突撃!お宅のお部屋拝見!
ソファに座る担任の先生を目の前にして、ミコトは背筋が伸びた。それに対して父親は寛いでいる中にも威厳を醸し出していた。パパらしくないなあ、外ではこんな感じなのかな?ミコトが首を傾げたそのタイミングで母親がお茶と茶菓子を持ってきた。
「先生、どうぞ」
「恐れ入ります。奥様も、どうぞ、お掛けになってください」
「では、失礼します」
母親は、担任・宮本の隣に座った。
「それで、ウチの娘はどうでしょう?みんなと仲良くしているんでしょうか?」
「結論から申しますと」
ごくり。ミコトは固唾を飲む。担任・宮本はお茶を一口すすり唇を湿らした。
「お嬢さんはとてもいい子です。学業はよくできるし、学級委員として皆を引っ張っていますし。クラス担任としては非常に助かってますわ」
ミコトは音を立てずに息を吐いた。
「学校では笑っていますか?」
「はい。それはもう」
担任・宮本はそのセリフ同様に笑顔だった。
「良かった。一人っ子で他人との距離感が分からないのではないかとも思ったのですが、ちゃんと人付き合いはできてますか」
そんなことをパパは気にしていたのか。あきれた。ミコトは父親の横顔をちらっと見た。
「ただ、気になることが二つほど……」
「はて?何でしょうか?」
またごくり。ミコトは固唾を飲む。
「はい。一つは、ミコトさんは、話の途中で時々上の空になることです。話の途中で何か気になることがあると、そこに引っかかり、そのことを広げて考えてるのではないでしょうか?話を最後まで聞いて、それから考えるというようにした方が良いと思うのですが。ご家庭ではそのようなことはありませんか?」
「そうですねえ……」
娘の頭を見ながら考える父親。二人の大人の女性は、その間を使ってお茶を啜った、
「本人が分からない点はすぐに聞き直してきますので、最後まで聞いてないということは家ではないと思いますが。ただ空想癖はありますね。放っておいても問題ないと思っていたのですが、どうでしょう?」
父親はミコトの頭を手で撫でまわした。
「そうですね、日常会話では問題ないかと思いますが、ただ授業中やテスト中にそうなると、これから大事なことを聞き逃したり、テスト時間が足りない、等と言うことになるので、集中する時とリラックスする時を区別させていただけたら、と思いまして」
「なるほど、わかりました。実は、ウチで娘に神楽を教えておりまして、その時に集中していなかったら叱ることにします」
「娘さんに神楽を教えて、どうなさいますの?」
「秋の祭の時に、神楽を奉納することにしまして、その際に娘に舞ってもらおうと思いまして」
「それは楽しみですわ、ねえ日野さん?」
「すみません、そのことはみんなにはしばらく内緒にしてて貰えますか?」
「あら、どうして?」
「まだ始めたばかりだし、上手くいくとも限らないし……」
「日野さんは物覚えいいから大丈夫。だけど内緒にはしときましょ」
担任・宮本はミコトに片目を瞑って見せる。
「有難うございます」
「それで、先生。気になることの二つ目とは?」
「そうですね、二つ目は」
担任・宮本はもう一口お茶を啜った。
「娘さんは、四月になって眼鏡を買い替えられたでしょう?」
「はあ、それが何か?」
「視力が悪くなる原因は何かなと思いまして。娘さんのお部屋を拝見してよろしいですか?」
「はあ、それは構いませんが?いいだろ?ミコト」
「うん……あ、はい」
「それじゃ、日野さん、案内して。あ、お父さんもご一緒に」
三人はミコトの部屋に入った。母親はお代わりのお茶を入れに台所へ戻った。担任・宮本はミコトの部屋をきょろきょろ見回す。
「何か分かりますかな?」
「ええ、部屋はココロを表わすと言いますから。お嬢さんの飾らない性格が出ていますね」
そういうと、担任・宮本は机の上に飾られている一点物アンティークを発見した。
「あら、これは何かしら?」
「ああ、これは娘に買い与えた土偶のレプリカです」
父親が娘を見てウインクをした。有難う、パパ。話をややこしくしないでくれて。
「へえ、良くできてますね」
そういって、担任・宮本は次に本棚を見た。
「意外に本持ちなのね、日野さん?」
「ええ、私が月に三冊か四冊見つくろって買い与えているのです」
「全部読んでますか?」
「さあ、どうでしょうか?一応、感想は聞きますが。どうだいミコト?全部読んでるかって質問だけど?」
「とりあえず全部読んでます。でも頭に残るのと残らないのがあります」
「今、何を読んでますか?」
「{三国志・桃園の誓い編}です」
「何が一番面白かった?」
「{日本神話体系}です」
調子に乗って2話投稿してしまった・・・ORZ