ようこそ、ミコト神社へ
これで一区切りです。
日蝕の全過程が終わり、世には春の光が帰って来た。ミコトは日蝕レンズを少年に渡す。
「有難う。不思議なモノ好きと謎を明らかにするのが好きって同じことじゃないの?」
「謎と不思議は同じじゃないよ。謎は解けるモノ、不思議は解けないモノ」
「サッカー好きなのもお父さんの影響?」
「ううん、サッカーは友達と一緒にやり始めたんだ。ボールを自分の思った通りに支配できるって面白いと思わない?」
「全然支配出来てないじゃない」
「これからだよ、たくさん練習してできるようになるよ!」
ミコトは初めて少年の、流されない意思を感じた。
「そうだね、できなかったことが練習してできるようになるのは楽しいよね」
遠くから少女の名を呼ぶ声がする。
「おーい、ミコトー。社務所の掃除終わってるー?」
「あっ、ママ。大体終わったよ」
声はだんだん大きくなっていく。
「ケイジ君もまだいるわね?良かったら、一緒にお昼ご飯にしない?お家には連絡しておくから」
「え、いいんですか?お邪魔じゃないかな?」
「いいのいいの。遠慮しないで。ご飯は大勢で食べた方がおいしいんだから。この子達も喜んでるぞ」
足元では、白と黒の猫が揃って鳴いている。
「ささ、二人とも、行くわよ」
そういって歩き出した。猫達も彼女に付いていく。少年は少女に小声で話す。
「君のお母さん、綺麗だけど結構強引なんだね。綺麗だから強引なのかな?」
「うちのママ、そんな感じなの?毎日一緒だからわからないな。それより君、家のパパと気が合うかも?」
「え?どうして?」
「君と一緒で不思議なコトが大好きだから。色々聞くといいよ」
少女は、風が吹き出した境内で、少年に向かって、それから部屋の中で聞いている土偶に向かって言った。
「ようこそ、ミコト神社へ」
土偶さんの不思議な力とは、ただの天気予報と日蝕予報でした。現代人には普通でも、昔の人には不思議な力、崇められたり称えられたりしたものです^^。
あ、しゃべることも不思議な力ですね。
これからどう展開していくのか・・・乞うご期待。