるということはね、なんでも良いことばかりじゃあないのよ。ほら、親御さんは当分の間は産まれてきた下の子に構いっぱなしでなければならないから、上の子と一緒に遊んであげられる時間がどうしても限られちゃうのよ。だからその分寂しさが紛れるように、他の人たちと楽しめる何かを与えてあげたいの」


 へー。


 アフノさんには弟がいる――と、交易船に誤乗したときに彼から聞いたことがある。

 きっと彼にも、親御さんに甘えたくても我慢せねばならない――、そんな時期があったのだろう。僕は一人っ子だからなんとも言えないが。


 ……いや、待てよ?


 昔々、小学校低学年の頃だったか。じいちゃんとばあちゃんが揃って急用で家を空けていた日があった。


 同行できない用事だったので仕方なく独り留守番をしていたのだが、最終的に孤独感に耐えきれず、泣いて遥ねーちゃんの家まで歩いてったんだっけ。そして夕暮れ時に迎えに来てくれた二人に謝られながら思いきり抱きしめられたんだ。


 アフノさんが懸念した、リコちゃんにいずれ来たる〝寂しい〟とは、きっとあのことかもしれない。


「そうだわ」

 と、アフノさんはパンと手を合わせた。


「タケタロウくん、一緒におもちゃ選んでくれない? 年の近い子がいた方が気に入ってもらえそうなの見つけられそうだわ」


 僕は構わないけど……おばあちゃんにも訊いてね。


「だそうだけど、いいかしら?」


 アフノさんは台車横のおばあちゃんに視線を送る。

 おばあちゃんは殆ど間を置かずに口を開いた。


「リコちゃんを優先しておやり」


「決まりね。キエさん、タケタロウくん借りてくわね。それじゃ、行きましょ」


 うーい。

 僕はアフノさんの話に少しの理解を示せながら、彼の船を目指した。



 ◇ ◇ ◇



「獲ったどぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


 どごぉん。ごろどさ。ばしょん。ふわっ。ざぶぅん……。


 港に着くや否や――、僕らはちょうど帰港してきたマッチョッチョの出オチ咆哮を諸に受けた。

 僕とアフノさんの髪の毛が盛大に反れる。漁師たちが吹き転がされて山となる。漁港の出っ張ってるやつにまだ結ばさっていなかった漁船は降り損ねた漁師ごと沖へと流され、交易船なんか一瞬浮かんだ。


 グラさんたち、おかえり。早かったね。


「おう、今回は比較的近くだったわ! アフノさんもお久っす!」


「久しぶりグラン。事情は聴いているわ。その様子じゃ、立派な黒王鯛が獲れたみたいね」


「おう! 粋なのが獲れたぜ! ここ一番の大物だ‼‼‼‼‼」


 と、マッチョッチョが見せてくれた黒王鯛はマッチョッチョの両腕から溢れんばかりの巨体で、何より黒かった。


 鯛って、こんなにデカくなるんだね。


「そこらの大型魚顔負けの巨体から現王子が生まれた際に献上されたそうだぜ。その王子殿は今や空腹のダイナゴンベアーをも打ち倒す才色兼備になっているそうだ」


 祝魚効果様々だね。


 それにしても、ダイナゴンベアーか……。

 大納言アイスといい、〝大納言〟とついたものはどうして強そうなのだろう。


 まぁ、いっか。

 ところでマッチョッチョ。全身豪い濡れてるね。波でも被った?


「釣ってる最中に落ちた!」


 あじゃぱあ。


「珍しいわね。大物とはいえ、アラールさんともあろう人が魚に競り負けるなんて」


「勝手に負かすなァァァアア‼‼‼‼‼」

 戻りつつあった毛髪がまた派手に反れてしまった。


「カモメに乱入されたんだよ。格闘中に。横槍入れんなって親父が咆哮浴びせたところへ引っ張られたんだ」

「だから直接掴んで船に引き上げてやったぜ! ざまぁみやがれぇぇぇええ‼‼‼‼‼」


 釣りは?


「釣りは?」

「訊いたら負けだ」


「ということだ! それじゃ、俺はちゃっちゃと届けてくるぜ! 魚は鮮度が命だからな! ハァァァアア‼‼‼‼‼」


「待て待て待て行くな行くな。俺が持ってくから」

 と、グラさんがマッチョッチョを呼び止めた。


「なんでだァ!?」

「あんたの声は響くから、リィネさんの身体に障るだろうが!」


「あ。はい」

 息子のド正論一言で、マッチョッチョは大人しくなってしまった。


 ミノタウロスのときもだけどマッチョッチョ。子どもの主張は素直に聞くよね。


「ところで、タケらは何しに来たんだ? アフノさんの忘れ物?」

「リコちゃんへのプレゼントを探しに来たの。お姉ちゃん祝いよ♪」

「それなら俺も手伝いますよ。そんで一緒に行きましょ」

「あら、ありがとう。『三兵集えば獣魔に適う』ね♪」


 ということで、女児へのプレゼントは野郎三人で選りすぐる運びとなった。

 字面からして『三人寄れば文殊の知恵』みたいなものだろうか?

 今度訊いてみよう。忘れていなければ。



 ◇ ◇ ◇



「おうおう。派手に並んどんなぁ」


 おばあちゃんと合流し、いざリコちゃん宅を訪ねると、村人が卵だとか産後に良い食品を携えて玄関に列を成していた。


 実はアフノさんと出会う前にも訪れてみたのだが、玄関が御祝儀等を贈らんと並ぶ者でうじょんうじょんだったので、一旦広場まで引き揚げたのだ。


「じゃが、さっきよりは少のうなっとるよ。リィネも気疲れしとるだろうし、早く渡して休ませてやろうじゃないか」

「それはそうとキエさんも疲れてない? あなたも無理できないお年頃だし、帰っててもいいのよ?」

 と、気遣いを見せるアフノさんに、「無問題じゃ」と、おばあちゃんは言った。


「同性がおった方が、リィネも落ち着くじゃろうて」

「それもそうね」


「おぅい。俺たちの番が来たぞぉ」

 と、グラさんに促されて、リコちゃん宅にお邪魔する。


 中にはリコちゃんと、リコちゃん、リィネさん親子と同じ角持ちの銀髪女性と、なんかコウくんがいた。


 そして、テーブルには、今にも雪崩そうな祝品の山が築かれていた。


「しゅうぎー」


 あ、落ちた。

 悲鳴をあげた御祝儀を拾いに行くコウくんを傍目に、アフノさんが挨拶を決める。


「ハァイ、レイネさん。お孫さん二人目のご誕生おめでとう! リィネちゃんには代わりに言っといてちょうだい。奥でお疲れでしょうから」

「ありがとうアフノさん。あの子も喜ぶわ」


 無事出産を終えたリィネさんは、奥の部屋で休んでいるっぽい。


「リィネちゃんによろしくね。リコちゃん! これプレゼント! お姉ちゃん応援してるわよ♪」

「わーい。アフノさん、ありがとー」


「レイネさん。黒王鯛切り分けて持ってきたんすけど、冷蔵庫入ります?」

「…………一旦うちで預かるわ」


 と、リコちゃんのおばあちゃんもといレイネさんがダメ元顔で開けた冷蔵庫をさり気なく覗いてみると、最早御祝儀を入れる隙間すら無かった。


「入れるな」


 ところでリコちゃん。男衆僕らしか見えないけど、お父さんは?


「お母さんといるよー」

 と、彼女は奥のドアを指差した。

 やはり伴侶が同席している方が安心感も違うのだろう。出産となれば尚更だ。


「おや? タケタロウ少年にグランにアフノじゃないか」


 と、未知の感覚に耽っていたら。そこへなんと、東門番のナイスガイ・リグレイさんが奥のドアから現れたではないか。


「あら、リグレイさん。ご無沙汰しております」

「東門以外で見るの久しぶりっすね。リィネさんはどうですか?」

「やぁ皆の衆。祝に来てくれて感謝する。どうもありがとう。リィネなら安定しているよ。今は息子と談笑している」


 じゃあ、今はクールに去った方が賢明だね。

 じゃなくて。


 二人がナイスガイと吞気に会話する中、僕は思い切って訊いてみる。


 ナイスガイさん、どうしてそこから出てきたの?


「それは孫のベビーベッドを設置していたからだ」


 はえ~っ。

 ナイスガイさん、リコちゃんのおじいちゃんだったんだね。


「おじーちゃんなのー」

 と、横から失礼してきた孫娘ちゃんがおじいちゃんの脚に抱き着く。身長差凄ぇや。


「おじーちゃん、何センチー?」

「180……幾つだったかな?」

「ホントに50代かよ。身長といい筋肉といい……」


「おじーちゃん。おとーと、もう一度、見ていーいー?」


「ちょっと待ってなさい」とナイスガイは奥部屋へと入ると、少しして戻ってくる。


「いいそうだ」


「わーい」と中へ入っていくリコちゃんの後ろをなんかコウくんもついていく。


 が、間もなくリコちゃんが戻って来て、


「たっくんさんもー」

 と、僕を引っ張ってきたので、されるがまま奥部屋へと連行された。


「あら、タケタロウくん。来てくれてどうもありがとう」


 リィネさん、お久しぶり。ご出産お疲れ様です。


 和やかに迎えてくれたリィネさんは上体を起こして、隣に座る旦那さんと談笑していた。

 さっきまで出産に体力を使っただろうに、もう起き上がっている。これが普通なのか、リィネさんが特別頑丈なのか、種族差によるものなのかあるいは……?


「キミがタケタロウくんか。こうして会うのは初めまし——」

 と、振り向いてきた旦那さんは僕と目が合うと、言葉を途中で詰まらせた。


 その顔を見て、僕もあっと気付く。

 コウくんの「産まれたよ」直前に、僕の真ん前を横切った〝稲妻の青年〟だった。


 この人が、リコちゃんのお父さんだったんだね。

 ということは。稲妻さんはリグレイさんを呼びに走ってたんだね。


 稲妻さんも僕が先程すれ違った子と気付いた様子。お互いに「あなた/キミかぁ」って顔で、お互いに無言で合点がいく。


「あら、あなた。実は知り合いだったやつ?」

「いんや。初対面だけど、初対面じゃないというかなんというか……ああい」

「ふふっ。おかしな人♪」


「たっくんさーん。おとーと、見よー」

 と、割り込んできたリコちゃんに手首を掴まれ、自己紹介もままならぬまま、弟くんと対面する。

 大人の腕にも満たない身体の弟くんは淡い金髪だった。右側頭部……というよりおでこの右部分からはちっちゃい角が生えている。


 それにしても……こんなちっちゃい身体だけど、こんな大きい生命がリィネさんのお腹に入っていたのか。

 人体って不思議。



 あ、目ぇ開いた。



「え!? ホントに!? 見たい見た……あいたたたた……」

「あーあーあー。無理しないでリィネ。あぁでも見たい……」


「おー……」

 我が子の開眼見たさに荒ぶるリィネさんと、それを旦那さんが宥めつつも好奇心を抑えられないでいると、コウくんが二人の前に出た。


「おー……」

 コウくんは閉眼してみせると、


「おー……」

 また目を開いたのだった。


 ……ふふっ。

 皆でコウくんを撫でた。


「リィネさ〜ん……!」

 と、そこへカゴいっぱいに山ミクァンを詰めたエっちゃんが襲来(かちこ)んできた。


「山ミクァン、いっぱい、採ってきたから、食べてぶべー」


 コケた。

 山ミクァンは部屋の隅からベッド下までダゴダゴダゴ……と散らばってしまった。


 すると――、ベッドの下からデッカい蜘蛛がミクァンを抱えて現れて、

「サンゴー」

 と、鳴いたのだった。


「あー。おじーちゃん、クモだー」

「おや、〝産後蜘蛛〟か。子どもが産まれた家に現れる益虫だね。見かければ向こう三年無病息災が保証され、〝おたんこ風邪〟も小さいうちに掛かると言い伝えられているんだ。大人になってから掛かると酷い目に遭うからね。もちろん掛からないに越したことはないがな。さぁ、外に帰してあげよう」

「ガブリンチョ」

「痛ってぇ‼‼‼‼‼」

「お義父さん‼」


「タケタロウや。そろそろ帰るよ。おや……クモ」


 僕を連れに入ってきたおばあちゃんはクモに気付くと、グワシ――、と掴んで、部屋を出て行った。そのときのサンゴグモの宇宙を目の当たりにした小動物の顔といったら!


「益虫って、なんだっけー?」


 益虫も鷲掴まれる日が来ようとは思うまいて……。

 それよりも、エっちゃん。ミクァン拾うよ。長居し過ぎちゃった。


「えー? その前に、赤ちゃん、見たーい」


 全くもう、しょうがないんだからぁ。


「わーい」

「わたしも、拾うー」

「おー……」


 二人とも、どうもありがとう。


「タケタロウや~……」


 少々お待ちを~。



 現世時間・四月の異世界にて――、

 第二の故郷で、新たに仲間が増えました。

書いたッ! 第2部完!

というわけでしばらく休みます! なるだけ早く帰ってきますので待ってて下さると幸いです!

それと、お気に召していただけましたら、あとがきの下の広告のさらに下にある☆☆☆☆☆のクリック評価等宜しくお願い致します! 感想があると尚幸いです!


それでは、最後にあの言葉を! せーのっ!


脳 み そ 溶 け ろ

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