土偶さんから天変のお知らせがあります
ミコトは社務所に戻った。まだまだほこりは舞っているが、ミコトはお構いなしに入っていき、雑巾がけを始めた。掃除に没頭して数十分。やっと一区切りついた時、頭の中に
“アノ声”が響く。
“ヒノミコトよ”
“どうしたの、ソナタ?”
“さっかあとは何か?”
“ああ、サッカーって言うのはスポーツの一種で”
“すぽおつとは何か?”
“そうか、そこから説明しなきゃいけないか。スポーツは体を動かすこと。といっても、ただ体を動かすだけじゃなくって競争を取り入れてるの”
“競争とは何か?”
“他の人と競い合うコト。それで二人、または二組に分かれて優劣を競ったり、大勢の中から一番速かったり、強かったりするのを競うの。そのなかでボールを使うのが球技”
“ぼおるとは何か?”
“さっき見てたでしょ?丸い球。球技の中で、手を使わないでボールを相手の陣内に入れ合うことを競うのがサッカーというスポーツだよ。スポーツは競争だけど楽しみでもあるの。やるのも見るのも。私はやる方が楽しいと思うけど”
“では、なぜやらぬ?あの童と?”
“サッカーは十一人対十一人でやるの。そういうルールなの!”
“るうるとは何か?”
“ルールは、えっと、決めゴトとか約束ゴトとか。してはいけないこと、やらないといけないことをあらかじめ決めておくこと”
“ヒノミコトよ”
“今度は何?”
“そなた、本当にあやつのことを知りたいと思っておるのか?”
“煩いなあ。恥ずかしいからそんなことを聞かないでよ、恥ずかしいとは何か、とか聞かないでよ”
“何が恥ずかしいのか?”
“あれ?質問の形が違ってるね”
“恥ずかしいとはココロの動きの一つであろう?女が男を、男が女を求めるのはいにしえからの必然のコトワリ”
“コトワリ?”
“そう、理。世の中に現れる様々なコトを小さく割っていくと理にたどり着く。恥ずかしきことは何もなし”
“そうかな?”
“そうじゃ。それよりそなた、そろそろ時が来るぞ。あの近づいてくるオトコノコに告げよ。もうすぐ日輪が隠れてしまうと。わらわのチカラで元に戻せるから、わらわのチカラを信じよ、と”
確かに土偶の声が言うように、少年が近づいてきている。そして社務所の窓の外からミコトに声をかけて来た。