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第10話:出たよ

前回のあらすじ!

かくれんぼ。

 もーりはあーるくーよー。どーこまーでーもーーーーい。


 本来の歌詞をすっかり忘れた曲をいい加減にリアレンジしているところに、エっちゃんが反応する。


「森、歩くのー?」


 歩くの。


「どうやって、歩くのー?」


 よっこらせって根っこを引っこ抜いて、根っこを器用にわさわさ動かすの。


「ムカデみたいだねー」


 そんで、百年に一回、村一つ分の大規模で移動するの。


「地元の人は、どうなっちゃうんだろうねー」


 死ぬの。


「空気不足かなー?」


 だけど、死なないために、光合成するの。


「植物だったんだねー」


 美味しいよ。


「食べないでー」


 そう思っていた時期が、モンスターにもありました。


「不味かったんだねー」


 だから森さんたちも、安心して旅行に行けるの。


「観光目的なんだねー」


 その国の名物食べたりしてるの。


「何食べてるのー?」


 その土地の栄養分いただきますツアーなの。


「満喫してるねー」


 あと、その土地の森と座談会してるの。


「何話してるのー?」


 何故この星は存在し、人は生まれたのかについて、話してるの。


「哲学だねー」


 サルが人間の先祖になったからなの。


「ウキウキ言ってたんだねー」


 アニョペリノとも、言ってたの。


「飽きたんだねー」


 だって、キノコが足元にあるんだもの。


「あー、ホントだー。たっくん、足元しつれーい」

 エっちゃんが僕を退けて、足元のキノコをもぎ、背負っている籠にふぇいする。


 今日、僕はエっちゃんと、約束したキノコ狩りに西の森へ来ていた。朝ごはんを食べた後の時間帯も相まってキノコ狩りには絶好の晴天で、山の木々たちも楽しそうに桜花桜花している。


「たっくん、キノコ見つけるの、上手いねー。うっかりしてると、わたし以上に収穫されそうだよー」


 そんなこともあるさー。


「あってたまるかよー。わたしだって歴長いんだぞー」

 言いながらエっちゃんはポイポイとキノコをむしり取る。どうやら近くにあったみたい。やっぱりエっちゃんはすごい。


「褒めても何も出ないぞー」

 そう言ってエっちゃんは飛びきり大きいキノコを僕の籠にジャストミートで投げ入れる。コントロールいいね。


「えへへー」

 再び巨大キノコがナイスシュートされる。大きいサイズを中心に選別してくれているが、最終的に無人直売所に並べられるのだから無意味なのは黙っておこう。


 あ、そうだエっちゃん。一昨日、東側の森でスイカを見つけたんだ。時間があったら、採りに行こうよ。


「こっちでは、スウィカっていうんだよー。ちなみにそれ、一玉だけだった?」


 スウィカなのかー。エっちゃんが言うのだから、こっちではスウィカなのだろう。


 ふふっ――と笑いながら、僕は首肯する。


「だったらそれ、モンスターだと思うよー。『ウォーターチャージャー純』ってやつー」

 どこかで聞いたことのある、パチモンみたいな名前だった。


 どんなやつなのー?


「夏にだけ出てくるモンスターでねー。夏になると、スウィカに化けてじっとしててね。食べようと近付いてきたところを、バリボリ食べちゃうんだよー」


 おっかないねー。


「でもたまに。夏が終わってるのに気付かないで、春までいる間抜けがいるのー」


 間抜けー。


「あーでも……。此処のスウィカって全然甘くないんだけど、ウォーターチャージャー純は凄い甘くて美味しいんだよねー。獲りに行くのもアリかもー?」

 と言ってエっちゃんは涎を垂らす。


 スウィカって、甘くないの?


「甘味はほとんど無いよー。でも、水分は凄いから、夏バテ防止で食べたりするー」


 甘かったら、いいのにねー。


「そうだねー」


 ……ウォーターチャージャー純と普通のスウィカ、上手い具合に交配すれば甘くなるんじゃなかろうか? その気になれば出来そうではありそうだ。


 まあ、いっか。


「というか、たっくん。よく無事だったねー。ウォーターチャージャー純って、凄い強暴なんだよー?」

 エっちゃんがキノコを採り終わり、膝についた土を掃いながら言ってくる。


 そうなの?


「そうだよー。さっきはじっとしてるって言ったけどそれはほんの一部で、大体は、獲物を見つけたら、凄い速さで、何処までもツル伸ばしながら追い掛け回すんだよー。手足をにょきって生やしてさー。そんで、獲物にタックルかましたら、ズッコケたところに圧しかかって、バリバリゴスゴスアビバビバって、食べてるとこ、見たことあるー」


 えっぐいねー。


「まあ、採ったけど」


 採ったんだねー。

 どうやって、採ったのー?


「ツルに矢をぱしゅーって。純はツルが弱点でねー。ツル切ったらおヴぇぇえって、暫く悶えてから、あふんって力尽きた」


 死に方、えっぐいねー。


「えぐかったよー」


 でもお味は?


「美味でした!」


 良かったねぇ。


「あー。なんか、話してるとまた食べたくなってきた。……キノコもなんやかんや採ったし。よし! じゃあ獲りに行こう! ご馳走してあげる!」


 わぁい。


「そうなったら善は急げだ! 時期も時期だし、早いとこ行こう!」

 涎を拭いてエっちゃんは、上るのがちょっと大変そうな段差をひょいと一飛びで上り、上から手を伸ばしてくれた。


「たっくん。早くー」


 はいはーい。


 エっちゃんの手を掴んで、引っ張ってもらいながら、段差に手をかけた。


 その時、僕は見た。


 彼女の背後に、ミノタウロスが現れた瞬間を。

竹太郎のお手手「涎でぬちょっとするぅ」

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