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第8話 みんなでお買い物④

「ねえねえ、あの人たち知ってる?」


「知らないけど……どうかしたの?」


 男女の会話が聞こえて来る。

 どうやら女性が俺たちの方を指さしているようだった。 


「さっきね、カップル割引とか言って腕組んだりしてラブラブです! みたいなことやってたのにそのキャンペーン終わってて意味なかったんだって(笑)」


「ぐふ……」


 姫野が机に伏す。


「え? なにそれ。面白過ぎるでしょ」


「しかも、女の子二人も連れててさ、男の人絶対自分モテてますアピールしてるよね」


「ぐふ……」


 俺も机に伏す。

 くそ、泣きそうだ。


「モテてますアピールとか(笑)。それに乗っかってる女の子もヤバいね」


「ぐふ……」


 凛音ちゃんも机に倒れる。

 

 ああ、どうしてこうなったのだろう。

 ただ、カップル割引を使おうとしただけなのに……。


 確かにさ、普通に考えて俺もおかしかったとは思うよ。

 わざわざ腕組んだり、しかも二人とも!

 だからその部分は笑われても仕方ないと思うよ。

 でも! なんでキャンペーンが終わってるんだ!?

 そもそも俺がここに来たのはキャンペーンのためじゃなかったのか!?

 なんでだーーーーーーーーー!!


「……颯太君」


「……なんですか、戦犯の姫野さん」


「にゃ!? その呼び方はやめなさい!!」


 俺たちは顔をできるだけ、上にあげず横を向きながら話し出す。

 顔を見せれば笑われること間違いなしだからだ。


「にゃ!? みたいな可愛い声出してるときじゃないです先輩。立場をわきまえてください。これ一体どう収集つける気なんです……」


 今の状況を簡単に説明すれば、最悪の状態なのだ。

 注文をするときに腕を組んでカップルに見せようし、さらにはキャンペーンそのものが終わっていて、他の人たちからも笑われた。

 そんなことをしでかして、なにも思わないわけがなく、現在進行形で羞恥心が膨らんでいる。

 しかし、この店から逃げようと帰ろうと思っても商品がまだ届いていなく、帰るに帰れない状態なのだ。


「だからそれを話そうとしてるんじゃないの……」


「話し合うもなにも、もうおしまいだよ。これだから陽キャどもは嫌いなんだ……」


 リア充なんか爆発してしまえばいいと切実に願う。


「……それは一旦置いておきましょう。それでなんだけど、こうなったらいっそのことカップルですアピールをしようと思うの」


「!?」


「だって、そうすれば本物だって思われるかもしれないじゃない。あの人たち絶対私たちのことを勘違いしてるわ……」


 今更カップルなど演じる必要などないんじゃなかろうか。

 というか演じたくないんだが……。


「さっきからずっと思ってるんだけど、なんでわざわざ今日ここに来たんだよ。カップル割引を使うにしても俺じゃなくてももう少しましな奴と行けばよかったんじゃないのか?」


「……」


「なんだよ、黙ったりして」


「先輩ってそんなこともわからないんですか?」


「?」


「これだから先輩は先輩のままなんですよ」


「なにその悪口!? 俺自体がダメなの!?」


 すると姫野が。


「……そんなの少しでも近づけばあなたに振り向いてもらえるかもしれにないと思ったからに決まってるでしょ……」 


 恥ずかしそうにしながらそうつぶやく。


「……え?」


「ああもう! いうつもりなんかなかったのに!!」


 顔を手で隠しながら、体を伏せる。

 

 なんだろう。

 気持ちが込上げて来る。燃えるようにたぎってくる。

 この気持ちは……。


 そんな時。


「お待たせしました。ラブラブストロベリーとバナナのパフェ一つと大好きチョコレートとフルーツポンチパフェでございます。ごゆっくりどうぞ」


 ちょうどいいタイミングで商品が届く。

 そのまま店員さんは去っていく。


「わぁ、美味しそうですね。特にこのフルーツポンチ! 早く食べましょう!!」


 この空気を振り払おうと必死にささやく凛音ちゃんのパフェを。


「あむ」

 

 食べた。置いてあったスプーンを勝手に使って食べた。

 一口。二口。進む手が止まらない。

 それを姫野と凛音ちゃんはあっけに取られるように見ていた。

 やがてそれを食べ終わり、次は姫野のも。


「あむ」


 食べる。

 俺に込上げて来た感情は食べたい欲望だったのだ。

 きっとそうだ。そうに違いない。だってパフェをみた瞬間に手が動き出したのだから。

 そう思いながら食べていく。

 食べることですべての感情が洗い流されていき、気分が良くなっていく。

 そして食べ終わる。


「ああ、美味しかった!」


「……先輩な、なにをやってるんです……」


「パフェを食べました……」


「何故……」


「食べたくなったから……」


 素直に答える。


「全然理由になってないです」


 ダメらしい。


「……はい、すいませんでした」


「酷いです! せっかく食べようとしていたっていうのに!!」


「しょうがないじゃん。何故か無性に食べたくなったんだから!」


「だから理由になってないです!!」


「だからすいません!!」


 その瞬間。


「あははははは……」


 姫野の笑い声が響き渡った。


「……もう本当に颯太君ったらおバカさんなんだから」


「おバカさん?」


 いきなり姫野がそんなことを言い出す。

 いつもの口調よりも軽く、穏やかだ。


「いいわ。食べたことは許してあげる」


「え?許しちゃうんですか!?」


「全然、いいわ。それよりももっと面白いことが見れたから」


「……私は許しませんけどね! ちゃんとお金は払ってもらいますから!」


「ふふ、それよりもさ……」


 そう言いながら立ち上がり、耳元まで口を近づけて。


「颯ちゃん大好きだよ」


 笑顔でそう言った。


「!? な、な、な、なにを……」


「じゃあね、私はこれで帰るから。後は澤宮さんがしたいようにすればいいわ」


「え? ちょ、ちょっとまだ話は……」


 凛音ちゃんの言葉を無視してそのまま姫野は帰っていった。 

 本当にわけがわからない。

 大好き。初めてそんなことを言われた。

 しかも颯太くんじゃなくて颯ちゃんって……。

 どういう事なんだろう。頭が混乱してくる。

 

「……まあとりあえず、先輩お金」


「……はい」


 お金はちゃんと取られました。

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