友達のために怒る人は優しい人だと思います
横で聞いていた竹下愛が突然口を開いた。
「アスナちゃんはどうしてミコトちゃんの悪口ばっかり言うの?そんなのおかしいよ!ミコトちゃんは何も悪口言ってないじゃない!」
「アイちゃん落着いて、私のことで怒らないでよ」
「ミコトちゃんは、怒らなきゃだめなの!」
「ごめんなさい」
「もう!ミコトちゃんがあたしに謝ってどうするの?」
「そんなに怒るなよ、アイ。ほら、私のチョコあげるから」
石川和美は竹下愛の口にチョコを放りこんだ。いいタイミング!これで話題を変えられる!
「そういえば、アイちゃん、舐めてると絵が変わるチョコってもう食べちゃった?」
「ううん、まだ食べてないよ」
良かった、話のすり替えに成功した。ミコトは石川和美の方を見て肯いた。石川和美はミコトに軽くウインクしてみせた。
「じゃあ、見せてよ」
竹下愛は、歩きながらリュックを手に持ち、目的のチョコを取り出した。
「これがペロリンチョコ。見て、今アニメキャラの猫兵衛が写っているでしょ?」
「うん」
ミコトは猫兵衛なるモノを知らなかったが、とりあえず返事をしておいた。
「これを、絵の部分をどんどん舐めていくと」
そう言って、言った通りのことを実行していく。
「ほら、だんだん絵が変わって来た。これは、あれだ。犬衛門だ」
確かに、さっきの猫のロボットから子犬の絵柄に変わった。
「すごいね、本当に絵が変わったよ」
「ペロリンチョコのすごいところは、絵が変わるだけじゃなくって味も変わるところなの。さっきの普通のチョコ味から今度はストロベリー味に変わるの」
「味は全部でいくつ変わるの?」
「三回。全部で四つの味があるの。一つの味に一枚の絵がついていて四コマ漫画になってるんだよ」
すっかりご機嫌になった竹下愛を横目に、宮崎藍は、私は何の花だったんだろう、と気を揉んでいた(後で聞いたら、しばらく考えて紫陽花とミコトは答えた。理由は気付かないときに気付かない所で咲いているから、というのだそうだ。それって地味ってことなのかな、と宮崎は問うと、でも雨上がりの夕方に見た紫陽花はとてもきれいだったよ、と答えた)。