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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第2章 埴輪(はにわ)のパピプペポ
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ネコ達と癒しタイム



 ミコトが洗い物を終えてお茶を啜っていると、父親が猫二匹を引き連れて台所に入って来た。黒い方は夕方部屋で見たが、白い方は今日初めてだ。


「どうしたの?」

「ママが寝てるところでうるさいから遊んであげてくれる?ああ、でもその前にちょっと体温を測っておこうか」


ミコトは体温計を受け取り、脇に挟んだ。三分後、体温計がブザー音を鳴らすと、ミコトは脇からそれを取り出し父親に渡した。


「うわっ、七度五分。壊れてるのかな?お前、体は何ともないのかい?」

「全然。いつも通りだよ」

「頭が痛いとか、気分が悪いとかしない?」

「うん、なんともない」

「ホントに?おかしいなあ、普通の人なら寝込むところなんだが。ご飯食べたばかりだからなのかな?明日の朝にもう一回測るよ」

「パパ、心配のしすぎだって。私何ともないから」

「じゃ、こいつらお願い、遊んであげて」


そう言い残すと、父親はまた台所から姿を消した。あとには黒い猫と白い猫が残された。黒い方は若く元気よく鳴いている。白い方は若い方をたしなめるように、ときどきミコトを見上げて訴えるように鳴いている。


「おいでよ、おユキさん、おスミちゃん」


そう言って、ミコトは部屋に二匹を連れていった。



ミコトの部屋にはおもちゃの猫じゃらしが置いてある。先っぽはネズミ大の大きさ、色は蛍光緑色で長さ一メートルのしなる代物だ。ミコトはネズミ部分を徐々に黒猫に近づけていった。黒猫は、伏せの姿勢で獲物が自身の攻撃圏へ入るのを待つ。ミコトは、黒猫の攻撃圏の距離を把握しているから、そのぎりぎりの範囲の外でネズミを動かしていく。じりじりと動かしていくと、黒猫は、初めは目で、次は首を動かして獲物を狙う。首が回らなくなるところまで来ると、黒猫は伏せたままで器用に体の向きを変えていく。黒猫が九十度体の向きを変えたところで、ミコトはネズミを黒猫の手が届くところに近づけた。黒影が動いたかと思う刹那に、ミコトは黒猫にネズミを抑えられてしまった。ミコトはネズミを動かすのを止める。すると、黒猫は、ネズミが死んだものと思い他所を向くのだ。その隙に、ミコトはネズミを黒猫から遠ざけ、再び少しずつ黒猫の方に忍びよせるのであった。こんなバカなことして、楽しいのかな?ミコトはいつもそう思うのだが、飼い猫が反応するのだ。最も、反応するのは黒い方だけで、白い方は冷ややかに一連の事態を見ていた。白い方は、いわば母親の飼い猫で、ミコトが生まれる前から母親に飼われているのだった。人の年齢に換算すると八十を超えたところか。まやかしのネズミなどには目もくれないのであった。いや、それが本物であったとしても相手にしないのかもしれない。なにせご高齢なのだから。

猫達、と言うよりほとんど黒猫の遊び相手を二十分ほどしただろうか?父親がミコトの部屋に入って来た。 

「おお、うまいもんだね、おスミちゃんの扱いが。大したもんだ」

「毎日一緒に遊んでるからね。でも、おユキさんのご機嫌取るのは相変わらず難しいなあ。ママはどうやっておユキさんと遊んでいるのかな?」

「ママが元気になったら聞いてごらん?それよりお風呂が沸いたから入りなさい」

「はーい。ママの様子はどう?」

「うん、ちょっと汗が出て来たから、熱が上がってるんじゃないかな?氷嚢を用意しなくっちゃ」

「ヒョーノー?」

「氷を入れる袋のことさ。ママのことはいいから、ミコトはお風呂に入りなさい。お風呂から上がったら、明日の準備をして早く寝なさい。お休みの挨拶はしなくていいから」

「でも……」

「ニュースで季節外れのインフルエンザが流行ってるって言ってたからね。ママもそうかもしれないから。うつらない様に、近づいちゃだめだよ」

「わかった。おスミちゃん達はどうしよう?」

「そうだね。ミコトの部屋にやつらの寝床を置いておくから、今日は二匹と一緒に寝てよ」

「また、暴れたりしないかな?おスミちゃん」

「さあ、どうだろう?おユキさんがいるから、大丈夫じゃないかな?それじゃ、頼んだよ」

父親は部屋から出ていった。猫達、主に黒い方の遊び心も満たされたようだ。


「それじゃ、お風呂に入りますか」


ミコトは、お風呂に入る前にチョコレートを冷凍庫に入れた。これで少しでも解けるのを遅らせることが出来るかな?


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