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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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クラスメイトを花に例えます




 午後一時三十分。遠足隊は出発した。行きと同じ順番で。ミコト達五・六年の出発は二十分後となった。その間、六年生は各学年で使っていたビニールシートを畳みこみ一つの袋にまとめた。一枚一枚は軽くてもまとめてみるとかなりの重さになる。こんなのを担任・宮本は運んでいたのか。ミコトは半分背負うと提案したが、あっさり却下された。これは私の仕事です、だから気を使わなくっていいのよ。そう言って断られたのだ。ただしそのあとで担任・宮本はにっこり笑ってお礼も忘れず言っておいた。ミコトの気がかりは、ミコトの胸ポケットに潜む埴輪のペィの兄弟分を探すことだ。そうは言うものの手掛かりはまるでない。埴輪のペィと初めて接触したときは確か三メートルくらいの距離があったように思う。それくらいまで近づければ、何らかの歌が聞こえるらしいのだが、さてその近づくのが至難だ、そうミコトは思う。他に何か手掛かりがないか、さっきから埴輪のペィに問いかけているのだが、全く返事がない。この辺りと言っても中途半端すぎるよ、そんな愚痴も出るミコトであった。これはソナタのチカラを借りた方がいいかな?なにしろソナタは百や二百メートル離れててもミコトまで“あの声”が届くのだ。そう決めたらミコトは少し気が楽になった。



 午後一時五十分。ようやくミコト達も出発できた。コース変更のおかげで二回山頂を通ることは避けられた。歩きながら、ミコトはつつじをいつまでも見ていた。すると後ろから声を掛けられる。声の主は荒木恵理子だった。


「さっきはびっくりしたねー」


「そうだね、アレのせいで池の橋、渡れなかったね」


「私、去年見たから知ってるの。あそこから見た方が池のほとりから見るよりきれいだって」


「そうかー残念。また今度来よおっと」


「さっきはありがとう。私だけじゃ何にもできなかったよ」


「お礼を言うのはこっちだよ。あんな大人数倒れてたら一人じゃ運べないもん。エリコちゃんが先生呼ぶのが早かったから安心したよ」


また背後から声がかかる。教室で隣の席の山本凛だ。


「なに二人して褒め合ってるんだ?おっきいのとちっさいの」


「何リンちゃん?その投げやりな呼び方?」


「ははは、見たまんまだったかな?済まん済まん。しかし、あれだな、五年生がぶっ倒れたんだ。来年は中止になるかもしれないな。この遠足」


「ツツジを見ることには賛成なんだけどねえ」


「躑躅ってエリコちゃんみたいだよね。きれいで、いっぱいに咲いていて、安心して見ていられるの」


ミコトは、先ほどひらめいた自分の考えを言ってみた。聞いた二人はお互い顔を見合わせた。しかし直ぐに笑い始めた。



「ごめんね、エリコちゃん。気に障った?」


「ううん、そんなことないよ。っていうか嬉しいよ。私がツツジだなんて考えもしなかった」


「また、ミコトちゃん、変なコト考えたなあ」


「変かな?女の子を花に例えるのって?」


「そんなことはない、なるほど言われてみればぴったりだね、エリコちゃんには。大きく咲いてきれいに咲いて、安心させる花か。それじゃあ、私はどうかな?」


「リンちゃんは…そうねえ、朝顔、かな?」


「アサガオ?どうしてそう思うの?」


「朝顔って、夏の早朝じゃないと見れないでしょう、だけど朝日を浴びて光るアサガオはすごくきれいなの」


「とほほ、私は夏の朝限定かよ。ま、アサガオ嫌いじゃないけどな」


「朝顔の良さは見る人が努力しないとわからないしね」


「それじゃ、他の奴はどう?例えば自分は何に例える?」


「うーん、自分のことはわからないなあ……」


「それじゃ、私が決めてあげる。ミコトちゃんは…キクだ」


「菊?」


「ああ、なるほど。キクか。ミコトちゃんにぴったりだね」


「そうかな?」


「そうだよ、神社の子だし」


「神社に菊は、ないんだけど?」


「いや、なんか伝統的な花の象徴としてはぴったりじゃないか」


「伝統的っていうなら桜じゃないかな?」


「サクラ、はミコトちゃんにはふさわしくないなあ。はかなげって感じがしないもの。サクラはアイちゃんにぴったりだね」


「なるほど。じゃあカズミちゃんはどうかな?」


「ああ、あいつは、そうだな、ヒマワリ、かな?うんそうだ、明るいし、いつも元気だし、目立つし」


「うーん、リンちゃんの話は的確だね」


「それじゃあ、マオちゃんはどうだろう?」



荒木恵理子が問いかける。ミコトと山本凛は同時に答える。チューリップ!


「やっぱりそうだよね、可愛らしさがぴったりだよ」


「あれ?花の名前は同じだけど、理由が全然違うなあ」


「どういうこと?」


「あいつの頭の中がチューリップ畑ってコト。おとぎ話のヒロインとしてはこれがぴったりだろ?」


「リンちゃん、マオちゃんには容赦ないよね」


「アイツ、ああ見えて結構打たれ強いんだぜ?ミコトちゃん、ぼやぼやしてるとケイジ君、取られちゃうぞ?」


「いや、取られるも何もないんだけれど?」


「またまた、とぼけちゃってえ!」




山本凛が大声で突っ込んだおかげで後ろからのろのろ歩いてきた石川和美と竹下愛がよって来た。


「ねえ、何の話してたの?」


「あ、サクラとヒマワリがやってきた」


「何のこと?」


「うん、六年の女の子が花に例えると何になるかって話をしてたの、カズミちゃんが向日葵で、アイちゃんが桜」



前の方を歩いていた残りの女子達もミコト達の周囲に寄って来た。


「へえ、面白いことをやってるわね、それで、私は何にする?」


新田明日奈が珍しく話に乗って来た。


「アスナは、薔薇だね」


「バラね、良くわかっているじゃない、ミコト?美しさと高貴さを兼ね備えてる私にはぴったりじゃなくって?」


「そ、そうだね」


質問したもの以外はみんな、花の下の棘のことを思い起こしていた。


「それじゃあ、私は何になるのかしら?」


今度は木村詩織だ。


「シオリさんは百合かな」


「なるほど。立てば芍薬、座れば牡丹、今歩いているからユリってことね。さすがはミコトさん、見る目がありますわ。それで、ご自分は何に例えたの?」


「うん、自分じゃ解らないから、リンちゃんに例えてもらったの。私、菊だって。私ってそうなのかな?」


「なるほど、墓に添える花としてはぴったりだわね」



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