1.金色の輝きと動き出した運命ー1
1,
…………………………
…………………………
…………にゃおん
* * *
―逃げられた―
―だからあれほど用心しろと―
―だが仕方がない―
―奴…『輝』は思っていたより素早かった―
―どこまで逃げやがったー
ー25万光年先に反応がー
ー『チキュウ』と言う星にいるようだー
ーよしー
ー宇宙中の全団員に次ぐー
ー我ら『闇師団』の本部に早急に集えー
* * *
ー『闇師団』が『輝』を取り逃がしたらしいー
ー我らも『チキュウ』に向かおうー
ー奴らに今度は遅れをとるなー
―了解―
…………………………
2,
私の名前は片山雛奈。
今日から晴れて高校生になる。
親元を離れて念願の一人暮らしを始めたこともあり、少し浮かれた気持ちでマンションを出発したー
ー放課後、帰り道。雨に降られた。
つくづく運がないなと思う。
もちろん傘なんて持ってきてないので、雨に濡れながら家路を急ぐ。
そしてあと数分でマンションに着くというとき、
一匹の猫が飛び出してきた。
その猫の毛の色は金色だったが、その毛の色がかろうじてしか分からないほどに、体中が血で汚れていた。
「え!?」
私は家に早く帰ることも忘れ、夢中でその猫に駆け寄った。触っても抵抗しなかったため、そのまま抱き上げる。見れば、体中にはただ血が付いているだけで、傷は一つも付いていないようだ。
(よかった……)
何となく周りを見渡してから、私はその猫をマンションの中に連れて行った。
(あれ……このマンションってペット大丈夫だっけ?)
そんなことを考えながらエレベーターを使って五階まで行き、自分の部屋にはいった。
不思議なことに、その猫はお湯で洗っても、少し乱暴目に拭いても、全く抵抗しなかった。勿論、ドライヤーで体中の毛を乾かしても、だ。
完全に乾いてからよくよく見ると、その猫は、目もくらむような、とても綺麗としか言いようがない金色の毛を持っていた。
(どこから来たんだろう?これだけ毛色も毛並みも綺麗なんだから、野良猫ってことはないだろうけど)
とりあえず今日のところは家に泊めておくしかないだろう。
外ではまだ雨が降っている。
* * *
―どこへいった―
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、
―この近くに反応がある―
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、
―くそっ、『輝』め―
―この国の春にこれほど雨は降らないのに―
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、
―奴め、天候を大きく変えやがった―
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ、
バシャ、バシャ、…………!
―ここか……!―
* * *
幸いなことに、金色の猫は安心したように眠っていた。
ミルクを飲ませたのがよかったのかな?
時刻はもうすぐ十一時を指す。
私も今日はもう寝よう。新学期早々遅刻するわけにもいかないし。
電気を消し、私は眠りに落ちた。
外ではまだ雨が降り続いている。
* * *
ヒタ、 ヒタ、 ヒタ、
ーこの部屋かー
―これより、『輝』の捕獲を開始する―
3,
『……………て……きて』
誰かが話しているような声が聞こえる。
『起きて』
「……んん……もう朝……?」
時刻は午前一時を指している。悪い子や勉強漬けの人以外はみんなぐっすり寝静まっている時間だ。気のせいかと思いもう一度寝ようとしたら、
『寝ないで!今から言うことをよく聞』
「ええええええええええっっ!!??」
金色の猫が喋っていた。
『いや、これは喋ってるんじゃなくてテレパシーを使ってるんだよ?』
いや、そっちの方が有り得ないだろう。
「い、い、一体どういうこと……?何が起きてるの……?まさかこれは……夢?」
『ならひっかいてあげようか?』
引っ掻かれるのは嫌なので、とりあえずは夢じゃないという事にする。
『時間がないから手短に話すけど、まず僕は「輝」って名前の実体を持たない宇宙人みたいなもので、』
ふむふむ。
『変な組織に捕まったから、逃げ出してランダムにテレポートしたら偶然この星にたどり着いて、』
ほうほう。
『酸素が多すぎると僕の体は消滅するから、この星の生き物を依代にして逃げ回って、』
はいはい。
『傷を治しながら走ってたら偶然にも君に出会った。そして、追っ手が今、すぐそこまで迫ってるんだ』
ふうむ、なるほど。
「そもそもの前提条件からおかしいから!話の展開が急な上に話のスケールが大きすぎて理解が追いつかな──」
カリカリカリ……
雨が降る音が部屋に響く中、その音が妙にはっきり聞こえた。
「な、に……?」
『……まずい』
私が恐る恐る窓の方を向くと、
窓の鍵の近くに丸い穴があいていて、そこから手が伸びてきて鍵を開けていた。
「…………っ!」
声にならない叫びがでる。このときになってやっと、恐怖心が芽生えてきた。
時は私の理解速度を待ってはくれないようだ。
その男は当然のように部屋の中に入ってきた。
「やあやあ、レディの部屋に土足で失礼」
もはや私は声を出すこともできなくなった。
「なに──私はその猫を捕りに来ただけだ。警戒しないでくれ。何もしないよ──邪魔をしなければ」
『僕が黙って連れて行かれるとでも?僕は魔法を使えるんだよ?』
「いいや、私は知っているぞ?お前は依代を使っている状態だと、通常の何百倍も魔力が弱くなるということを」
『………………』
「この雨も、相当な魔力を消費して創り出したのだろう?」
『………………』
「図星のようだな──さて、雨宿りの合間にでも、
この『円形劇場』が、お前を捕まえてやろう。無論、逃げることなど考えるなよ?」
まだ雨はやまない。