失ったことに気づかないのは失うよりも辛い事である。
人は自分の中ではどこに生きているのか考えたことはあるだろうか?人は記憶の中に生きているのである、そして記憶から消えればその人は死んでいるも同然であり、もう思い出される事はほぼないのである。
この街では死んだものは記憶から消え、そして跡形もなく消えてしまうのだ。そう本当に跡形もなく、記憶もそのものの残した遺物も言葉も歴史も体も全てが消えてしまうのだ。
そんな街を変えるために進んでいくある二人の、いや一人と一霊の物語である。
「あなたには知らなければいけない、思い出さなければならない事がたくさんあります」
そんなことを言う少女を俺は初めて見たはずなのにその声も、顔も、俺にはどうしてもその場で涙を流さずにはいられなかった。
チャポン…チャポンそんな音が聞こえ目を覚まし周りを見ると自分は湯船の中で寝てしまっていたらしい。
時計を見ると、約3分ほど寝ていたらしい、「危ないな、このまま眠っていたらそのまま永眠して、翌日には水死体が見つかっていたぞ」とそんな独り言を言っている。
だが今の発言には誤りがある彼が湯船で死のうと、首を吊って死のうと死体は絶対に見つからないのだ。
彼に限った話ではない、彼の住んでる街『忘却街』では人の死体は見つからないのだ、そして死んだ人は皆『記憶からも死んでしまう』のだ。
もう湯船で寝ないようにと肝に命じて浴槽から出てリビングに戻るとエアコンが効きすぎていたのか少し肌寒かった。エアコンのリモコンを探すために電気を付けるとリビングの真ん中にあるテー
ブルの上には見覚えのない一冊の本が置いてあった。
「なんだ?こんな本買った覚えはないのだが。」
そんな当然の疑問を浮かべたがなぜだろう?その時の俺はその本をもう既に手に取っていた。
そして、中を見るとそこには『君の忘れられた記憶』と書かれ次の瞬間その本が光部屋全体を照らし俺は咄嗟に目をつぶった。
次に俺が目にしたのは、黒髪ショートの少し小柄な女の子だった。その女の子は出会ったばかりの俺にこう言った
「あなたには知らなければいけない、思い出さなければならない事がたくさんあります」
最初は「急に現れて何を言ってるんだこの女は」だとか「どうやって現れたんだ」と言ってやろうとしたが何故か口が動かない、顎が外れただとか、舌が急に無くなっただとかそういうホラーな事は一切起こってない、急に女の子が現れたのはホラーだったが、俺は口を動かせなかった、そして俺はようやくその理由がわかった。
「泣いていたのだ」俺はその場で無意識の内に泣いていたのだ、そう、その女の子を見て俺は理由も分からず泣いていたのだ。
「なぜだ?……なぜ初めて会ったはずの女の子を見て俺は泣いているんだ」そんな事を言うとその女の子は口を開いて言ったのだ。
「ありゃ、本当に私の事忘れてるんだ。ひっどーい、私泣いちゃうよ?」
理不尽だ、初めてあった女の子にいきなり泣くと脅されるだなんて。
「まあ、しょうがないかこれに関してはどうしようもないし、じゃあ自己紹介したら思い出してくれるかな?」
何を勝手に進めているんだこいつは。そんなことを考える俺の事は気にも止めてないように自己紹介?をし始めた。
「私の名をよく聞き!!そして頭にもう一度刻むがいい!!私の名は『輝井夢子』です!!」
「てる……い?」俺と同じ苗字そう考えたら後は察しのいい人ならなんとなく分かるだろう当然俺もわかった。俺の場合は分かったと言うより思い出したという方だ正しいだろう。頭に電流いや稲妻が走った。
「そうだ…お前は俺と結婚してそして死んだはずの…」
「やっと思い出してくれましたか朝昇先輩」
そう言った彼女の顔には逆光でよく見えなかったが少しだけ泣いてるようだった。
今回が僕の初めての投稿になりました。
小説なんて書いたことないのが当たり前なのかもしれないけどやってみたかったんだから、仕方ないよね。
もしも本当にもしも次書きたいと思ったら続き書きますのでよろしくです。
本当にありがとうございました。