1.金色の輝きと動き出した運命ー2
4,
ーむー
ー『円形劇場』が動いたかー
ーできれば早く終わらせたいものだがー
ーリミットまでは全然時間があるー
ー気楽にいこうー
ー何、すぐに終わるだろうよー
* * *
“ん──どうした、『ХХХХ』?”
“いや、何か嫌な予感がするんだが”
“ハハッ、考えすぎだろ”
“なら良いんだが……”
(“あの女、途轍もない障害になるやもしれんな”)
………………
5,
「うっかり殺さないように気を付けないとな──まあ最悪、そっちの女子高生は殺しても問題ないか」
何か物騒なことを言われている。でも私は、怖さでそんな軽口にさえも反応することができなくなっていた。
『円形劇場』が右手をこちらに向けてきた。
「──円形銃口──」
『横によけて!』
「え!?急にな──」
その刹那、何かが私の頭をかすめていった。
後ろの壁には円形の穴があいていた。
『……成る程、これが彼の能力、「円形」か』
「えっちょっと待って何でそんなに冷静に相手の分析ができるのっ!?」
その精神の強さを今一時だけで良いから分けてほしい。
『僕の「停止」を使えば防げるだろうけど、生憎僕は今防御に魔力を割いてる暇はな──おっと』
今度は金色の猫の頭の上をかすめていった。だが、紙一重でかわしたようだ。
『まずいな……良い案がぜんぜん思いつかない……』
「うう……いっそ私が魔法とかを使えたら……」
「はあ、仕事がしにくいからあまり動かないで貰えるかな?人間て言うのは失敗しない訳じゃあないんだから」
「……それ遠回しに死ねっていってるじゃん……」
『くっ、どうしたら──ん?ちょっと待ってヒナ、さっきなんて言った……?』
「へ……?遠回しに死ねって言ってる……?」
『その前』
「私が魔法とかを使えたら」
『それだ!』
「へっ!?」
どういうことだろう?まさか私に魔法を使わせるとか、そういうことだろうか。あとさっきさらっと私のこと『ヒナ』って呼んでたな……。
『そのまさかだよ!君に僕のため込んでる魔力を付与して、魔法を使えるようにしてあげる!』
6,
…………………………
…………………………。
えっちょっと待って下さい本当にそんなことするんですかそんなことして大丈夫なんですか……?(気が動転して敬語になっている)
「ハッハハ、何をバカなことを。そんな事をしたら、そいつの体は強大な魔力に耐えきれずに、内側から爆発するぞ?」
ほらなんか体が爆発するとか言ってるし。私に迫られてるのって死の二択?穴があくか爆発するか?
『大丈夫だよ!』
「いや、どんな自信があってそんな事──」
『だって、普通の人には、たとえその星の生物に成り代わっていたとしても、他からは見えなくなるはずなんだからね』
「へ」
「む?確かにそうだったな」
『だから大丈夫。やると言ってくれ!』
「だが、《そういうもの》が見えるからと言っても、億に一つ、兆に一つの賭けになるぞ?」
『さあ!』
「さあ」
『「どちらを選ぶ?』」
つい数時間前まで普通の高校生だった私にそんな選択を迫られても…………
………………ああもう。
…………ああもう。
ああもう、ああもう、ああもう!
「やる!」
『よかった!』
「自死を選ぶか……」
『よしじゃあいくよ──我慢して!』
「えっそんないきなりッッ…………!!」
それを言い切ると同時に、私の体の中に熱い何かが流れ込んできた。おそらくこれが魔力っ……!自分の中で、魔力がものになっていくのが分かる。が、ものになる前にどんどん私の中に入り込んでくる。
熱い、 熱い、 熱い、 熱い、 熱い!
熱い熱い熱い、熱い熱い 熱い熱い熱い熱い!
「あ、あああ、ああああああああ、」
熱い熱い熱 い熱い熱い熱い熱い 熱い熱熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱 い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱熱 い熱い熱い熱い熱い熱い 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い 熱い熱い熱い熱い熱い熱 い熱い熱い熱い熱い熱い熱い 熱い 熱い熱い熱熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱 い熱い熱いい熱い熱い熱い熱い熱い 熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱熱い熱いっ!
「あああああ ああああぁあああ ああ、ああああああ ぁあああ、ああああああぁ ああああ ああああぁぁあ あああぁあぁああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああ!」
「バカめ……それでは本当に…………ん?」
何だろう。
私の中の熱さが、急に小さくなってきた。
まるで、どんどん熱を何かにしまっているみたいだ。
私も頑張って、その中に熱をしまってゆく。
「あ、ああ、…………はぁ、はぁ、はぁ……」
恐る恐るそれを開くと、色々な物がごちゃ混ぜになっているように感じた。その中を自分の感じだけで整理してみる。
(『まさか、「秩序」まで使えるようになるなんて……!』)
「え……?今、何か言った……?」
『……!「心中心理」まで……!?これは本当に予想外すぎて、逆にこっちが怖くなってきたよ……!』
何かよく分からないこと言ってるけど、とりあえず成功したの、かな?
「何だと…………!?本当に耐えてしまうとは……!危険だ、危険だ、危険だ!私の独断だが、これより速やかに彼女の抹殺を執行する!」
と言って、彼は今度は両手を構える。そう言えば確か『停止』で止められるとか…………これかな?
────『遮断』?
「『円形乱射』ッッ!」
そして、空間に穴があいた。
「へっ!?な、なにこれっ!?」
『シャ、「遮断」っ!?』
「くっ…………………そがああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
『ひっ、ヒナ!何でそんな相手の能力を否定するような技を出して相手を挑発してるの!?』
「えええ、分かんないよー!似たようなのがいっぱいあってどれがどんな効果なのか全然」
「もういい」
「へ」
『え』
「俺をここまで追いつめるとは言い度胸だ。この建物ごと消し飛ばしてやるあああああああ!」
「え──」
『な──』
「絶大:『円形天蓋』ッッッ!!」
『ま、ずいね』
「言わなくてもだいたい分かる、けど」
私たちには分かっている。頭上300m上空に円形の何かが浮いてるのを感じた。
「さて、この状況、どうする!?」
彼が叫ぶように言った。
そして、雨の音をかき消すほど大きく高らかに笑った。