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第27話:引っ越すよ【現世Part】

1〜26話までのあらすじ‼


木下竹太郎、事故って死にかける‼

「未成年を看取るのはやるせねぇ」女神の提案に乗り、身体完治までファンタジー世界で仮暮らし‼

身体が治る!! いきなり現世帰還‼

「このままサヨナラは寂しいや」「じゃあ、二つの世界行き来出来るようにしとくわ」

現世と異世界、二つの世界の往来権獲得‼

 3月某日……

 桜が舞っていそうな、舞っていなさそうな地元の小学校、体育館にて。


「木下竹太郎くん。卒業おめでとう!」


 あざーっす。



 ◇ ◇ ◇



 ということで小学校を卒業した数週間後――、定期通院を終えた僕は、進学先を目指して朝一の新幹線に乗った。



 ◇ ◇ ◇



 ピンポンを鳴らすと、程なくして短白髪の優しい顔立ちのおじいさんが出迎えてくれた。


「おぉ、竹雄に竹太郎くん。遠路はるばるご苦労さん」


「よう永治郎。この子を下見に連れてきた先月来だな」

 祖父・竹雄じいちゃんが僕の左肩にぽん、と手を乗せる。


 新幹線に揺られること数時間後――。ようやっと進学地に着いた僕らはまっすぐ居候先の「桐山永治郎」宅を訪れていた。


「まぁ、とにかく入りな。茶、出してやる」


「じゃ、遠慮なく」とじいちゃんが先行して玄関に上がり、僕も靴を脱ぐ。


 桐山さんの家はアパートのように部屋が幾つもあって、トイレと風呂、洗濯機は共有という、謂わゆる下宿住宅だった。


 出されたお茶を、じいちゃんは丁寧な所作で一口飲む。


「しかし……、静かだとやはり寂しいものだな。嘗ては来れば誰かしらの下宿生が居て、飲み会に巻き込んでは騒いだものだ」


 じいちゃんの言う通り人の気配はない。なんでも、年齢的な体力の衰えと、奇しくも僕同様――息子夫婦に事故で先逝かれてしまったとのことで、唯一意識を取り戻した孫娘の世話に尽力を注ぐべく下宿を辞めたのだそうだ。その孫娘は桐山さんの奥さんたる祖母と買い物に行っているという。


「そうだったそうだった。貴重な休みにお前が宅飲みに来れば、部屋の前を通りかかった学生にこれでもかと驚かれていたなぁ」


 二人とも、帰ってくるのが珍しい類の仕事だったらしい。


 僕が感心している間も、祖父組は思い出話に興じる。


「――んで、騒ぎを聞きつけた他の子らまで覗いてくるものだから、竹雄が落ち着けねぇって言い出して、ツマミ持って混ざれと言い出すのが常となったものだ」


「思い出した。あいつら、物珍しそうに見てきといて、いざ誘われると冷や汗だくだくで入ってきてたもんな。途中から進んで混ざるようになったけど」


「あの子らの話がこれまた面白かったんだよなぁ。本当に可笑しくて腹抱えて笑って……、気がつけば彼らの話を肴に飲むようになっていた」


 どんな話を聞いたの?


 じいちゃんがお茶を一口煽り、返してくれる。

「学校の校庭に作った雪だるまの顔を教師にしたら、そいつに見つかって鬼ごっこに発展したとかあったな」


 なにそれ見たい。


「その教師には絶対マイクを握らせてはならないとかな」


 なにそれ知りたい。


「地声が爆音過ぎて学校中の窓ガラス割っちまうんだと」


 なにそれ既視感。


「既視感?」


 声だけで人々を吹き飛ばすマッチョおじさんを知ってるの。


「声のデカいマッチョ? そんなの地元にいたか?」


 それはね――

 と、アラールのマッチョッチョを話題に出そうとして口を閉じる。僕が現界と異世界を行き来していることは僕にしか証明できないのだから、二人に言っても「?」で終わるのがオチだ。


 なので、適当に嘘と本当を織り交ぜて、でっち上げることにした。


 小学校の修学旅行先で、咆哮だけで地元民の山を築くおじさんに会ったの。


「「何それ超会いたい」」


 じいちゃんと桐山さんは声を揃えて興味津々だ。


 個人経営の鍛冶屋に見学に入っていると、うちの包丁直してくれぇ‼ って咆えながらやって来たそのおじさんの所為で、中にいた従業員みんな、壁際まで吹き飛んだの。


「ぶふはははは」

「ふはひゃひゃひゃ」


 二人は年甲斐もなくゲラゲラ笑う。ここまで笑ってもらえるとこちらも喋りがいがあるというものだ。

 僕は調子が乗って、更に風呂敷を広げた。


 咆哮の軌道にあった店の備品も、大小構わず吹っ飛んだの。


「ぶひゃひゃひゃひゃ」


 鍛冶屋の大将だけは、ギリギリ耐えてたの。


「えっひゃっひゃ」


 僕もなんか無事だったの。


「どぅひゃひゃひゃひゃ」


 おじじ二人は完全に抱腹絶倒状態に陥った。


 その様を愉しんでいると、玄関の方から「ただいマンゴージュースー」の少女の声と共に、荷物を置く音がした。


 きっと出かけていた孫娘さんだろう。これからしばらく同居人となるのだから、挨拶をしっかりとしなければ。


 そう僕は気持ちを切り替えて、おじじ二人をほっといて、入口に向き直ると――、


「爺ちゃーん。靴多いけど、誰か来てんのー……って、あら?」


 よく見知った顔が、顔を覗かせていた。


 耳を劈くほどの沈黙が僕と彼女を包む。


 僕は人差し指を伸ばして、それをのらっと彼女の前に出した。


 それを見た彼女は、ほとんど間を置かずに人差し指をぴっと立てると、僕の人差し指に指先を合わせた。

 ●・T~。


 C~。


「わたし、桐山永利。よろしく~」


 僕、木下竹太郎。しくよろ~。


「いえーーーーい」いえーーーーい。


 僕はえっちゃんと百裂指を繰り出し合った。

 ぴすぴす、ずびずび、ぴすずびび。

ごっ。

「鎖骨当たった……」

「どんマイケル」


色々思うところがありまして、今後は【現世Part】【異世界Part】とサブタイトル後ろにつけようと思います。いつの間にか消えてることがあるかも知れませんが、区別に役立ててください。

それでは、せーのっ


脳 み そ 溶 け ろ

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