第14話:でっっっっっっっっっかいよ
前回のあらすじ!
海戦が開戦した。
――が、海戦は直ぐに終戦しましたとさ。
ギダングルが手を振り上げて、アフノさんが再び拳に魔法を纏い、船員さんたちが猟銃を構え、砲台に火をつけようとしたその瞬間――。突如海中から現れた巨大な手がギダングルの頭を鷲掴むとドンバッシャーンー! と海面に叩きつけ、立て続けに取り巻きたちも海中に引きずり込まれたと思ったら気絶した状態でまた浮かんできたのだ。
一瞬すぎる蹂躙に僕らが呆然としていると、そいつは現れた。
ギダングルの全長がアフノさんの船一隻相当だとすれば、そいつは船三隻分に相当する、子どもと力士くらいの体格差がある超巨体な大怪獣だった。顔なんかあまりにも高い位置にあるものだから逆光で良く見えない。漫画だったら確実にお腹の辺りで見切れているか最悪背景と間違われるタイプ。
でっっっっっっっっっかいなあ。
でっっっっっっっっっかいねえ。アフノさん。
そう言って、顔を見やると、アフノさんは先程と同様「宇宙ぬこ」の状態になっていて、こう言ったのだ。
「デカすぎて、逆に気づかなかったわ……」
そっかぁ。
…………。
そうだよねぇ……。
そうこう思っていると、大怪獣が口を開いた。
「人間さぁん。大丈夫ぅ? 怪我してなぁい?」
超巨体に見合わぬ、なんとものらっとした、間延びした口調だった。
こんな人、いるよね。
「な、なんだこいつ⁉ こんなデカブツ、見たことも聞いたこともながぼぼぼぼ……」
「会話に、割り込まなぁい」
ギダングルはようやく浮上してきたが、小物感極まりない台詞を吐きながら、また沈められてしまった。
怪獣さん、人と人との会話に横槍入れちゃ駄目だよ。
ワイルドじゃないよ。
「あふん」
僕の一言が自尊心の崩壊に繋がったのだろう。性懲りもなく浮上を試みていたギダングルは白目を剥いて、がっくしと力尽きてしまった。
「……で、大丈夫ぅ?」
大怪獣さんが改めて、怪我の安否を訊いてくる。
うん。大丈夫ぅ。
「そっかぁ」
大怪獣さんは、「よかったぁ」と言って、続けた。
「最近、此処らで暴れてる奴がいるって噂が流れてたから来てみたんだけどぉ。こいつらだったみたいだねぇ。こいつらは、僕らが責任をもって、連行するよぉ」
辺りを見回すと、気絶していた小怪獣たちを、いつの間にか、大怪獣さんの仲間っぽい見知らぬ怪獣たちが取り押さえていた。彼らが取り巻きを引きずり込んだ張本人たちのようだ。
「うちの種族が迷惑かけちゃって、ごめんねぇ」
いいよいいよ。
「……そうだぁ。お詫びとして、僕が君たちの目的地まで送ってあげるよぉ。こいつらは僕の部下さんたちで十分、連れていけるからさぁ」
だってさ。アフノさん。
「…………あ、うん。そう言うのだったら、お言葉に甘えさせてもらおうかしら。みんな、持ち場に戻って~!」
船は大怪獣さん先導のもと、再び動き出した。
「前が見えねぇ」




