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ミコトのドーグー!  作者: あいうわをん
第1章 遮光式土偶はかく語りき
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天変とは、日蝕のことでしたw



「日野さーん、少しだけ休憩しない?日蝕が始まるんだ―、一緒に見ようよー」

日蝕?もしかしてテンペンっていうのは。


“日蝕とは何か?”

「日蝕っていうのは太陽が月に隠れて見えなくなることよ!」

「そうだよー。もう始まってるからさー」

“なんと!人はヒノワの陰りをも先知ることが出来るようになっていたのか!”

ミコトは社務所を出た。頭の中の声に反応しながら。



“ソナタのいうテンペンってこれのことだったの?”

“そうじゃ”

“日蝕って今ではいつ起こるか分かるんだけど。そうすると、ソナタのいうチカラは今の世には通じないってこと?”

“そうなってしまうのう”

「はいこれ。日蝕レンズ。直接太陽を見るといけないから、家から持ってきた。メガネの人もここにかければ大丈夫」

「あら、ありがとう」

「昔、父さんが買ってくれて、いっしょに見たんだ。母さんや爺ちゃん婆ちゃんはこういうのに全く興味を示さないから。日野さんもこういうの嫌いかな?」

“そうすると、わらわのチカラは必要ないか……”

「嫌いじゃないよ」

“言ったでしょ、最初っから。チカラはいらないって”

「良かった。もうすぐ始まるよ。今回のは部分日食だけど半分ぐらい隠れるんだって」

ミコトと柳井圭治は、二人揃って太陽の方に目を向けた。蝕はすぐに始まり、辺りの景色が薄くなっていく。



“アカネサスヒノミコトよ”

“なあに?”

“今どのような心地か?”

“どんな心地?ああ、どんな気持ちかってっこと?”

“そうじゃ”

「不思議な気持ち……」

ミコトは、考えたことがそのまま口にでてしまった。

「そうだね、頭の中では分かっているのに、それでも不思議だ。昔の人はもっと混乱してただろうね。アマテラスが天岩屋に隠れたっていう話も日蝕が元だったんだろうねえ」

話していく間にも蝕は進んでいく。



「アマテラスがどうやって天岩屋から出て来たか知ってる?」

「知ってるわよ。アマノウズメが神楽を舞って、他の神様達が大騒ぎしているのを聞いて、アマテラスが天岩屋をちょっと開けたんでしょう?それでタジカラオっていう力持ちの神様に戸をこじ開けられたの」

「さっきのリフティング、舞いを舞ってるみたいだったよ」

“言うてやれ、ヒノミコトよ。わらわの舞いで天変を起こしたのじゃ、と”

「舞いと日蝕は無関係でしょ!」

またミコトは頭の中で思っていることを口に出した。少年はまず驚き、次に笑った。


「うん、それはわかってるよ」

ミコトは曖昧に返事をして胡麻化した。本当は君に言ったんじゃないよ、そう言いたかった。そんな思いは伝わるはずもなく少年は話しかける。どうやらミコトの発言は気に止められなかったようだ。


「あ、そろそろ一番太陽が欠ける頃かな」


二人は口を閉ざして蝕の成り行きを見つめた。土偶は沈黙を破ってミコトに問いかける。



“どうした、ヒノミコトよ。そ奴のことを知りたいのだろう。問いを投げよ”

“うるさいなあ。今はここで一緒に日蝕を見る時間なの。邪魔しないで!”

ミコトは不意に山本凛の言葉を思い出した。二人の時間と空間を楽しんでいるこれってデートになるの?



“でえと、とは男と女が二人の時間と空間を楽しむことなのか?そうか、それがそなたの本当の願いか”

“今のところ、私の願いはソナタがしばらく黙ってくれることかな?”

“そうか、コトノハを使わずにココロを統べるつもりじゃな。よかろう、わらわはしばし黙するぞ”

再び静寂が訪れる。風も吹かず、木々の枝葉も揺らがない。猫も自分の影法師をじっと見つめている。境内に降り注ぐ光だけが時とともに濃から淡へ、淡から濃へと変わっていった。静かさが動いている、ミコトはそう感じた。言葉にすると変な感じになるが、ともかくもそう感じた。不思議な感じを言葉にするとそうなるのね、それとも言葉にできないから不思議なのかしら?。

「ねえ、どうして不思議なモノゴトが好きなの?」

日蝕の終盤になって、ミコトは少年に尋ねた。


「どうしてだろう?」

少年は、太陽を見つめながら、しばらく考えた。


「やっぱり、父さんの影響じゃないかな?」

「お父さんも不思議なもの好きだったの?」

「不思議なモノ、というより世の中の謎を明らかにするのが好きだったんだ。ああ終わっちゃった」


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